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蠢女12(惨殺劇)

2012/12/02 Sun 00:01

12蠢女




 いきなり画面に映し出されたのは、泣き叫ぶ幼児でした。
 恐らく三歳くらいの男の子でしょうか、アンパンマンのTシャツを着たその子供は、そのまま白いワンボックスカーの後部座席に投げ込まれました。
 泣き叫ぶ子供の後に中年の女が同じワンボックスカーに引きずり込まれました。女はスーパーの買い物の帰りらしく、その右手にはスーパーのロゴがプリントされたビニール袋をしっかりと握り、その袋の中からは大根の葉が顔を出しています。
 子供と女を車に押し込んだのは、三人の痩せた男でした。全員黒い覆面を頭からすっぽりと被り、顔は全くわかりません。
 白昼堂々の大胆不敵な行動でした。ドアが閉められ車が発進すると、カメラは後方を捕らえました。そこには驚いた顔で呆然としている通行人が映っていました。そして、道路の真ん中に倒れた自転車と子供の黄色い帽子が無惨に転がっているのが映っていたのでした。
 そこで画面は一度プツッと切れました。
 恐らく、演出として女と子供を誘拐するシーンを冒頭に持って来たのでしょう。その衝撃的なシーンは私に凄まじい恐怖を与え、私はまんまと制作者の思う壷にハマったのでした。

 真っ黒な画面がスーっとフェイドインすると、そこはもうコンクリートに囲まれた密室でした。
 そこが恐らく火傷女が言っていた、このビルの地下室なのでしょう、貪よりと湿った感じのするコンクリート壁は、あの山の上の精神病院の鎮静房を蘇らせる不気味さでした。
 真ん中にパイプベッドがポツンと置いてありました。マットのない板だけのベッドの上には、鎖やロープや金槌などが置いてありました。
 画面にはしばらくそのシーンが映っていました。音声が聞こえないため、もしかしたら女の悲鳴や、ナレーションなどが入っているかも知れませんが、しかし音声を出してそれを確認するには、あまりにも危険すぎました。
 しばらくすると、顔を仮面で隠した裸の男たちが四人出てきました。彼らが付けているその仮面は、ライオン、カカシ、ロボット、そしておさげの女の子でした。最初はピンと来ませんでしたが、しかしその不気味なカカシを見ていると、それが『オズの魔法使い』のキャラクターである事に気づきました。
 四人は陰部を曝け出したまま、パイプベッドを囲んでいました。
 しばらくすると、先ほどの黒い覆面を被った男たちが現れ、そんな彼らの手には泣き叫ぶ中年女の手が引かれていました。
 ベッドの前に連れて来られた女は、いきなりロボットに顔面を殴られました。ライオンが女の腹を思い切り蹴り、そしてぐったりした女の髪をカカシが鷲掴みにして、ベッドに引きずり上げていました。
 そんな仮面のキャラクターたちは全てニヤリと笑っていました。それが異様に不気味であり、私はもはやその時点で泣いておりました。
 三人の男たちが女を押さえつけました。一斉に服を脱がせ始めると、再び女は暴れ出しましたが、しかしすぐにまた殴られて大人しくなってしまいました。
 その間、ライオンの仮面を被った男だけが、画面の隅で何やらコソコソしておりました。
 女が全裸にされ、三人の男たちに押さえつけられながら両脚を思い切り開かされると、そこにライオンの男がやってきました。
 ライオンの男は、車のバッテリーのような物を抱えていました。そのバッテリーからは赤い線と黒い線が伸び、その線の先には銅色の針金が鋭く伸びていました。
 まずはカカシが女の体に乗りました。熱り立つ肉棒を女の股の中に押しつけ、獣のように腰を振っております。
 それをロボットとおさげの女の子が囲むようにして見下ろし、女の両手両脚をがっしりと押さえていました。

