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眠れない夜4

2013/05/30 Thu 18:04

眠れない夜4



「何も無くてごめんなさいね」

 そう言いながら茹でたウィンナーを運んで来た妻に、片桐は恐縮しながら「いえいえ、とんでもございません」と、座卓の上の料理を見渡した。
 そりぁそうだろう、こいつの夕飯は黒ずんだイカにごはんが詰まったゲテモノだったんだから、と口に出そうになるのを慌てて堪えた私は、「遠慮するなよ」と言いながら片桐のグラスにビールを注いだ。

「彼のマンションはすぐそこなんだってさ」

 キッチンに向かってそう言うと、水を出しっぱなしの流し台で青虫のような色をしたレタスをバリバリと毟っていた妻が「そうなんだぁ」と驚いた。

「だから飲め。終電の心配もいらないんだから、ほら、もっと飲みなさい」

 そう私が更に缶ビールの先を突き付けると、片桐は「はい」と嬉しそうに笑いながら慌ててグラスのビールを飲み干し、その泡が滴るグラスを遠慮気味に私に向けたのだった。

 そうやって始まった飲み会は、流れ行く時計の針に合わせるかのようにして次々にビールの空き缶を増やして行った。
 片桐は酒も強かったがメシもよく喰った。妻が出すもの出すものたちまちバリバリと平らげた。
 京都の取引先からお中元で頂いた西利の『からし漬』だけをポリポリと齧っていた私は、改めて彼の若さを思い知らされた。
 そして、これほどの暴飲暴食男なら、さぞかし精力の方も強い事だろうと思い、一人密かに妻の膣が壊されてしまうのではと案じていたのだった。

 そんな飲み会もかれこれ一時間が過ぎ、全ての料理を出し尽くした妻もようやく卓に付く事が出来た。

「そうそう、おまえのために赤ワインを買ってあるんだった」

 今気付いたかのようにわざとらしくそう言いながら、私は酒屋のビニール袋の中からワインを取り出した。そして、素早くコルクをスポンッと抜くと、妻のグラスにトクトクとワインを注いだ。

「今夜はお前もグイグイやってくれ」

 そう言いながら私は、事前に座布団の下に隠しておいた睡眠薬を、股の隙間にソッと取り出した。
 睡眠薬は既に粉々に砕かれていた。いつこのようなチャンスに出会してもいいようにと、粉末状に砕いた睡眠薬を常に持ち歩いていたのだ。

「それじゃあ、頂きます」

 そうハニカミながらグラスに唇を付ける妻を見て、ほろ酔い気味の片桐が「しかし、主任の奥さんは綺麗だなぁ……」と溜め息混じりに呟いた。そしてそれと同時に、唯一私の肴である西利の『からし漬』をひょいと摘んだ。
 そんな片桐に、私は(ヤリたいか?)と心で呟きながら、「おだてたって、もう何も出て来ないぞ」と、まるでノリスケを戒めるマスオのように笑った。
 しかし片桐は、そんな私を軽く無視し、無礼にも「失礼ですが、おいくつですか?」と妻に年齢を聞きながら、またしても私の『からし漬』を指で摘んだ。

「もう三十四なんですよ」

 そう恥ずかしそうに答える妻を横目に、私は残り一枚となった西利の『からし漬』が気になって仕方なかった。

「いやぁ〜三十四歳には絶対に見えないっすよ〜自分と同い年っていっても全然通用しますって〜」

 いつしか片膝を立て、平気でゲフっとゲップを吐き出すようになっていた片桐は、まるでキャバクラの女を見るような目で妻を見ながらそう言った。
 すると、満更でもなさそうな表情でワインを飲み干した妻が、「えぇ〜それはないでしょう、片桐さんはおいくつなんですか?」と、大きな瞳を輝かせながら聞いた。
 片桐は、だらしのない表情で「自分っすか?」と答えた。そして「えっと……えっと……」と天井を見上げながら呟き、公文で勉強する小学生のように指折り数え始めた。
 そんな片桐を見ていた私は焦燥感に駆られた。片桐は、既に自分の歳がわからないくらいに酔いが回ってしまっており、早く実行しなければ、妻よりも先にこいつが寝てしまうのではないかと不安が過ったのだ。

 一刻も早く妻を昏睡させなくてはと焦った私は、妻に「水を一杯くれ」と小声で頼んだ。「あ、はい」と立ち上がった妻は、未だ天井を見上げながら自分の歳を指折り数えている片桐を残し、そのままキッチンへと向かった。
 妻の足音を聞きながら、私は空になった妻のワイングラスをソッと摘むと、それを座卓の下に置き、素早く睡眠薬の袋を破った。
 口を開いた袋を摘む私の指は震えていた。ここでこれが妻に見つかれば一巻の終わりだと思うと、必要以上に慎重にならざるを得なかった。
 ソッとキッチンを見ると、妻が『六甲のおいしい水』のペットボトルをグラスに傾けていた。焦りながらも私は、妻のジーンズに包まれたポテポテの尻を見ていた。今からあの尻が、この若造に好き放題にされるのかと思うと、私の下腹部で真っ黒な欲望が狂ったように渦を巻いた。

