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ママ友3



 休日の西山動物園は家族連れでごった返していた。正面入口で妻と中村さんを降ろし、車を駐車場の端に止めた。
 正面入口に行くと、既に入場券を買った妻たちが園内の玄関に置かれた等身大の象の作り物の前で写真を撮っていた。鉄柵越しに妻から入場券を貰い、妙に愛想の悪いおばさんが門番をしている入口ゲートを潜った。

 象の置物の前で待っていた妻たちに「ちょっとトイレ」と言いながら俺はゲート横のトイレに行った。トイレは疲れ切ったお父さん達で溢れかえっていた。小便器には行列ができていたため、俺は素知らぬ顔をして個室に入った。
 小便が飛び散った便座をトイレットペーパーで摘み上げた。ズボンのチャックを開けペニスを摘まみ出すと、指先に冷たい汁がネチャっと付いた。見ると亀頭は我慢汁でネトネトに濡れていた。トランクスには、まるでシロップを垂らしたかのようなシミが広がっていた。
 ちっ、と舌打ちしながら放尿した。そのあとトイレットペーパーで亀頭とトランクスに付着するネトネト汁を拭き取るが、しかし安物のトイレットペーパーは拭く度にボロボロと崩れ、亀頭にペタリとこびりついては、陰毛の中に白いトイレットペーパーのカスを無数に散りばめたのだった。

 トイレを出ると、そこに妻たちの姿は無かった。ゲートの前に立ち辺りを見渡した。真ん中の中央通りに面した猿山、右側にある休憩所のリス園、そして左側にあるフラミンゴ池へと視線を移すと、そこに見覚えのあるベビーカーがあるのを発見した。
 俺は巨大なフラミンゴ池へと向かった。池の中にはおどろおどろしい色をしたフラミンゴが数百匹固まっていた。この不気味な鳥を綺麗だとか可愛いというヤツの気が知れない。俺は子供の頃から、こいつとオウムとインコとニワトリは、凄まじい怨念を持った悪霊の化身だとそう信じていた。

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 そんなフラミンゴ池を囲むフェンスには大勢の人が群がっていた。みんなこの悪霊じみた不気味な鳥に携帯を向けては、必死になって写真を撮りまくっていた。
 そんなものを撮るとおまえら呪われるぞ、と、思いながら妻たちの背後に迫ると、妻と中村さんも必死になって悪霊に携帯を向けていた。
 妻の背後で足を止めると、それに気づいた中村さんがサッと振り向き、俺に笑いかけた。

「撮れますか?」

 そう聞くと、中村さんは「遠くてなかなか上手く撮れません」と、まるで若い頃の松田聖子のようなカワイイ笑顔で首を左右に振った。

「あなたの携帯、すごく解像度が高いんでしょ。あなた撮ってよ。そして私と中村さんにその写真を送ってよ」

 妻は古いスマホをカシャカシャと鳴らしながら背後の俺に言った。
 あんなものを撮ったら呪われるだろ、と言いかけたが、しかし中村さんが「お願いします」と、やはり若い頃の松田聖子のような顔で笑ったため、俺は「はぁ」と頷きながらもしぶしぶ携帯を取り出したのだった。

 俺は中村さんの肩越しに、化け物のような鳥を撮りまくった。
 ホテルに行ったらすぐに塩でお清めしなくてはと思いながらも、中村さんの為に化け物を撮りまくった。
 撮った画像を確かめようと画像を開いた。すると中村さんが、「上手く撮れました?」と、またしても若い頃の松田聖子のような笑顔で振り返った。

「ええ……撮れてるとは思うんですけど……画像を確認しようとしても太陽の光が眩しくて確認できないんですよね……」

 そう答えながら必死に画面を覗き込んでいると、不意に中村さんが「これなら見えるでしょ」と、携帯を覗き込む俺の前に立ち塞がり影を作ってくれた。

「ああ、これなら見えます、ありがとうございます」

 俺は中村さんの背後に踞りながらそう答えた。
 俺が画像を確認していると、突然、周囲の人々が「おおおっ」と一斉に歓声を上げた。どうやら池の化け物が何やらリアクションを起こしたらしく、妻も中村さんも「綺麗ね」などと興奮している。
 周囲の人達も、妻も中村さんも、池の化け物に釘付けになっていた。
 ふと俺は、目の前の中村さんの尻に視線を落とした。薄いカーキ色のミニスカートからは真っ白な足が伸びていた。そしてその下にはさっき便所で見た黒いニーソックスがスラリと続いている。
 一瞬、胸の奥で熱いものがムラっとでんぐり返しした。今ならスカートの中を盗撮できる、と、思うと、そのムラムラは次々に胸に溢れ、俺の呼吸を荒くした。

