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夜這いのススメ4

2013/05/30 Thu 18:09

よばいのすすめ4



 このように、松夫爺さんから『最大勃起時』のサイズと、『射精時間』を素早く測られた僕は、射精後の嫌悪感と、若奥さんに精液をぶっかけてしまったという罪悪感に包まれては、ぐったりと項垂れていた。
 すると今度は、筆にたっぷりと墨を浸し始めた松夫爺さんは、「それじゃあ最後に性病の検査をしておきます」と、再び僕にちんぽを出すように命じた。
「性病検査って……なにするんですか……」
 不安になりながらも僕が再びパンツをズラすと、僕のちんぽの先からはネトーっと残液が糸を引いていた。
「簡単ですよ……これをちょっと塗れば……」
 松夫爺さんはそう言いながら、墨をたっぷりと吸い込んだ筆を僕の亀頭にびちょっとあてた。
「つ、冷た!」
 僕が一瞬腰を引こうとすると、松夫爺さんは亀頭に筆をねちゃねちゃとさせながら「冷たいだけかね?……痒かったり痛かったりはないかね?」と僕の顔をソッと覗き込んだ。
「……いえ……冷たいだけです……」
 すると松夫爺さんは、「そうか、ならば陰性だ」と満面の笑みを浮かべると、僕のちんぽから筆をそっと放した。
「もし痛かったら性病なんですか?」
 僕は真っ黒の亀頭を不思議そうに見ながら松夫爺さんに聞いた。
「いや、そうとは限らんが、まぁ、墨を塗られて痛みや痒みがないと言う事は外傷がないというだから、性病の可能性は低いという事だね……」
 松夫爺さんは、筆の先をジッと見つめながらそう言った。僕は真っ黒になった亀頭にチリ紙を押し当てると、なんていい加減な検査なんだと思いながらズボンを履いた。
 そして、ベルトの金具をカチャカチャ鳴らしながら、「それじゃあこれで講習は終わりですか?」と松夫爺さんに聞くと、黙ったままその筆の先をジッと睨んでいた松夫爺さんは、恐る恐る筆の先に顔を近づけ、その筆先をクンクンと嗅いだ。
 その瞬間、松夫爺さんはクワッ!と目を開くと、その筆を屑篭の中に投げ捨てた。そして怒り狂った鬼のような形相で鉛筆を握ると、書類の『局部の清潔度』の欄に『検査用の筆が臭くなるほど汚い』と書き足し、ジロっと僕を見上げながら「講習はまだです!」と大声で叫んだのだった。

 次に松夫爺さんが取り出したのは一枚の和紙だった。その和紙の端をピリリリリっと丁寧に破ると、それを手の平でクリクリと丸め、一本のこよりを作った。
「夜這いに行く前には、必ずこれを男根の根元に結ぶように」
 松夫爺さんはそう言うと、但し、と付け加えた。
「その場合、十分に男根を清潔に浄めておくように」と、書類の『局部の清潔度』の欄を鉛筆の先でトントンと突きながら「特にキミの場合」と念を押した。

「これはあくまでも儀式ですから、ちゃんとキミの男根にこよりが付いているかを検分さんが確認さえできれば、あとは取ってしまってもかまいませんから。まぁ、だからといってね、検分さんにそれをちゃんと見て貰おうと、わざわざエンマ穴に男根を近づけたりする必要はありませんけどね……」

 松夫爺さんはそう言いながらも、再び目玉をクワッ!と開き、「特にキミの場合は、エンマ穴にソレを近づけないほうがよい!」と叫び、再び書類の『局部の清潔度』を鉛筆の裏でコツコツと突き始めたのだった。

 このようにして、三時間あまりの松夫爺さんの講習を受けた僕は、松夫爺さんに嫌われながらもやっと講習修了書を貰う事が出来た。
 翌日、さっそくそれを持って青年団の事務所に行くと、友人の桔梗が言った通り、松夫爺さんの署名を見た青年団の役員は即日で夜這い許可書を発行してくれたのだった。
 免許証ほどの大きさの夜這い許可書と『夜這いの心得』を受け取った僕は、夜這い委員会の会長から「夜這い時に許可書を所持してなければ村条例で罰せられるからな」と、何度も念を押され、青年団を後にしたのだった。

 しかし、この許可書が手に入っただけでは、僕の念願は叶わない。
 そう、念願のサッちゃんの夜這いをするには、丸め神社の境内で開催される夜這い抽選会で『夜這い札』を手に入れなければならないのだ。
 この『夜這い札』というのは、夜這いのチケットのようなものだった。
 つまり、いくら夜這い許可書を持っていても、この『夜這い札』を手に入れなければ、その相手に夜這いをかける事は禁止されていたのだ。
 これは、先程も書いたように、今年の三月に改正された『新・夜這い条例』により、『夜這い者は一晩に五人までとする』と決められたものであり、その五人は丸め神社のクジ引きで厳粛に決められる事になっていたのだった。

