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眠れない夜6

2013/05/30 Thu 18:04

眠れない夜6





「濡れているんなら、どうして早く脱がさないんだ……」

 私は、わざと片桐を非難するような目で見ながら、横たわる妻の足下に腰を下ろした。

「いや……それは……」

 そう片桐は焦りながらも、妻のパンティーの中から慌てて右手を抜き取った。
 そんな片桐の、右手の人差し指と中指には、ネトネトと糸を引く透明の汁が絡み付いていた。指の根元までどっぷりと濡れており、かなり激しく穴の中を掻き回していた形跡が残されていた。

 重たい嫉妬に鈍痛を感じながら、私は、妻の下腹部にソッと両手を伸ばした。
 時刻は既に午前零時を過ぎている。
 早く作戦を実行させないと時間がない。
 そう焦る私は、「キミは、彼女はいるのかね」と聞きながら、妻の柔らかい下腹部に食い込んでいるストッキングのゴムに指を引っかけた。

「いえ……去年までいたんですけど……フラれちゃいまして……」

 片桐は、妻の汁で濡れたその指を、こっそり座布団の端で拭いながらそう答えた。

「そうか……それなら随分と溜まっているな……」

 そう呟きながら私は、ストッキングと下着を同時にスルスルと下ろし始めた。そして、ソッと片桐の顔を横目で見ながら、「それじゃあ性欲の処理なんかはどうしてるんだね。駅裏の風俗かね」と、意味ありげにニヤリと笑うと、片方の左足だけストッキングと下着をスポッと抜いた。

「……いや、それは、それなりに……」

 そう照れくさそうに笑う片桐は、蛍光灯に照らされた妻の陰毛から慌てて目を反らした。
 そんな片桐を見つめながら私は、「それなりにってのは、コレの事か?」と、握り拳を上下に動かしてはセンズリのジェスチャーをした。
 すると片桐は、「へへへへ」と下品な笑いを浮かべながら「まぁ、そんなとこですよ」と呟くと、既に妻の汁がカピカピに乾いてしまっている指で缶ビールを摘み、生温いそれをクイッと一口で飲み干してしまったのだった。

「そうか……」と呟きながら私は、キュッと股間を閉じている妻の柔らかい太ももを優しく撫でた。そしてその指をジワリジワリと太ももの裏側に滑らせながら片桐に言った。

「それはすまないことをしたな。溜まっているキミに、こんな刺激の強い事をお願いしちゃって……」

「いえいえ」と慌てて首を振る片桐を、私はジッと見つめた。
 そして、ぐったりとする妻の股をゆっくりと開きながら、「お詫びの印と言っちゃあなんだが……これを見てセンズリでもしていくといい」と呟くと、片桐の目の前に、ぐちょぐちょに濡れた妻の陰部を剥き出してやったのだった。

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 ギョッとしながら、パックリと開いた妻の陰部を凝視する片桐は、すぐさま私の目を横目でギロッと見つめ、その乾いた喉にゴクリと唾を飲み込んだ。