 そこでふと、私は思いました。あの男の子はこのシーンを見ているのだろうか、と。音声が聞こえないので、子供の泣き声などは一切聞こえず定かではありませんが、しかし、その可能性は高いと思いました。なぜなら、ベッドに押さえつけられている女が、画面の右下を凄まじい形相で見つめ、何か必死に叫んでいるからです。
 そこにあの男の子がいるのかと思うと、背筋が凍りました。止めどなく涙が溢れ、おもわずソファーにあった毛布を握りしめていました。

 カカシが女の上で腰を振っている間、ライオンはベッドの下にしゃがみ、そのバッテリーをがちゃがちゃと弄っておりました。
 しばらくすると赤い線と黒い線を両手に持ったライオンがゆっくりと立ち上がり、腰を振っているカカシに何か言いました。
 カカシが腰を振りながらコクンっと頷くと、なんとライオンは、その線の先を女の両方の乳首にくっつけたのでした。
 女の体がビクンっと跳ね上がりました。その瞬間、それを見ていたおさげの女の子とロボットが手を叩き、飛び上がる女と交わっていたカカシが画面に向かって親指を突き立てました。
 その後もライオンは女の体中に二本の線を突きつけました。両足の裏、両目、両耳、そしてクリトリスと肛門。
 その度に女は飛び上がり、交わったままのカカシは、そんな女に抱きつきながらもせっせと腰を動かしていたのでした。

 そうやってカカシとおさげの女の子が、女の中に射精すると、次はカッターナイフを持ったロボットが女の上に乗りました。
 ロボットは、女の股にカクカクと腰を振りながら女の乳首をスパっと切り取りました。女の白い胸からピュっと真っ赤な血が噴き出しました。女の血が真っ白な肌に飛び散ると、またしてもそれを見ていたカカシたちが嬉しそうに拍手しました。
 ロボットは、女の両乳首とクリトリス、そして舌の先を鋭いカッターナイフで切り取りました。そして仮面をソッとズラすと、その切り取った物を口に含み、そのまま食べてしまったのでした。
 クリトリスを切り取られた時点で、女は気絶しておりました。しかし、女が気絶する度にライオンが女の体に電流を流して起こすのです。
 そうやって犯され続ける女は、最初はイヤだイヤだと首を激しく振りながら泣き喚いていましたが、そのうち無反応になってきました。半開きの目をぼんやりと天井に向けたまま涎を垂らし、そして時折、何かを思い出したかのようにハッと目を覚ますと、子供がいるとされる方に向かって泣き叫ぶのです。
 女の、そんな放心状態がだんだん多くなってきました。すると男たちは女に反応がなくなったのがつまらないのか、いきなり包丁を取り出しました。
 四人は一斉に女の白い肌を傷つけ始めました。体中をスパスパと切り刻まれて行く女の体はみるみると赤く染まり、そこから溢れる血がベッドを伝って床にまで滴っていました。
 そして遂に女の腹が、ライオンの手によって捌かれました。ライオンは臍に深く突き刺した包丁をそのまま胸に向けてズズズっと押しました。
 女の腹はいとも簡単にぱっくりと開きました。小豆色の内臓がドクンドクンと脈打つシーンがアップで映し出されました。そしてその内臓の中に三本の男根がピストンするシーンも映っていました。
 私は目を背けました。これ以上見ていられないと慌ててDVDを止めようとすると、その内臓にガソリンを撒かれ、そこに火を付けられるシーンが目に飛び込んできました。
 ボッと炎が爆発し、はらわたを炎に包まれた女が悶え苦しんでいました。
 そのまま女はベッドから転げ落ちました。ぱっくりと開いた腹から炎を出す女は、それでも子供が心配なのか、子供がいるとされる方向に向かって這って行きます。
 すると、四人の男がまるで何かのカーニバルのようにはしゃぎはじめ、変な踊りを踊りながらそんな女の頭を蹴りました。
 そして踞る女の体にガソリンをぶっかけ、更に炎に勢いを付けると、男たちは狂喜乱舞し、まるでキャンプファイヤーのように燃える女を囲みながらぐるぐると回り始めたのでした。
 女はぶすぶすと煙を噴きながら、丸焦げになって息絶えました。
 そんな女にホースの水をかけ、その真っ黒な煤を洗い流すと、全身に広がる生々しい火傷の跡をカメラは映し出しました。
 真っ赤に爛れた女の死体に誰かが布を被せました。その布は日本の国旗『日の丸』でした。
 画面は『日の丸』に包まれた焼死体を映したまま止まっていました。恐らく○○語のナレーションが流れているのでしょうが、しかし、音声を聞けない私は、ただ呆然としながら『日の丸』を見つめていたのでした。