 その日、丸め神社は異様な熱気に包まれていた。
 二日後に解禁されるサッちゃんの『夜這い札』を手に入れようと、腰の曲がった老人からニキビ面した少年といった村の男衆が既に丸め神社の境内に四十人ほど集まっていた。
 小さな鳥居を潜る僕はそんな男達を遠巻きに見つめながら、これだけの男達を熱くさせるなんてさすがはサッちゃんだと、改めて彼女の美しさを感じ、その一方でなんとしても『夜這い札』は手に入れたいと強く思ったのだった。
 夜這い札のクジ引きは、四角い木の箱の中に入った札を男衆が順番に引くという単純なものだった。
 箱の中には1〜15までの数字が書かれた札が混じっており、それを引いた者だけが、解禁三日の夜這いに参加できるのだ。
 因みに、解禁三日を過ぎると、それから一ヶ月間はその娘に夜這いをする事は禁じられていた。
 その一ヶ月の期間は『ボンボ休め』と呼ばれており、解禁の三日間使いまくったボンボ、つまり女性器を、一ヶ月間安静に休ませるという意味が込められているのだった。
 この『ボンボ休め』は、昭和初期までは『子流し』と呼ばれていた風習で、それは即ち夜這時にできてしまった子供を処分するという意味だった。しかし、戦後間もなくしてGHQからその呼び名はあまりにも非人道過ぎると非難され、この『子流し』は『ボンボ休め』と呼ばれるようになったのだった。
 そんな一ヶ月間の『ボンボ休め』が終わると、その後は通常通りの夜這いとなるわけだが、しかし、ボンボ休め後に再び夜這いできる確立は、その娘が美人であればある程かなり低いとされていた。
 というのは、この解禁三日の間に、娘と夜這い男とがデキてしまい、なんとその男とボンボ休めの期間中に結婚してしまうというケースが多いからだ。
 これは、男尊女卑という村の制度において、唯一の女衆の抵抗といえた。
 つまり、我々男衆が『夜這解禁』と呼んでは浮かれているこの三日間を、村の女衆は、これを裏でこっそり『肌合わせ』と呼んでいたのだ。要するに男衆にとっての『夜這解禁』というのは、女衆にしてみれば「夜這されている三日の間に気に入った婿をとっとと見つけてしまおう」という『セックスお見合い』のようなものであったのだった。
 結婚されてしまってはもう手も足も出なかった。
 この村の『夜這条例』では、第二十六条の三に『既婚者に対する夜這いは不浄とし厳重に処罰す』とうたわれており、これを違反すれば『一族夜這い禁止令』を出されたり、又は『村八分』という恐ろしい懲罰を与えられてしまうのだった。
 だからサッちゃんを夜這いできるのはこの解禁三日しかなかった。サッちゃんは村でも一、二位を争う程の器量良しだから、この解禁の間にあの手この手でサッちゃんをモノにしようとする夜這い者たちは、きっとかなりいるはずなのだ。

 僕は神に祈りながら木箱の中に手を入れ、その中の二つ折りにされた紙の札を弄った。
(お願いします! 一番! 一番が引けますように!)
 そう念じながら一枚の札を引き、それを誰にも見られぬようポケットの中に押し込むと、そのまま神社の隅の杉の木の下まで走った。
 そして杉の大木を見上げながら、そっとポケットの中に手を入れお札を取り出した。
 と、その時、いきなり大木の裏から男が飛び出して来た。
「よっ、どうだった」
 ニヤニヤと笑いながら出て来た男は、僕と同級生の健一郎だった。
「まだ見てねぇよ……」
 僕は健一郎に見られないように札をそのままポケットの中に押し込んだ。