「マ、マジっすか……」

 横目で呟く片桐に、私は「マジっす」と頷いた。

「但し、眺めるだけにしてくれよ。入れるのはもちろんの事、触ったり舐めたりするのもやめてくれ。さっきみたいに指を入れるなんて事は絶対にしないでくれよ」

 そう嫌みっぽく笑うと、片桐は「あれは……」とバツが悪そうに頭をガリガリと掻き毟り始め、小さな声で「すみません」と呟きながらニヤリと微笑んだ。

「まぁ、キミのチンポをそこまでしてしまったのには、少なからず私にも責任があるからね」

 私はそう言いながら、片桐のトランクスから飛び出している勃起したペニスを見て笑った。

「その責任は取らせてもらおうじゃないか。でも、さすがにセックスまではヤらせるわけにはいかないから、くれぐれも見るだけにしてくれよ」

 私はそう言いながら中腰に起き上がった。そして、小さな寝息を立てている妻の顔をソッと覗き込みながら「まぁ、こんなおばさんのマンコで申し訳ないがね……」と余裕の表情で笑ったが、しかし、目を半開きにさせていた妻と一瞬目が合ったような気がして、その笑顔はとたんに引き攣った。
 瞬時に心臓がドッと飛び跳ねた。
 私は、慌てて前屈みになり、妻の半分開いたその目を覗き込んだ。
 黒目が一点をジッと見つめていた。念の為、半開きの目の前で、いきなりパンっと拍手してみたが、その黒目は微動だにしなかった。
 気のせいだったかと、ホッとした私だったが、しかし、もしこれがバレたら間違いなく離婚だろうと思うと、急速に背筋が寒くなった。
 途中で目を覚まさなければいいが……と不安を覚えながら、妻の右足から素早くストッキングと下着を抜き取った。白い下着だけをそそくさとズボンのポケットの中に押し込んでいると、背後で片桐が「本当にいいんっすね……」と、恐る恐る聞いて来た。
 私はゆっくりと後ろを向いた。
「妻が目を覚ましたら大変だ。だから絶対に乱暴な事はするなよ」
 そう念を押すと、片桐は急にニヤニヤと頬を弛ませながら「わかってます。絶対にコレは入れませんから」と、五百ミリリットルのペットボトルはあろうかと思われる巨大なペニスを、自慢げに握ったのだった。

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 しかし、そう約束しながらも、平気でソレを入れてしまうのがこの男だという事はわかっていた。
 何度も言うが、この男は、私が少しずつ少しずつ大切に食べていたあの西利の『からし漬』を、無慈悲にも一口で喰ってしまうような、そんな図々しい男なのだ。
 そんな男が、これほどまでにペニスをビンビンに勃起させておきながらも、それでもそれを妻のアソコに入れないないわけがなかった。
 私は最初からそれをわかっていた。
 いや、私は最初からそれを望んでいたのだ。

 居間の畳をスリスリと鳴らしながら、黙って台所に進んだ。
 ふと、流し台の上に、私の大好物の大根サラダがラップに掛けられているのが目に飛び込んで来た。
 恐らく妻は、ここで大根サラダを出してしまえば、あの西利の『からし漬』のように片桐に全て食べられてしまうだろうと危惧し、それを私の為に隠しておいてくれたのだろうと思った。
 妻はそんな女なのだ。私のこの偏屈な性格を、誰よりも温かく見守ってくれている優しい女なのだ。
 そんな妻を、私は今、無惨にも裏切ろうとしていた。
 己の汚れた性欲の生け贄として、この薄汚い若者に妻の肉体を差し出そうとしているのだ。

 切ない思いが胸を締め付けた。
 振り返るな、振り返るな、と自分に言い聞かせた。
 今ここで妻を見てしまえば心が揺らぎ、せっかくの計画が台無しになってしまうと、必死にその感情を押し殺しながら前に進んだ。
 が、しかし、背後で「いってらっしゃ〜い」と、能天気に笑う片桐の声を聞いた瞬間、その切なさがとたんに性的興奮へと変わった。
 胸の奥で淫らなマグマがムラッと涌き上がり、たちまちこのスリリングな現実に引き戻された私は、もはやそこにある大根サラダが、ただの大根のカスに思えた。

 虐められた後の野良犬のように、私は恐る恐る後ろを振り返った。
 すぐ目の前に、ぐったりした妻を抱きかかえた片桐が笑っていた。

「寝室、お借りしますよ」

 そう笑いながら片桐は、奥の襖を足で開けた。
 電気の消えた寝室からは、干した布団の匂いと、妻の化粧水の香りと、私の加齢臭がほんのりと漂ってきた。
 そんな夫婦のプライベートな空間に勝手にズカズカと入った片桐は、窓際のベッドに妻を寝かせた。

「しつこいようだが、絶対に——」

「——わかってますって。心配しないで下さいよ、絶対にセックスはしませんから」

 片桐は怪しげに目を輝かせながらニヤリと笑った。
 そんな片桐の目の輝きに、おもわず射精しそうなくらいの強烈な快感に襲われた。

(妻は確実にこの男にヤられる……)