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 すると突然、そんな私の背後から女の声が聞こえました。

「それは、『君が代』の歌が流れているのよ……」

 振り返ると、火傷女がぽろぽろと涙を流しながら画面をジッと見ておりました。

「……こいつらは○○の反日過激派なの。こうやって関係のない女たちを誘拐しては無惨に殺し、それを撮影したDVDを日本の政府に送りつけているの……」

 私は言葉に詰まりながらも「どうしてこんな事を……」と聞きました。

「ふん……知らないわよ……日本の政府に電話して聞いてご覧なさいよ……」

 女は火傷で爛れた頬を引き攣らせながら笑いました。

「子供は?……」

 そう私が言うと、女の顔が一瞬にして険しくなりました。

「わからない……知らない……でも、きっとあの子も……」

 女はそう言ったっきりポツリと黙ると、突然凄まじい悲鳴を上げながら部屋中を走り出しました。

「忘れたくても忘れられないの! このまま消えてなくなりたいのに、消えられないのよ! どうしたらいいのよ! 私はいつまでここにいてあの子の事で苦しまなくちゃいけないのよ!」

 女はギャャャャャャ! と絶叫すると、そのまま真っ黒な影に変身し、ヤモリのように壁と天井を這い回り始めました。
 そんな女の影は、天井を三周ほどすると、そのままフッと消えてしまいました。
 再び静まり返った部屋で、私は慌ててDVDを取り出しました。
 そのDVDを右手に掴み、ヤンが寝ている部屋のドアに忍び寄ると、そこにソッと耳を押し付けました。
 中から微かな鼾が聞こえてきました。
 私は、薄暗い廊下をゆっくりと歩き出しました。カラカラに乾いた喉に唾を飲み込む事もせず、息をするのも堪えながら、ただひたすらに正面の鉄扉を見つめ進みました。

 女たちが寝ている襖の前を通り過ぎ、玄関で少しだけ息を吸うと、裸足のままスニーカーを履きました。
 鉄扉のドアノブを握るとなぜか妙に湿っていました。
 それが自分の手の汗だと気づいたとき、果たして一度でこのドアノブを捻れるかと心配になりました。

 この建物には誰もいません。いくら叫んでも誰も気づいてくれません。
 チャンスは一度だけでした。もし、ドアノブを握る手を滑らせれば、戻ったドアノブがガチャっと音を立てます。
 音を立てるのは非常に危険でした。きっとヤンは目を覚まし、慌てて部屋から飛び出して来るはずです。

 下唇をぎゅっと噛み、一か八かドアノブを捻りました。
 上手く行きました。ドアノブは滑る事なく限界まで捻られています。
 あとはこのまま鍵を開けるだけです。もう片方の手で鍵を摘み、息を止めたまま恐る恐る鍵を回しました。
 全く音を立てず鍵は開いてくれました。
 私は少しずつ鼻から息を吐きながら、その呼吸に合わせてドアを押しました。
 ドアの隙間から明け方の青い光がスッと侵入してきました。
 このまま、このまま、このままソッと……
 そう心で呟きながら鉄扉を半分開けた時、突然背後に人の気配を感じました。
 背筋をゾッとさせながら振り返りました。
 するとそこには虫歯を剥き出したヤンがニヤリと笑っていたのでした。

(つづく)

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