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路地裏の妻2

2013/05/30 Thu 18:08

路地裏の妻2



 そこは、人気のない淋しい駐車場でした。
 十台ほど駐車できるスペースには寂れた車が五台並び、従業員専用入口と書かれた扉の向こうからは、パチンコの電子音が微かに聞こえてきました。
 男はその扉を通り過ぎ、一番奥に止めてある白いライトバンの裏へと入って行きました。

 四万円、新しいリュックサック。
 四万円、新しいリュックサック。
 私はそう自分を勇気づけながら男の後を付いて行きました。そして白いライトバンの後部で足を止め、息を止めながら恐る恐るその奥を覗くと、突き当たりの白い塀と雑木林の間の細い通路で、男が不敵に笑っていたのでした。

「ここなら誰も来ませんよ。さ、パンツを脱いでオマンコを見せて下さい」

 男はそう笑いながらしゃがみました。

 オマンコ。その言葉は活字では何度か見た事がありましたが、しかし、面と向かって人から聞かされた事は初めてでした。
 その下品な言葉により私の嫌悪感は一気に高まりました。
 今まで、そんな所を誰にも見せた事はありません。もちろん、出産時には他人にそこを見られましたが、しかし医師も助産師も全て女性であり、卑猥な視線でそこを見られたわけではありません。
 又、夫にも見られた事はありません。セックス時は最初から電気を消していますから、そこが見られる事はありません。もし夫にそこを見られるとしたら、セックス後、枕元に置いてある薄暗いスタンドライトを付けて夫の残液を処理している時です。しかし、当然私は夫に背中を向けて処理していますから、例え見えたとしてもそれは陰毛程度のものであり、割れ目や襞など見られた事は一度もありません。
 そもそも夫は、そんな部分に全く興味がありません。今までクンニリングスなど一度もされた事はありませんし、されそうになった事すらありません。挿入する際、私の濡れた襞が指に微かに触れただけで、慌ててティッシュで拭き取るほどの潔癖性な夫ですから、そんな所をマジマジと見たり舐めたりするなど絶対に有り得ないのです。

 私は、震える指でスカートのサイド摘んだまま、目の前でしゃがんでいる男を見下ろしていました。
 夫にも、誰にも見られた事のない性器を、この見知らぬ男の前で晒さなければならないと思うと、激しい羞恥心が胸底から涌き上がり、脳の奥でクラクラと目眩がしました。

「ほら、早くしないと人が来ちゃいますよ」

 男は、震える私の指を見つめながらそう急かしました。だけど私はなかなか決心がつきませんでした。それは、今の私のそこは、きっと酷く汚れていると思ったからです。
 私は、昨夜からお風呂に入っていません。職場では煮物を担当しておりました。巨大鍋から発せられる熱により、下着がぐっしょりするほど汗をかいております。
 そして私は、仕事中に二度もトイレに行っております。煮物を扱う厨房は非常に暑いため、熱中症対策の為にと会社からポカリスエットを二本支給されていたのですが、その効果により、私は仕事中に二度も大量のおしっこを排尿していたのです。
 そんな職場の便器にウォシュレットは完備されていませんでした。まして従業員用のトイレットペーパーは硬く、まるでコピー用紙のように粗悪だったため、そこに飛び散った残尿を綺麗に拭き取ってはいないのです。
 汗と残尿とオリモノ。それらが高温高湿の厨房で、三時間あまり太ももの奥でジクジクと蒸されていました。そんな状態でしたから、恐らく今の私の性器は、放置された排水口のようにドロドロに汚れ、恥ずかしい匂いに満ち溢れているに違いないのです。

 そんな恥部を見られるくらいなら、ラブホでシャワーを浴びた後に見られたほうがましだと思いました。
 しかし、やはりラブホには抵抗がありました。見知らぬ男と密室に籠もり、そこで下着を脱いで性器を見せるなど、レ○プされてしまうに決まっているのです。そしてそれを抵抗すれば、子供の頃に観た、あの特捜最前線の惨殺死体のようにされてしまうのがおちなのです。

 考えた挙げ句、それでもどうしてもこの四万円が欲しかった私は、素直に男に白状する事にしました。

「……仕事帰りですので……少し汚れてると思うんですけど……いいんですか……」

 すると男は、その針金のような細い目をギロリと見開き、「汚れてるからいいんじゃないですか」と嬉しそうに笑いました。

「洗ったオマンコなんて、そこのヘルスにでも行けばいくらでも見れますよ。洗ったオマンコなんて誰のものでも同じですからちっとも興奮しません。あなたの場合、仕事帰りだからいいんです。汚れているからこそ価値があるんです」