 私は、そう胸を締め付けられながら、まるで夢遊病者のようにフラフラと廊下を進み、後ろ髪を引かれる思いで部屋を出たのだった。

 エレベーターの扉が開くと同時に、深夜の生温い風が私を包み込んだ。
 いつもと同じだった。
 夜な夜な眠れない目を擦りながらコンビニに行く時刻と、空気と、その風景は、いつもと何も変わらなかった。
 しかし、私の精神状態はいつもと違っていた。
 今から、愛する妻があの無礼な若者に何をされるのかと考える私は、いつもの不眠的な朦朧とした感覚ではなく、まるで危ない薬を注射したかのように覚醒的な興奮状態にあったのだった。

 あいつは絶対に舐めるだろう。乳首も唇も舌も耳も、足の指までも、あいつは妻の体中を舐めまくるだろう。そしてあの柔らかいワレメの中に舌を滑り込ませ、舌でヌルヌルとかき混ぜながら妻の体液や滓を味わうのだ。唯一、夫である私だけが舐める事が出来るあの部分を、あいつは図々しくもベチョベチョと舐め回すのだ。そう、あの西利の『からし漬』のように。

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 そんな事を考えながらコンビニに着くと、いつもの老店員が、また今夜もここに来たのかとうんざりした顔つきで「いらっしゃいませ」と唸った。
 私はそんな老店員に、いつもの私とは違いますよ、と、心の中で呟きながら、いつもの雑誌コーナーへと向かった。

 何気に手にした成人雑誌のグラビアは、よりにもよって『人妻の浮気』を特集しており、間男が投稿したとされる生々しい浮気写真が何枚も掲載されていた。
 そこに映る不貞妻たちの醜い痴態写真を、一枚一枚食い入るように眺めている私は、当然、その女達と妻とを重ね合わせて見ていた。
 そんな写真の中に妻に似ている女を発見した。
 顔にはモザイクがかけられていたが、その柔らかそうな体と、タプタプとした乳肉は妻そのものであり、不意にセックス時に妻の全身から漂うあの甘い香りが鼻孔の奥で蘇った。

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 やはり妻も、他人男とラブホに行けば、こんな風に乱れるのだろうかと思った。
 私にはまだ見せていない淫乱な姿を、他人の男に見せるのだろうかと、嫉妬と興奮で目眩を感じた。
 突然私はその写真だけをビリビリと破り始めた。他の男にこの写真を見せたくないという一心でその写真だけを破り取り、それをポケットの中に押し込んだ。
 そしてその雑誌をラックに戻した瞬間、レジの方から健康サンダルがスタスタと鳴る音が近付いて来た。

「あんた、それはいかんよ……」

 背後で老店員がそう呟いた。
 私は勢い良く後ろに振り向いた。そして眠ったような目で私を見ている老店員の顔面スレスレまで顔を近づけ、まるで親の敵でも見るような目つきで睨みながら「もちろん買いますよ、買うに決まってるでしょ」と、語気荒く言った。
 老店員は黙ったまま顔を背けると、履き古した焦げ茶色の健康サンダルをスタスタと鳴らしながらレジへと向かった。
 そんな老店員の背中に私は毒づいた。

「何が『いかん』のだ。いかん理由を述べろ。おい、コウモリ男、いつもいつも夜中に活動しているコウモリ男、なんとか言えよ、何が『いかん』のか説明してみろよ」

 すると、レジの中に入ろうとする老店員が「コウモリはあんただろ」とポツリと呟いた。
 図星を突かれた私はカッと血が上り、張り裂けんばかりの声で「貴様!」と怒鳴った。そして雑誌をラックから乱暴に引き抜くと、レジにズカズカと進み、その雑誌をレジ台にバン! と叩き付けては、「何が『いかん』のか説明しろ!」と怒鳴った。
 老店員は、そんな私の言葉を無視しながら、雑誌の裏にバーコードリーダーをピッと走らせると、「今日はポテトサラダはいらんのかね」と面倒臭そうに呟いた。

「そんなものいるか!」と、私は怒鳴った。

「私がいつもいつも夜中にポテトサラダばかり食べていると思うなよ貴様! 何がコウモリだ馬鹿者、もう一度言ってみろ! 私がコウモリならおまえは蛾だろ! コウモリの餌になる蛾だ! おまえは私に喰われる蛾男だ!」