 俺は素早く携帯を操作し、再び撮影の画面に戻った。そして携帯を握った手をゆっくりと下げ、真っ白な二本の足の隙間で静かに止めた。
 中村さんは全く気づいていなかった。妻も周囲の人々も、池の中で不気味な羽を広げる化け物に釘付けになっており、俺の不審な行動には全く気づいていない。
 アングルはバッチリだった。しかし問題はシャッター音だった。ここでカッシャ! と鳴れば、中村さんだけでなく妻にも気づかれてしまうのだ。

(くっそう……あと一歩なのに……)

 そう下唇を噛んだ瞬間、突然観客達が「おおおっ!」と一斉に歓声を上げた。中村さんの肩越しにチラッと池を見ると、オレンジ色の羽を広げた二匹の化け物が、何やら奇妙なダンスを踊っていた。
 観客達は、慌てて携帯を池に向けた。そして一斉にシャッターを押し始めた。周囲にシャッター音が響き渡った。それはまるで、不祥事を起こした企業の経営陣が、記者会見で頭を下げた瞬間のような、そんな凄まじいシャッター音の嵐だった。
 もちろん俺もそれに便乗してシャッターを押しまくった。あれだけ化け物だ悪霊だと貶しまくっていたフラミンゴを、今は神だ仏だと感謝しながら、俺は中村さんのスカートの中を連写しまくっていたのだった。

 そんな幸運のフラミンゴ池を後にすると、そのまま象がいる檻に向かって歩き出した。
 途中、かき氷やらソフトクリームが売っている売店があった。パラソル付きのテーブルが並ぶその隅に『喫煙所』という張り紙を見つけた俺は、ベビーカーを並べて歩く妻たちを呼び止めた。

「あそこで休憩してるからさ、何かあったら携帯に電話して」

 俺はそう告げながらそそくさと喫煙所へと向かった。象やキリンなど糞食らえだった。俺は一刻も早く中村さんのスカートの中が見たかったのだ。

 喫煙所には、怒り狂った犬のイラストが書いてあるダブダブのジャージを着たヤンキーと、明らかに肝臓が冒されているとわかる顔色の悪い老人が、いかにも人体に悪影響を及ぼしそうな白い煙をモワモワと立ち上らせていた。
 こんな人種と一緒にされるのはヤだなと思いながら、俺は一番隅のベンチに腰掛けた。取りあえずタバコに火をつけ、携帯を開いた。背後に誰もいない事を十分に確認した上で、先ほど撮った画像を画面一杯に開いた。

 まさに感動と興奮の瞬間だった。この時ほど、高画素数の携帯を買って良かったと思った事は無かった。
 股間の黒ずみや、股間に食い込んだパンツのシワの一本一本までもが鮮明に映っていた。しかも、そのアングルは的中しており、中村さんの青い下着のクロッチを確実に捕らえているのだ。

 俺はスパスパと煙草を吹かしながら、数十枚の画像を一枚一枚念入りに見た。すると、ある一枚の衝撃的な画像を発見した。
 それは、たまたま中村さんが足を開いた時に捕らえたものだった。他の画像はパンツが全て股間に食い込んでいるのだが、その画像だけはクロッチが大きく開かれているのだ。
 そんな画像の、広げられたクロッチの中心に俺は怪しい影を発見した。これは確実に『シミ』に違いないと確信を得ながらも、俺はその部分を最大までズームアップしたのだった。

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 それが画面一杯に映し出されると同時に、凄まじい衝撃が俺の脳にガツンっと来た。「でよ、俺なんかよ、地元じゃ、関東連合なんかにイチモク置かれてるなんて言われってっけどよ」と、大股開きで電話をしているヤンキーの大きな声さえも、その衝撃はいとも簡単に弾き飛ばしてしまうくらいだった。

(やっぱり濡れてる……これは間違いなくオマンコ汁だ……)

 俺は愕然と画像を見つめながら、やっぱりさっきトイレで見たあのネトネト汁はいやらしいオマンコ汁だったんだ、と確信した。
 どうして中村さんはアソコを濡らしているんだろう。そう考えながらも、いつしかフィルターまで吸ってしまっていた煙草を慌てて灰皿の中に捨てた。

 中村さんが濡れるという事は、恐らく俺に対しての感情だろう。妻や娘に性的感情を抱くわけが無いのだ。という事は、後部座席から助手席に乗り換えた時だろうか? あのとき中村さんは久しぶりに男と密着し、それでジワっとオマンコを濡らしてしまったのだろうか? いやいやそんな馬鹿な事があるわけない。たかだか男と隣同士で座っただけであそこまで濡れるなんて、それはもはや病気じゃないか。という事はトイレか? あの薄汚い昭和の公衆トイレの雰囲気に欲情し、中村さんはマンコを濡らしたというのか?………