 そう真顔で言われると、激しい羞恥心が少しだけ和らいだ気がしました。
 私は、トートバッグの中に押し込まれた四万円を思い浮かべながら、(そうだ、これは仕事なんだ)と呟きました。
 ここでこの男に性器を見せるのは、あの地獄のように暑い厨房でグツグツと煮え滾る鍋をかき混ぜるよりも至極簡単な事であり、ましてその報酬は、地獄のパートの二十日分に値するのです。
 私はそう自分に言い聞かせながら、摘んでいたスカートの端をゆっくりと上げました。
 膝が現れました。太ももが顔を出し、白い下着が見えて来ると、男はカサカサの唇を舌でなぞりながら、「人妻の下着かぁ……」と感慨深く呟きました。

 人妻。
 男のその言葉により、決心したはずの心が再び激しく揺らぎ始めました。
 そうです、私は人妻だったのです。アソコが汚れているとか、ラブホが嫌だとか、これは仕事だとか思う前に、私のこの体は夫のものだったのです。
 今まで胸を締め付けていた羞恥心が、みるみる激しい背徳感へと変わってきました。
 夫の優しい顔がフッと浮かぶと、それはすぐに悲しそうな顔へと変わりました。(あなた……)と、頭の中で呼ぶと、その顔は、怒りに満ちた表情へと変わっていきました。
 胸が痛みました。私は夫を愛しています。夫は、私にとってかけがえのない人です。そんな夫を、今私は四万円ごときのお金で裏切ろうとしているのです。
 確かに、子供には新しいリュックサックを買ってやりたいです。お弁当を作る度に、アンパンマンのプリントが剝げてしまった弁当箱の蓋を見ると心が痛みます。
 だけど、果たして、こんなお金で新しいリュックサックを買ってもいいのでしょうか。例え、弁当箱がアンパンマンから妖怪ウォッチに変わったとしても、今度はその妖怪ウォッチを目にする度に、違う心の痛みに苛まれるのではないでしょうか。
 そう思った瞬間、私は強烈な悲しみに襲われました。そして、指先をブルブルと震わせながら、太ももの付け根まで上げていたスカートをゆっくりと下ろしたのでした。

「えっ?」

 男は、素っ頓狂な声でそう驚きながら私の顔を見上げました。
 私はそんな男の目からソッと目を反らしながら、「やっぱり……無理です……」と声を震わせました。

 すると男は、意外にも素っ気なく「あっ、そ」と呟きながら、そそくさと立ち上がりました。そして溜め息混じりに膝の埃をパタパタと叩きながら、「そんなに嫌ならもういいですよ。別の人に頼みますから、お金返して下さい……」と、私に右手を突き出してきたのでした。

 お金、返して下さい……

 今までに私は、その言葉を何度聞いて来たことでしょう。
 夫がリストラされた後、全く貯金をしていなかったために家計は極端に苦しくなりました。ローンが半分以上残っていた自宅は銀行に差し押さえられ、家族三人、築四十年の借家へと追いやられました。
 夫の仕事はなかなか見つかりませんでした。私はやっと見つけた近所のお弁当屋さんにパートに出る事になったのですが、しかしそこも不景気らしく、時給六百円で三時間使ってもらえるのがやっとでした。
 それでは家族三人が生活する事は到底できませんでした。家賃、光熱費は滞納し、子供の給食費すら滞るようになりました。
 私はそこら中で頭を下げ、借金を繰り返しました。来月には必ず返しますから、と、傷付いたレコードのように同じ言葉を繰り返しながら、そこら中からお金を借りまくったのでした。
 そのうち、借りる宛もなくなりました。路頭に迷っていると、まるでそこを狙い撃ちするかのように借金の催促が一斉に始まりました。
 お金返して下さい。
 お金返して下さい。
 お金返して下さい。
 銀行、サラ金、友達、同僚、親戚から、毎日毎日その言葉を私は聞かされているのでした。

「早く、お金、返して下さいよ」

 膝の埃を払い終えた男は、そう言いながら私に迫ってきました。
 私は慌ててトートバッグの口を開け、無造作に押し込められている四枚の一万円札に手を伸ばしました。
 その時ふと、自宅の鍵にぶら下がっているアンパンマンのキーホルダーが目に飛び込んできました。
 それは、まだ夫がリストラされる前、家族で横浜のアンパンマンミュージアムに行った時に買った物でした。
 あの時、大はしゃぎしていた子供の笑顔が浮かびました。それと同時に、プリントが剝げてしまったボロボロの弁当箱も浮かび、私の心は、たちまち鋭い鷹の爪に抉られてしまったのでした。

