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裸のOL2



 私の精神がおかしくなったのは、今から二年前のクリスマスの夜でした。

 当時、私には婚約者がいました。相手は私と同じ会社に勤める佐々木山(23才)という背の高い青年でした。1つ年上の24才だった私はその頃妙に結婚に焦りを感じ、一日も早く佐々木山と籍を入れたいと思っていたのですが、しかし婚約していると思っていたのは私の一方通行でありまして、まだ若い佐々木山には結婚する気など更々なかったのです。

 そんな佐々木山の本心が発覚したのは二年前のクリスマスの夜でした。
 その夜、佐々木山は大学時代の友人達と飲み会があるからと、私をその飲み会の席に誘いました。
 佐々木山に連れられて行ったその飲み会の場所は、今時の若者達がクリスマスの夜に飲み会を開くような居酒屋やパブといった場所ではなく、町外れにある大きな旅館でした。
 その旅館はまるで廃墟のように薄暗く、他に客の姿も見当たりません。そんな旅館のカビ臭い廊下をミシミシと進みながら、佐々木山は私に「ここは大学時代の友達の親が経営してた旅館なんだけど今は休業してるんだ。ちょっと汚いけど、でも会場費はタダだから」と笑います。
 そんな佐々木山に何の不審感も抱かないまま、私は黙って彼の後について宴会場へと向かったのですが、しかしそのだだっ広い宴会場に着くと、私はおもわず「えっ?」と佐々木山に振り返らずにはいられませんでした。
 というのは、その宴会場に集まっていた十数名の大半は、どう見ても四十代のオヤジばかりだったからです。
 私は「大学時代のお友達じゃなかったの?」と、慌てて佐々木山に小声で聞きますと、佐々木山が私に返事をする前に、1人のおばさんが「あらあら」と笑いながら私たちに駆け寄り、「こっちの席にどうぞ」と、私達を宴会場の中央の席へと案内しました。
 佐々木山はそんな三十代のおばさんとも随分と親しいようで、私達が古い畳をスリスリと音立てながら宴会場の中央の席へ向かう間も、佐々木山とおばさんは何やらコソコソと話しては下品な笑いを漏らしておりました。
 席に着くと私はさっそく佐々木山に尋ねました。しかし佐々木山はそんな年配の人達を「あれは大学の先輩だよ」と素っ気なく言い、すぐに隣の席に座る恰幅の良い中年男性と雑談を始めます。
 私はお膳の上にポツンと置かれた仕出し屋の安っぽい弁当を眺めながら、この宴会はなにかがおかしいと嫌な予感を感じておりました。
 そんな私がふと宴会場に目を向けますと、周りに座っていた中年夫婦や頭のハゲた親父達といきなり目が合いました。なんと私の回りにズラリと座っている者達全員が、まるで私を観察するかのように私の事をジッと見ていたのです。
 その光景は異様なほどに不気味でした。貪よりとした中年夫婦達のその重たい視線におもわず鳥肌が立ってしまった私は、すぐにでもこの宴会場を出たいと激しい不快感に襲われ、隣の佐々木山に慌てて振り返りますと、なんと私の隣にはさっきまで佐々木山と雑談していた恰幅の良い中年男性が座っており、佐々木山はというと、いつの間にかその数席向こうに座っているまるで売れない漫才師のような中年夫婦のお膳の前に座ってはのんびりとお酌をしていたのです。

「ま、一杯……」

 呆然と佐々木山を見つめている私に、隣の恰幅の良い中年男性がいきなりビールを向けて来ました。
 私はお酒などとても飲めるような気分ではなく、「いえ、お酒は飲めませんので……」と丁重に断ると、恰幅の良い中年男性は、「なら、ジュースにしましょう」と、お膳の下に置いてあった妙に古臭いオレンジジュースの瓶を私に向けて来たのでした。

 それからの私は、生温いオレンジジュースをチビチビと飲みながら恰幅の良い中年男性のつまらない話しを延々と聞かされていました。その間も、やはり周りからの視線を感じます。周りの中年夫婦達はチビチビとオレンジジュースを飲んでいる私を貪よりとした重たい視線でジッと見つめ、そして時折ニヤッと唇の端を歪めては笑っているような仕草も見せています。
 怖い、早く帰りたい、そう思いながらも隣の恰幅の良い中年男性にオレンジジュースを何度も何度も勧められていた私は、いきなり激しい頭痛に襲われました。
 目の前の光景がジワーっとフェイドアウトし、薄ぼかしの黒い影がぼんやりと視界を遮りました。まるで誰かに突き飛ばされたかのようにクラっと目眩を感じました。首が蒟蒻のようにクニャっと曲がり、そのまま後ろにカクンっと折れると、隣に座る恰幅の良い中年男性が「大丈夫ですか?」と、薄らと含み笑いを浮かべながら私の肩を支えました。
 中年男性の荒い鼻息と、誰かが畳の上をスリスリと歩く足音と、佐々木山の「どうした?」という声が同時に聞こえて来ました。
 激しい頭痛と目眩に襲われる私の背中を、佐々木山はソッと抱きました。朦朧とする意識の中、さっき佐々木山と親しく話していた中年のおばさんが座敷の隅にせっせと座布団を並べているのが見えました。
 私は佐々木山に抱きかかえられ、その座布団の上に寝かされたのでした。