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 熱っぽい興奮に脳をクラクラさせながら湿ったグラスに袋を傾けると、白と青が混じった粉末がササササっと流れ落ちた。
 素早く座卓の上のワインを掴んだ。座卓の下でトクトクとワインを注いでいると、突然片桐が「そうか!」と叫び、それに驚いた私は、もう少しで瓶の口をグラスから外す所だった。

「奥さん、わかりました! 僕、今年で二十四才ですよ! 先月、二歳下の弟が二十二才の誕生日でしたから、僕は二十四才になったのです!」

 片桐がキッチンに向かってそう叫ぶと、水の入ったグラスを持った妻がスッと現れ、「そう」と笑いながら畳に両膝を付いた。
 妻が水を座卓に置くと同時に、私は睡眠薬入りのワイングラスを卓下から取り出し、素早く妻に向けた。そして、「ほら、キミも彼に負けずに飲め」とそれを妻に渡すと、それを見ていた片桐が「そうだそうだ、今夜は飲み明かしましょう奥さん!」と呂律の曲がらない口調で叫び、最後の一枚だった私の西利の『からし漬』を、無情にもポリポリと噛み砕いてしまったのだった。

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 妻がそれを飲み干したのは、それから二十分も過ぎた頃だった。
 睡眠薬が効くまでは、約三十分ほどかかった。
 それまでに片桐が酔い潰れてしまわないかと、私はそれだけが心配だった。

 もはや片桐は、ここが自分の家であるかのように座椅子にふんぞり返っていた。ゲップだけでなく、放屁さえも平気でやらかしていた。
 そんな片桐の態度にいちいちイラついていた私だったが、しかし、これから例の計画を実行するにあたっては、このくらい酔っていた方がスムーズに行くかも知れないと思い、私は、その平気でパスパスとやらかす不躾な放屁さえも寛大に聞き流していたのだった。

 そんな片桐が、一人グダグダと会社の悪口を話し続けていると、早くも妻の様子に変化が現れ始めた。

「だからね主任、俺、思うんっすよ、あの課長のやり方じゃ部下はついて来ないってね。でしょ奥さん」

 アタリメを唇の端から突き出し、奥歯でクチャクチャさせながら片桐がそう妻に聞いた。すると妻は五秒ほどの沈黙を置いた後、「えっ?」と聞き直し、慌てて「ええ、そうですね」と相づちを打った。
 そんな調子が暫く続いた。その間、妻の沈黙は少しずつ長くなり、終いには片桐の問いにも答えなくなっていた。
 私は、妻の代わりに片桐に相づちを打った。そうしながらもソッと横目で隣りの妻を観察した。
 妻は目を半開きにさせたまま、散らかった卓上をぼんやりと見つめていた。その目は、三十秒に一回の割合で白目になり、暫くするとカクンっと首が折れた。その度に「はっ」と慌てて目を覚ましていた妻だったが、しかし、それを何回か繰り返した挙げ句、遂にはカクンっと項垂れたままスースーと小さな寝息を立て始めた。
 それはまるで、電車で居眠りをしている疲れたOLのようであり、今ならこの女を好きなようにできる的な、妙なエロティシズムがムンムンと漂っていた。

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 片桐にバレぬよう、妻のジーンズの太ももに指を伸ばした。
 ムチムチの太ももを指腹でスリスリと摩った。何も反応がなかったため、今度はそこをムニムニと指で押してみるが、それでも妻は寝息のリズムを乱す事なく全くの無反応だった。
 完全に落ちた、と思うと、早くも射精したくなるほどの興奮が襲い掛かって来た。

「この間だってね、課長は自分の失敗を俺に押し付けたんっすよ。知ってるでしょ主任も、加川工業のあの見積もりは俺じゃなくて課長が書いたんですよ」

 私は片桐に「うんうん」と頷きながらも、お姉さん座りする妻の股間に指を伸ばした。ジーンズの上から、股間に食い込む縦線に沿ってスリスリと指を動かし、それでも無反応な妻にゾクゾクした。
 人前でこんな事をするのは初めてだった。例え相手が酔った部下であろうと、これは凄まじい興奮を与えてくれた。

「だけどね片桐君、加川工業さんはキミの担当じゃないか。例え課長が勝手に見積もりを直したとしてもね、それを最終チェックしなかったキミにも責任があるんじゃないかなぁ」

