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夜這いのススメ9

2013/05/30 Thu 18:09

よばいのすすめ9



 サチエがお浄めから帰って来ると、小屋の中には既に男が潜んでいた。
 蝋燭の明かりに照らされるその男の横顔に、サチエは「あっ」と思った。あのしつこい男だと直ぐに気付いた。
 その男は、工場からの帰宅途中によく声をかけて来た。赤いスポーツカーでやって来ては「東京さ遊びに行くべ」とサチエを強引に車に乗せようとした。又、いきなり夜中にサチエの部屋の窓に小石を打つけ、窓から覗いたサチエに「山岡さんが呼んでるがら」などと嘘を付いては呼び出そうとしたりした。
 男は薄暗い部屋の中でサチエの顔をジッと見つめながらニヤニヤしていた。そんな男に今から犯されるのかと思うと、サチエは怖くて堪らなかった。

 そそくさと布団に潜り込んだサチエは、素早く『迎え入れ』を始めた。
 本来、夜這い師というのは、女の『迎え入れ』が終わるのを小屋の外で静かに待ち、それを見計らってそっと寝屋に忍び込むものである。それがこの村に古くから伝わる夜這い師としてのマナーだった。
 しかし最近の夜這いではマナーよりも時間短縮を優先しているせいか、そんなマナーはいつしか廃れ、今ではベルトコンベアー式に夜這い師達はさっさと寝屋に侵入するのが常となっていた。
 だから女達は、この『迎え入れ』という神聖な儀式を、夜這い師達に見られながら行なわなければならず、これは女にとっては屈辱この上ない事であったのだった。

 布団を頭からズッポリと被ったサチエは、布団に充満している前者の夜這い師達の饐えた残り香に包まれながら股間を指で弄っていた。
 しかし、早く濡らそうと思えば思う程気が焦り、サチエのボンボはなかなか潤ってはくれなかった。
 そうしていると、サチエの上に覆い被さっていた掛け布団がいきなりガバっと剥がされた。
「きやっ」
 敷き布団に横たわる全裸のサチエは、慌てて身体を死んだ蜘蛛のように縮まらせた。
「早ぐしれ」
 健一郎はニヤニヤと笑いながらサチエを見つめた。
 恐る恐る男に視線を向けるサチエは、ふと、そんな男の股間に天狗谷の堅徳寺に祀られている天狗のお面が置いてあるのにギョッとした。が、しかしよく見るとそれは天狗のお面ではなく、天狗のお面の鼻のように大きくて長いペニスだと気付き、サチエは更にギョッとした。

「見ててやっがら、早ぐ濡らせ」

 健一郎はそう言いながら布団のサチエを見下ろし、そして天狗の鼻をわざとサチエに見せつけるかのようにシコシコと上下にシゴいたりした。
 そんな状況をエンマ穴から覗いていた検分役の笹田は、これは倫理的にいかがなものか……と思いながらも、傍に置いてあった『夜這いの心得』を開いた。
 しかし、どのページにもそれについて禁止する文面は見当たらなかった。だから笹田は、夜這い師がサチエの性器に触れないかだけを厳重に監視する事にし、その自慰行為を黙認したのだった。
 健一郎はサチエの足下に這いつくばると、サチエの指が蠢いている股間を覗き込んだ。
 当然、今までにオナニーをした事がなかったサチエは、それを男に見られると言う経験もない。それは、顔から火が出そうなくらいに恥ずかしかったが、しかし、股間を覗き込んでいた健一郎が「もっと激しくクリトリスを転がしてみろ」や、「穴ん中に指入れて見ろ」などと囁きかける言葉に少なからず刺激を受け、そのうちだんだんとその気になって来てしまった。