 私を見下ろす佐々木山は「お騒がせしてすみません。ちょっとした貧血です」とみんなに笑いかけていました。私はそんな佐々木山に「帰りたい」と何度も言おうとしますが、しかしどういうわけか全身がジーンと痺れ、声さえも出す事が出来ません。それはまるで金縛りに遭った時のような感覚でした。意識ははっきりしているのに体が動かず、声も出せないまま脳と目玉だけがギョロギョロと動いているのです。
 そんな状態で座敷の隅に寝かされていました。しばらくすると強烈な頭痛は治まりましたが、しかし未だ体はぴくりとも動かず、かろうじて右手の人差し指の第一関節までがピクピクと動かせるだけでした。
 2組の中年夫婦が、寝転がる私を取り囲みながら心配そうに見ていました。
「緊張したんだね、きっと」
 私の顔の真横で胡座をかいていた中年男性が、そう言いながら自分の足をガリガリと掻きました。私の目の前にあるその男のナイロン地の靴下からはまるで納豆のような嫌な臭いが漂って来ますが、しかし体が自由に動かせない私は顔を背ける事すらできません。

「凄い汗だな……これじゃあ風邪を引いてしまうよ。おい、おまえ、オシボリで汗を拭いてあげなさい」

 図書館の館長のような品のある初老の男性が、自分の妻らしき中年女性にそう言いながら乾いたオシボリを渡しました。
 すると、もう1組の中年女性が、「あら本当、凄い汗だわこの子……」と、私の額にあてた自分の手の平を見て驚いております。
「ちょっと加藤さん、バスタオルを貸してもらえませんか」
 乾いたオシボリを手にした中年女性が、唯一この旅館の関係者らしきおばさんにそう言うと、その声を聞いた大勢の人達が、「大丈夫か?」と口々に呟きながらドヤドヤと私の回りに集まって来ました。
 しかしそこには肝心の佐々木山の姿はありません。私は今ここに佐々木山の姿があればどれだけ心強い事だろうと思いながらも必死で目玉を動かしては佐々木山を探しますが、しかし、大勢の中年夫婦達に囲まれてしまった私の視界は、私を取り囲む彼らによって遮られてしまったのでした。

 そんな大勢の人達に囲まれながら、身動き1つできずただジッと横たえていた私は、私を囲む中年男性達が放つ独特な匂いに吐き気を感じながらも目だけをギロギロと動かしていました。
 私の周りで胡座をかく中年男性は6人、私の額や首の汗を拭いてくれている中年女性は2人、いずれも40代から50代の人達ばかりで、彼らはまるで自分の娘を見るかのように心配した表情で私をジッと見下ろしています。。
 ふいにそんな中年女性の手が私のブラウスのボタンに触れました。私が「えっ?」と思っていると、中年女性の指は、慣れた手つきで次々とブラウスのボタンをポツポツと外して行きます。
(嘘でしょ!ちょっと!ヤメて!)
 私は必死でもがきます。しかしかろうじて「うーうー」っという声は出るものの、その声はまったく言葉にならず、同じく体のほうも右手の人差し指だけがピクピクと動くもののあとはジーンと痺れたままピクリとも動きません。
 そうこうしているうちに私のブラウスはボタンを全て外され、私は男達の前で白いブラジャーを曝け出されていたのでした。
 しかし、そんな男達は私のブラジャー姿を見ても別段顔色を変える事なく、今までのように心配そうに私を覗き込んだままです。私の体を乾いたタオルでせっせと拭くおばさんたちも、まるで障害者を介護しているかのような手付きで手際が良く、そこにいやらしさや悪意はまったく感じられません。
「こりゃ凄い汗だよ……」
 おばさんはそう言いながら遂に私のブラジャーに手を掛けました。
 抵抗の出来ない私は恥ずかしさのあまり目をギュッと閉じました。
「ほら、中までびっしょりだ……」
 そう言いながらおばさんは私のブラジャーを外し、私のCカップの乳房を中年男達の前に晒しました。
 その間にも、別のおばさんがスルスルッとスカートを下ろします。
「あらあら、こっちも汗で湿っちゃってるわ、このままだと風邪を引いちゃうわ……」
 おばさんはそう言いながら私のストッキングに手を掛けました。
 この異常な状況の中、私は恐怖に包まれながらも、冷静にその人々を見ていました。
 私を囲む男達の視線はスルスルと下ろされて行くストッキングを見つめています。そんな男達の中にいた図書館の館長のような初老の男性が一瞬ニヤッと微笑んだのを私は見逃しませんでした。
 その男のいやらしい笑顔を見た瞬間、私はそこで初めて佐々木山に騙された事に気付いたのでした・・・

(つづく)

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