 と、そう狂ったように叫び散らしながら私はその雑誌をビリビリに破り、それを床に叩き付けて何度も踏み潰した。
 すると、そんな私を呆れた顔で見ていた老店員が、溜め息混じりに「四百五十円です」と言った。
 その妙に人を小馬鹿にしたような言い方に余計イライラさせられた私は、財布を取り出そうとポケットの中を弄りながら、「お前は口が臭いんだ、いつもいつもここに来る度に吐き気がしてたんだ」などと、グチグチ言っていたが、しかしその汚い言葉は次第にフェードアウトしていった。
 なんと、私のポケットの中に財布が無かったのだ。
 右のポケットには例の雑誌の切り端しかなく、左のポケットには妻のパンティーが押し込められているだけだったのだ。
 最悪な事に、私は財布をマンションに忘れて来てしまったのだ。

 瞬時に青ざめた私からは、もはやさっきの勢いは消えていた。
 静かに目を閉じながら「財布を忘れて来た」と呟くと、老店員は小さな溜め息をついた。

「財布を取って来るから待ってろ」

 そう言いながら店を出ようとすると、老店員は「あんた、それはいかんよ」と私を引き止めた。

「何が『いかん』のだ」

「だって商品を、こんなにビリビリに破ってしまってるでしょう」

「だから金を取って来ると言ってるんじゃないか」

「誰か家族の人に持って来て貰えんのかね」

 一瞬、眠ったまま陰部を舐められている妻の姿が頭を過った。

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「寝ているから無理だ」

「電話で起こしたらいい」

「起きたらまずいだろ!」

 老店員は訝しげに首を傾げた。

「っていうかあんた、私を疑ってるのか。こうして毎晩毎晩ポテトサラダを買いに来ている常連の私がこのまま逃げるとでも思ってるのか?」

 すると老店員は、駐車場のベンチに座っているホームレスを指差しながら「あの人も常連だ」と言った。そして溜め息混じりに「でも万引きばかりする」と少し笑った。
 その、人を見下した笑いにカッと来た私は、「わかったよ!」と怒鳴りながら右足の靴を脱ぎ、それをレジカウンターの上にドン! と置いた。

「靴を片方置いて行く。片足だったら遠くに逃げられないだろ。だから十分待て。十分待ってもし私が戻って来なかったら警察に通報しろ。どうだ?」

 老店員は、呆れた表情でまた溜め息をついた。
 そして、安物の腕時計を横目でチラッと見ながら、「一秒でも遅れたらアウトだから」と呟いたのだった。

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 真夜中の静まり返った路地を、私はケンケンしながら進んだ。
 ゴミ屋敷の角を、両手を広げてバランスを取りながら曲がる私は、今更ながら、どうして左足ではなく右足の靴を置いて来てしまったのかと悔やんだ。

 そのまま一本道をケンケンして行くと、外出しの廊下に薄暗い蛍光灯がズラリと並んだマンションが見えて来た。
 私は自分の部屋のバルコニーを見上げながら、今頃妻は……と胸を締め付けられ、恐怖と性欲というアブノーマルな渦に飲み込まれた。

 そんな複雑な気持ちのままエレベーターに乗った。
 グオォォォォォォンっと響くワイヤーの音が脳を掻き回し、案山子のように片足で立つ私は軽い目眩を感じた。
 生温かい風に出迎えられながらエレベーターを降りた。
 部屋の前で片足を止めると、冷たいドアノブを静かに握った。

 さっき私が出て行ってから、まだ三十分しか経っていなかった。
 恐らく、今が一番盛り上がっている時だろうと思った。
 ドアノブを回す手が震えていた。
 片桐が、ぐったりとする妻の両脚を両腕に抱えながら、激しく腰を振っているシーンが浮かんだ。

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 そんな妄想に絶望を感じながら恐る恐るドアを開いた。
 しかし、廊下に漂う怪しげな空気を感じた瞬間、絶望は興奮へと変わり、妻が陵辱されるシーンを覗き見したいという下衆な欲望に激しく駆られた。
 息を殺しながら、夜風と共に玄関へと忍び込んだ。
 後ろ手でドアを閉めた瞬間、笑い声が聞こえた気がして心臓が飛び上がった。
(嘘だろ)と、愕然としながら片足で立ち竦んでいた。
 それは確かに笑い声だった。
 しかもその笑い声には、片桐だけでなく、妻の笑い声も混じっていたのだった。

(つづく)

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