 俺はそんな事を考えながら、無意識にタバコをもう一本取り出していた。
 百円ライターをザクっと回し、煙草の先をジリジリと燃やしながら、ふと俺は、そうだ、中村さんは俺にトイレを覗かれている事に気づいていたんだ、と、胸をドキンっと跳ね上げた。
 そうだ、そうに違いない。彼女はきっと露出狂なんだ。小便をしている途中で俺が覗いている事に気づき、それで思わず興奮してしまった彼女は、小便が出る穴とは別の穴から特殊な汁を溢れさせてしまったんだ。そうだ、そうに違いない、それしか考えられないのだ。

 そう確信しながら深く頷くと、不意に遠くから「あなたぁ〜」という妻の声が聞こえて来た。顔を上げると、青と白のペンギンプールの前で、ベビーカーを押した妻と中村さんが、喫煙所の俺に向かって手を振っていた。
 俺は吸ったばかりの煙草を灰皿に押し付けると、「どうしたぁ」と言いながらゆっくりと立ち上がり、妻たちに向かって進んだ。
 ペンギンプールの前には異様な生臭さが漂っていた。気が狂ったようにプールに飛び込んでいるペンギン達は、これまたある意味、悪霊の化身のように不気味な生き物だった。
 そんなペンギンプールを避けるようにして歩いていくと、妻が疲れ切った表情で「象さん凄い人気。檻にも近づけないわ」と顔を顰めた。

 そんな妻は、ベビーカーを押しながらもパンフレットを広げた。
「だから象さんは後にして、先にここの『熊牧場』に行こうと思うの」と、俺にそのパンフレットを渡して来た。

 そこは、動物園の裏手にある西山の頂上にあった。入口ゲートの横にあるロープーウェイに乗って行かなければならなかった。今更熊なんか見てどうすんだよ、と、いう言葉が出掛かったが、しかし、中村さんが妙にロープーウェイに興味を示しているのを見て、その言葉を慌てて飲み込んだ。
 という事で、仕方なく俺もその熊牧場とやらに付いて行く事となり、ちゃっかりロープーウェイの切符を買いに走らされたのだった。

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 ロープーウェイ乗り場は凄まじい人でごった返していた。定員十名のロープーウェイが、聳え立つ山の頂上に向かって次々に発車していた。
 ベビーカーの持ち込みは禁止されている為、ベビーカーを荷物置き場に預けた。中国人の団体と列に並んでいると、ものの数分で俺達が乗るロープーウェイがやって来た。
 係員が扉を開け、「足下に気をつけてゆっくりと御乗車下さい」と言ったと同時に、俺達の後ろに並んでいた中国人の団体が車内にドっと突入した。定員十名なのに、強行突入してきた中国人たちの数は明らかに十人以上はいるのだ。

 俺と妻と中村さんは、そんな強行的な中国人の群れにたちまち飲み込まれた。この野郎! と、そのゴボウのような顔をした中国人達に怒りを感じた俺だったが、しかし、車内に押し込められた瞬間、俺はそんな中国人に対する怒りが一瞬のうちに消え失せた。

 それは、もみくちゃになった車内で、俺のすぐ目の前に娘を抱いた中村さんがいたからだった。

 俺と中村さんは真正面で向き合っていた。二人の間には娘がいたが、しかしそれでも二人は、まるで抱き合うようにして密着していた。
 妻は窓際に追いやられていた。腐ったゴボウのような顔をした中国人のおばさんたちにぎっしり囲まれ、身動きできない状態だった。

 俺はすぐ目の前にある中村さんの顔を真正面に見ながら、「大丈夫ですか?」と聞いた。中村さんは、娘の頭を必死に抱きかかえながらも「はい」と小さく頷いた。

 そんな中村さんの口紅の匂いが間近に感じられた。こんなチャンスは二度と無い、と、俺は再び思い、今度こそはと下半身に力を込めた。

 ガタンっとロープーウェイが動き出すと同時に、ピンポンパンポン、と、天井のスピーカーから車内放送が流れた。

「頂上までは約二十分ほどかかります。もし、途中で御気分が悪くなった方がお見えになりましたら、ご遠慮なく係員にお申し付け下さい」

 俺は、この状態で気分が悪くなるわけないだろアホ、と心で呟いた。そして、中村さんの顔を真正面に見ながら、(この人のアソコは今、濡れているんだぞ)と自分に言い聞かせ、みるみると硬くなって行く自分の下半身に羞恥な焦りを覚えていたのだった。

(つづく)

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