 少しでも片桐の気をそらす為にそう挑発してやると、案の定片桐は「でも主任、俺のような新入社員がね、わざわざ課長がやった見積もりにケチ付けるなんてできないでしょう!」と熱くなり、もはや缶ビールを直接ガブガブと飲みながらブツブツ言い始めた。
 その隙に私は、妻のジーンズのボタンを外した。金色のジッパーを一気に下ろすと、「しかしキミ、そんな事は加川工業さんには関係ない事だろ」と更に挑発しながら、ボタンの外れたジーンズの隙間に手を入れた。
 片桐は、その件に対して余程腹に据えかねていたのか更に熱くなった。不貞腐れながらブツブツ言い始めた片桐の愚痴に頷きながらも、私は陰毛の奥へと指を潜り込ませたのだった。

 じっとりと湿った柔らかい襞が指腹に触れた。
 その襞を手探りしながら捲ってみると、なぜかその奥はねっとりと濡れ、異様な熱を帯びていた。
 もしや妻は目を覚ましているのではと一瞬恐怖が過った。が、しかし、妻は小さな寝息を立てており、その表情も明らかに寝顔と化している。

(どうして濡れているんだ、どうして濡れているんだ、どうして濡れているんだ)

 私はそう何度も繰り返しながら軽いパニックに襲われた。
 片桐に美人だとおだてられ、それで妻は濡れてしまったのだろうかと激しい嫉妬に駆られた私は、無我夢中でジーンズを引きずり下ろし、おまえはそこまで淫らな女だったのかとトチ狂いながら、そこに卑猥な陰毛が渦を巻く恥骨を晒してやった。
 今ここで片桐が座卓の下を覗き込んだら妻の陰部は丸見えだった。そんな焦燥感に駆られながらも、しかし私は、そのゾクゾクする感覚に密かに身悶えていた。
 座卓に顔をうつ伏せながらスースーと寝息を立て始めた妻は、やはり完全に落ちているようだった。
 冷静に考えれば、この状態で妻が寝たふりをする意味などどこにもなく、改めて今の自分が尋常ではない事に気付かされた。
 もしこれが二人にバレれば、夫婦的にも会社的にも取り返しがつかなくなる事は充分承知していたが、しかし私は、もはや自分を止められなくなってしまっていた。

 私は妻の陰毛を指でジリジリさせながら、なんとか片桐にバレないよう、下半身だけでも全裸にできないだろうかと考えていた。
 部下との飲み会で、部下にバレぬよう座卓下の妻の下半身を全裸にし、そのまま密かに指マンするなど、想像しただけで興奮の目眩を感じるのだ。
 しかし、このムチムチの太ももからジーンズを脱がす事は容易ではなさそうだった。しかも妻は、御丁寧にもストッキングまで履いており、その全てを片桐にバレないように脱がすのは不可能に近かった。
 それでもなんとかしようと、座卓の下で妻の下半身に右手をモゾモゾさせていると、不意に片桐が「どうしたんっすか主任?」と、真っ赤な目で私を見た。
「いや」と焦った私は、せっかく太ももまで下げたジーンズを、元通りにしようと慌てて引っ張り上げた。
「ん?」と首を傾げた片桐がゆっくりと体を傾け、座卓の下を覗き込もうとした。

「見るな!」

 思わず私はそう叫んでいた。
 妻の痴態を見られたいと思っていたにも係らず、いざとなると臆病風に吹かれてしまったのだ。
 しかし酔った片桐は、そんな私の言葉には耳も貸さず座卓の下を覗き込んだ。
(見ないでくれ!)と心で叫びながら下唇をギュッと噛んだ。
 座卓の下から「あっ」という片桐の声が聞こえると、もはや私はイジメられた少女のような弱々しい表情となり、(妻のアソコが他人に見られる……こんな酔っぱらいの若造に、私の大切な妻のアソコを見られてしまう……)と、その恐怖に肝を潰された。

「主任……もしかして奥さん……酔っぱらっておしっこ漏らしちゃったんっすか……」

 そんな片桐のふざけた言葉が、私の胸を容赦なく抉った。
 涌き上がる怒りに奥歯を噛み締めた。
 が、しかし、その怒りは瞬時に欲情へと変わった。

 このチャンスを逃すものかと、私は座卓の下を覗き込む片桐の丸まった背中を見つめながら、「そ、そうなんだよ……」と呟いた。

「こいつは滅法酒が弱くてね……酔うとすぐに漏らしちゃうんだよ……」

 そう言いながらジーンズと下着を一気に引き上げた私は、もはや完全に狂ってしまっていたのだった。

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(つづく)

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