「おお……じわじわと濡れて来たべ……」

 健一郎はサチエの指先に透明の汁が糸を引いているのを確認すると、嬉しそうにそう唸った。
 サチエは充分にそこが潤うと、次に枕元に置いてあった『丸め様』を一粒そっと摘まみ上げた。
 当然、この『丸め様』を膣に挿入する儀式も、このままこの男に見られる事になる。サチエは『丸め様』を手の平の中で転がしながら、四つん這いになった時の自分の姿を想像しては再び顔を赤らめた。
 そんな恥じらうサチエの姿に、エンマ穴から覗いていた笹田は再び欲情してきた。この掛け布団が剥がされた状態で『丸め様』を入れるシーンを見れるという事は、笹田からもサチエの局部が丸見えとなるのである。
 そんな二人の男に見つめられながら、サチエは恥ずかしそうにゆっくりとうつ伏せになった。
 キュッと閉じた幼気な尻がふるるっと揺れた。その奥には男を狂わす妖穴が潜んでおり、それが今、二人の男の前で御開張されようとしていた。
 蝋燭の灯りに照らされながら、サチエは恥ずかしそうに両膝を立てた。細い腰が音もなく反り、バレーボールのように丸い尻肉がゆっくりと天井に突き出されると、ヨガの猫のポーズのようになった。
 ふるふると震える太ももがじわりじわりと開かれた。
 それは実に幻想的な美しいシーンだったが、しかし、妖精の尻肉の谷間には妖精には不釣り合いなグロテスクな現実がパックリと口を開いていた。
 サチエのボンボ。
 それを間近で見る健一郎はその妖艶な形と色にくらくらと目眩を感じた。そしてエンマ穴から覗く笹田はそのピンク色に輝く卑猥な牝穴を見ては熱い息をハァと吐き出した。
 人差し指の先に『丸め様』をちょこんと乗せたサチエは、『丸め様』が指から落ちないように、恐る恐るそれを剥き出しになったボンボへと近づけていった。
 その時、ふいに健一郎の腕がサチエの細い腕に当たった。『丸め様』はサチエの指からポロリと落ち、薄暗い畳の上にコロコロと転がった。

「あ、悪りぃ悪りぃ……」

 健一郎はそう言いながら、自分があぐらをかいている足下に転がっている『丸め様』をそっと摘もうとした。
 が、しかし、健一郎はそれを摘まなかった。まるでマジシャンのような早業で『丸め様』を自分の足の下へサッと転がした。そして、『丸め様』を探すフリをしながら、足の親指の間に挟んでいた正露丸のような丸い玉をソッと摘み出すと、何食わぬ顔をしてその正露丸のような緑色の小さな玉をサチエの人差し指の腹の上にソッと置いたのだ。
 サチエは、『丸め様』がすり替えられた事を全く気付いていなかった。その怪しげな玉をそのままボンボの中に挿入したサチエは何の疑いもなくボンボの中でグニグニと指を動かしていた。
 健一郎はすかさずエンマ穴を横目で見た。
 エンマ穴から覗いていた検分役もこの健一郎の早業には気付いていなかった。そんな検分様は、四つん這いでボンボに指をグニグニと入れているサチエの卑猥な姿に釘付けになっていた。
 その緑色の小さな玉は、まさに『泣かせ薬』だった。
 健一郎は、これでサチエは俺のものだ、これでサチエは俺とのボンボが忘れられなくなると思いながら、『泣かせ薬』の効果で狂ったように喘ぎまくるサチエを想像しては異様な興奮に包まれていた。
 正露丸ほどの小さな『泣かせ薬』でも、その効果は絶大だった。
 但し、この時の『泣かせ薬』は練り状の粒にしている為、通常の液体の『泣かせ薬』とは違い、それが溶けるまで五分くらい待たなければならなかった。
 しかし健一郎は、その五分間が待ち切れなかった。今すぐにでもペニスをぶち込みたいと脳をクラクラさせながら、四つん這いのサチエの尻に頬擦りした。

「俺ぁ新田の健一郎だ……俺ぁの名前をよーぐ覚えとくんだぞ……一生忘れられねぇボンボをしでやっがら、健一郎っつう名前、忘れるでねぇぞ……」

 健一郎はそう呟きながらサチエを仰向けに寝かせた。サチエはそんな健一郎の顔がまるで地獄の鬼のように見え、あまりの恐ろしさに両手で顔を覆った。
 怯えるサチエを見下ろしながら、「今だけだ……今におまえは獣に変身するべ」と笑った。そしてサチエの細い両足を両腕に抱え、ペロリと捲れた花弁に亀頭の先をクチュクチュと擦り付けながら、残り三分を待ちわびた。
 と、その時だった。
 エンマ穴から覗いていた検分役の笹田は、「あっ!」と、小さな叫び声をあげて立ち上がった。

(あのケツのほくろ! 間違いねぇ! 水車小屋で『泣かせ薬』を使ってたあいつだ!)