 僕はこの男が大嫌いだった。
 こいつは村の大地主の息子で、いわゆるドラ息子という類いの不良だった。
 中学時代、僕はこいつに散々イジメられた。そう、こいつの家が大地主で、そして僕の家が『ひこげ橋』の貧乏長屋だという理由で、僕はこいつには散々イジメられて来たのだ。
「サチエ、やっぱり人気あるよなぁ……」
 健一郎はそう言いながら、境内の隅で悔し涙を流しいる青年や、当たりの番号札を手にしながら飛び上がって喜んでいるおっさんを見つめながら呟いた。
「隣村の山岡から聞いたんだけどよ、サチエのアソコは堪らねえほど具合がいいらしいぜ」
 健一郎は僕の顔を覗き込みながらニヤニヤと不敵に笑った。
 こいつは僕がサッちゃんに気があるという事を知っているのだ。
「それによ、山岡が言ってたけど、サチエはとんでもねぇスキモノらしくてよ、あいつ、ボンボされながら『もっと! もっと!』って叫んでは小便洩らすらしいぜ……」
 健一郎はひひひひひひっと卑劣な声を出して笑い始めた。
「おめぇ、何が言いたいんだよ……」
 僕は健一郎ににじり寄りながら喧嘩腰にそう言った。健一郎とは学生時代に何度か殴り合いのケンカをした事があるが、その度に僕は健一郎にボコボコに殴られっぱなしだった。
「なんだよ、妙に突っかかってくるじゃねぇか……まぁ、そうムキになんなって。ただ俺ぁ、それを哲郎に教えてやろうと思っただけだよ……」
「大きなお世話だ。サッちゃんがスキモノだろうが小便洩らそうがおまえには関係ねぇだろ」
 僕がそう言った瞬間、健一郎は「それが関係あんだよなぁ……」っとニヤニヤしながら右手に持っていた番号札をヒラヒラと僕の目の前に振った。
 健一郎の持つその番号札には、はっきりと『3番』と書かれ、それが本物であるという証拠の『丸め神社』の印鑑までしっかりと押されていた。
 一瞬、僕の目の前がサッと暗くなる。
「俺よぉ、そろそろ身を固めてぇと思ってんだ。だからよ、まぁこの際、淫乱だろうが変態だろうが、可愛けりゃいいかなぁなんて思ったりしてよ。へへへへ。だから今回、本気でサチエを口説こうと思ってんだ。それをね、まずは哲郎に御報告と思ってさ……ま、悪く思うなよ」
 健一郎は最高に憎たらしい笑顔を浮かべながら、愕然とする僕の肩をポンポンっと二回叩くと、そのままニヤニヤと笑いながら神社の階段を下りて行ったのだった。
 僕はそんな健一郎の後ろ姿を見つめながら握りしめた拳をブルブルと震わせていた。
 確かに、あいつには、顔もスタイルも腕っ節も敵わない。それに家柄だってウチのような水呑百姓とは比べものにならないくらいの大地主だし、それになんといってもあいつは金を持っている。
 所詮は金だ。サッちゃんの家は親父さん一人の貧乏暮らしだからきっと金には弱いだろう。金と財産をしこたま持った家柄の良いお坊ちゃんの健一郎に本気でプロポーズされたら、サッちゃんも親父さんもイチコロだろう……。
 僕は震える拳をポケットの中に押し込み、そっと番号札を取り出した。そしてラストチャンスを与えてくれ! と心の中で叫びながら二つ折りにされた紙札をそっと開いたのだった。

 しかし、そこはただただ真っ白な空白で、無惨にも何も書かれていなかった。
 頭上でサササササッと杉の木が風で揺れ、境内で酒盛りしている男衆の下品な笑い声が風に飛ばされ遠離って行った。
 ドドン! ドン! っという太鼓の音が境内に響き、見事、番号を手に入れた男達が、神主さんから『夜這い札』を受理されていた。
 固まっていた僕の肩がスーッと空気が抜けたように萎んだ。
 情けない溜息を吐き出すと、全てが終わったそんな気がした。

 すると、項垂れたまま神社の階段を下りようとしたその時、「キミ!」という声が後の杉の大木から響いて来た。
 振り向くと、そこには腰の曲がった松夫爺さんがポツンと立っていた。
 松夫爺さんは僕の顔を見るなりニヤニヤと微笑み、いきなり「神聖な神社にゴミを捨てちゃダメじゃないか……」と呟き、玉砂利をジャリジャリとさせながら僕に近寄って来た。
「ゴミ?……」
 ゴミなど捨てた覚えのない僕は、いよいよこの現役夜這い師の爺さんもボケてしまったのだろうかと、歩み寄って来る松夫爺さんを首を傾げながら見つめていた。
「これからはキミ達の時代じゃ。キミ達がこの村を背負っていかなければならないんじゃ。そんな若者が、村の鎮守にゴミを捨ててはいかんな……」
 松夫爺さんはそう言いながら「ほれ、ちゃんと持って帰れ」と、呆然と立ちすくむ僕の手の中に紙切れを押し込んだ。そしてニカッと不気味な笑顔を見せると、「御浄めを忘れるんじゃないぞ。特にキミの場合はくっさいから、ちゃんと御浄めをするんだぞ……」と、入歯をカポカポさせながらそう呟くと、そのまま玉砂利を鳴らしながら境内に向かって消えて行ったのだった。
(……なんだありゃ?)
 僕は呆れた口をポカンと開けたまま松夫爺さんの背中を見ていた。そして、その手の平に押し込められた紙を何気に見た。
『4番』
 その紙にははっきりとそう書かれていた。そしてその番号の横には『丸め様』の印鑑がくっきりと押してあったのだ。
「う、嘘!」
 そう叫んだ瞬間、境内の太鼓の前にいた神主さんが、「ほらそこのキミ! 当たってんなら早くお札を取りに来い! もう閉め切るぞバカ!」とヤケクソで叫んだ。
 慌てて辺りを見回すがもうそこには松夫爺さんの姿はない。
「てめぇ、こらぁ、そこのガキ! いつまでも浮かれてんじゃねぇって! 早くしろって! 俺ぁ早く帰りてぇんだってこのバカ息子!」
 再び神主さんが僕に叫んだ。
 僕は『4番』と書かれた紙札を握りしめたまま、震える足で一歩一歩境内に進んだ。
 再び突風が吹き荒れ、頭上で杉の木がササササササッとざわめいた。ふわふわの玉砂利を歩く僕はまるで夢の中を歩いているようだった。

(つづく)

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