「やっぱり……」と小声で呟きながら、私はトートバックの口をソッと閉じました。

「ん? やっぱり見せてくれるんですか?」

 そう顔を覗き込む男に、私は小さく頷きました。
 男は「ふんっ」と鼻で笑いました。そして「じゃあ早くして下さいよ」とニヤニヤしながら、また同じ位置にゆっくりとしゃがんだのでした。

 もう後戻りはできません。ここでまた心変わりすれば、今度こそこの四万円は私のトートバッグの中から消えてなくなるでしょう。
 私は下唇をギュッと噛みながら、スルスルとスカートをたくし上げました。
 随分と履き古した白い下着が、すぐ横の雑木林から注ぐ木漏れ日でキラキラと輝いています。
 大きく息を吸い込みながら下着の端に指を引っかけました。
 それでもそれを一気に下ろす事がなかなかできずに躊躇っていると、男は下着の股間部分を覗き込みながら、「マンスジに黄色いシミが浮き出てますね」と笑いました。

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 そんな男の薄ら寒い笑い声に強烈な羞恥心に襲われた私は、喉の奥から涌き上がって来る感情を堪え、おもわず「ん」と唸りを漏らしてしまいました。
 そんな私の声なき悲鳴に、男は「恥ずかしいんですか?」と目を細めると、股間に浮き出た一本線にゆっくりと鼻を近づけ、まるで犬のようにクンクンと嗅ぎ始めたのでした。

 そんな薄気味悪い男を見下ろしながら、「どいて下さい……下着が脱げません……」と言いました。この状態で下着を脱いでしまえば、男の鷲のような鼻頭がクリトリスに当たってしまうからです。
 すると男は「ああ、失礼失礼」と戯けるように笑い、そこからサッと顔を離しました。男の頭部が引くと同時に、私の目に、しゃがんでいる男の股間が飛び込んできました。
 男は、匂いを嗅いだだけで既に興奮しているのでしょうか、グレーのスラックスには、硬くなった男根の形がくっきりと浮かび上がっていました。
 それは、夫のペニスとは比べ物にならない大きさでした。夫のペニスは、わずか十センチほどの細くて弱々しいモノでしたが、しかしそこに浮かび上がる男のペニスは、右の太ももの付け根まで力強く伸びる獰猛なものだったのです。

 凄まじい目眩に襲われました。それはまるで、ネットで子供の死体画像を見てしまった時と同じくらいの衝動であり、慌ててペニスから目を反らした私は、その獰猛な物体を一刻も早く記憶から消し去ろうと焦ったのでした。
 これ以上ここにいたらダメになると思いました。すぐにここから立ち去らなければ大変な事になると思いました。
 だから私は一気に下着を下ろしました。もはや恥ずかしさよりも、その獰猛な物体に対する恐怖心のほうが強かったため、私は、早く終わらせて欲しいと言う願いから観念したのでした。

 黒く渦を巻く陰毛が汗で湿っていました。下着の圧迫により、それは下腹部にペタっと張り付いていました。
 その醜い陰毛に激しい羞恥を感じながら、私は下着をスルスルと膝まで下ろしました。

「そのまましゃがんで下さい」

 どこか遠くの方から、そんな男の声が聞こえてきました。
 あの獰猛な物体の出現と、幾度も襲い掛かって来る激しい羞恥心により、既に私の頭の中は真っ白になっていました。まるで深い水中に潜っているかのように顔面が圧迫され、異様に息苦しく、おもいきり「はぁはぁ」と息がしたくて堪らなくなっていました。

 ふと気が付くと、いつの間にか私はそこにしゃがんでいました。まるで和式便器で用を足しているかのようにしゃがんでいました。汚れた割れ目を剥き出し、醜い襞を曝け出しながら、しゃがみ込んでいたのです。

「もうちょっと足を広げて……」

 男の声が再び遠くで響きました。
 激しい羞恥と屈辱感により、私は催眠術にかけられたように朦朧としていました。
 雑木林の木の上に、一匹のカラスが止まっていました。カラスは私たちをチラッと一瞥すると、興味なさそうにどこかに飛んで行ってしまいました。
 そんなカラスを目で追いながら、私は男の指示通りゆっくりと股を開きました。すると地面から「おおお……」と唸る男の声が聞こえてきました。
 その声に、ふと我に返った私がソッと視線を落すと、右頬をアスファルトに押し付けた男が、私の股間の裏側を覗き込んでいたのでした。

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(つづく)

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