 そう確信した笹田は震えた。
 確かに、このまま『泣かせ薬』で乱れ狂うサチエの姿は見たかった。が、しかし、それは明らかに不正であり、神を冒涜する行いなのだ。
 変な所に生真面目な笹田は、気が付くと笛を吹いていた。
 静まり返った夜の闇の中にけたたましい笛の音が響いた。
 その笛の音を聞き、今まさに挿入しようとしていた健一郎は「なにぃ!」と叫び、離れの前に潜んでいた次の夜這い師達は「えっ!」と立ち上がり、そして母屋で寝ていたサチエのお父は寝床から飛び起きた。
 塩田家の前で夜通し待機していた数人の青年団が、何事かと慌てて離れに向かって走って来る物々しい足音が響いた。静まり返っていた塩田家は一瞬にして騒然とした雰囲気に包まれた。

「どうしたぁ!」

 たいまつを手にした青年団が慌てて駆けつけて来た。
 笹田は離れの裏口の戸をこじ開けると、サチエの両足を抱えたまま唖然としている健一郎を指差し、「違反者です!」と叫んだ。

「コレがなにやったんだ?」

 腕に『隊長』という腕章を付けた青年団の一人が、ハァハァと息急きながら全裸の健一郎を睨みながら笹田に聞いた。

「はい、『泣かせ薬』を所持している恐れがあります。すぐに身体検査をお願いします」

 笹田がそう報告するなり、青年団の隊長はたちまち不動明王のような形相となり、「なにぃ!」と唸りながら土足のまま小屋の中にドカドカと上がり込んだ。
 裸のままの健一郎が問答無用で裏庭に引きずり出された。

「おめ、新田んとこの健坊だな! こら、おめ、本当に『泣かせ薬』なんか持ってんのが!」

 隊長がそう叫ぶなり、若い青年団の男が健一郎の足を指差しながら「隊長!」と叫んだ。そんな健一郎の指の間には、予備で持っていた『泣かせ薬』が二粒挟まっていた。

「持ってただけだっぺ! 使う気なんか初めからながったべ!」

 健一郎は必死に叫んだ。

「いんや、『泣かせ薬』は所持してるだけでも違反だべ。だがら、おめを夜這い法違反で逮捕すんべ」

 隊長は問答無用でそう告げると、青年団の若者達に「こいづを事務所に連行しろ!」と憤懣の形相で叫んだのだった。


 全裸の健一郎が連行され、青年団達の物々しい足音が闇の中へ消えていくと、再び塩田家は静寂とした雰囲気に包まれた。
 笹田は裏口からそっと中を覗き、そこでブルブルと震えているサチエに「大丈夫が?」と優しく声を掛けた。
 サチエは溺れた子猫のような不安な表情でコクンと小さく頷いた。

「危なかったべ……『泣かせ薬』が使われる前に気がついて良がったべ。あんなもん使われたら狂っちまうべさ……」

 笹田は独り言のようにそう呟くと、子猫のように震えるサチエに「もう心配ねぇべさ」と優しく微笑み、そのまま静かに裏口の戸を閉めた。
 笹田が離れの正面へ行くと、そこに待機していた数人の夜這い師たちが騒然としていた。

「検分様、健一郎のアホが『泣かせ薬』使ったって本当うだべか?」

 既に夜這いが終わっていた昭三が顔を引き攣らせながら笹田に聞いた。

「いんや、使う前に発見した。だから、このまま夜這いは続行すんべ」

 笹田のその言葉に、四番札を持つ哲郎と五番札を持つ孝介がホッと肩を撫で下ろした。

「だども健一郎のアホはとんでもないことしたっぺな……これであいづはこの村におられんようになったべさ……」

 孝介はどこか嬉しそうにそう言いながら哲郎の顔を見た。
 哲郎はそんな孝介に、おもわず「罰が当たったんだ」と答えそうになったが、しかしそれは、今から村八分にされては村を追放される健一郎の運命を考えるとあまりにも悲惨すぎて、さすがに口には出せなかった。

「じゃあ、四番札のおめ、すぐに準備して小屋さ入れ」

 検分役の笹田は、四番札を大事そうに胸に抱きしめている哲郎にそう告げたのだった。


(つづく)

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