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ストレス7

2013/05/30 Thu 18:10

ストレス7




 いつの間にか有料テレビは切れていた。点きっぱなしのテレビの画面には砂嵐が映し出され、スピーカーからはシャーッという不快な音が鳴り響いていた。
 古いビジネスホテルの狭い部屋は、七割をベッドに占領されていた。小さな窓を遮る分厚い遮光カーテン。重圧な鉄の防火ドア。簡易シャワーと冷たい便座のトイレ。そこは、ひたすら眠る事だけを追求する為に作られた専用の箱のようだった。
 しかし、今の広美にとってここは、快楽だけを追求する専用の箱だった。そして、ベッドに腰掛けながら床に正座している広美を見下ろす昭夫にとっても、今やこの箱は射精する為だけの専用の箱と化していた。
 昭夫は、射精直後のペニスをヒクヒクさせながら、「入れて欲しいんだろ?」と、唾液に輝くそれを広美の目の前に突き出した。
 広美はサッと目を伏せた。そして黙ったまま床に転がっていたティッシュの箱に手を伸ばし、素早くそこから三枚抜き取った。
 そんな広美を見下ろしながら「歳はいくつだ」と聞いた。広美は「三十才です……」と小さく答えた。「結婚してるのか?」と聞くと、広美はコクンッと頷きながら唇に付着する精液を拭き取った。
 その右腕がホルスタインのような乳肉を柔らかく歪ませていた。唇を拭き取る動きに合わせ、乳肉がタプンタプンと揺れていた。
 ムチムチとした尻。柔らかい肌。熟練された三十歳。裏切りの人妻。そしてマゾヒスト。昭夫は、そんな広美を(こいつは最高のセックスマシーンだ……)と見下ろしながら、この女は絶対に逃がさないぞと胸底をムラっとさせた。このままこの変態女をここに監禁し、気が狂うまで犯しまくってやると不敵に笑った。
 そうギラリと光った昭夫の目を見た瞬間、広美の脳裏にキッチンで切腹している満男の姿が浮かんだ。内臓が飛び出した血の海の中で、捨てないでくれ捨てないでくれ、と唸りながら蠢いている満男の姿が浮かんだ。それは、子供の頃、岐阜のおばあちゃんの家の離れにある汲み取り式便所の中にいた、糞の中を悠々と泳いでいるトノサマガエルの姿と重なった。
 とたんに吐き気を催した広美が下唇をギュッと噛むと、そんな広美の表情に気付いた昭夫は「旦那の事を思い出したのか?」と聞いた。
 恐る恐る広美がコクンっと頷いた。すると昭夫はゆっくりと立ち上がった。

「お前はもう俺の精子を飲んでるじゃないか……今更旦那の事なんて関係ないだろ……」

 そう言いながら昭夫は広美の腕を掴んだ。凄い力でベッドに引っ張ると、白いシーツの上にいやらしい肉の塊がドサッと転がった。
 広美は、激しい興奮に脳をクラクラさせながら仰向けに寝転がった。そして早く入れてとばかりに両脚をM字に曲げると、ニヤニヤと笑う昭夫に向けて股を広げた。
 真っ白な肉の谷間に、中年女特有の真っ赤に爛れた裂け目が痛々しく捲れていた。ウヨウヨと生える陰毛は透明の汁でへたり、白い肌にべっとりとひっついていた。
 そんな三十女の醜い性器を覗き込みながら、昭夫は反り立つ肉棒をシコシコとシゴいた。そして肛門に垂れる汁を指で掬い、それをクンクンと嗅ぎながら「肛門まで汁が垂れとるがや」と不敵に笑った。
 広美は、顔を顰めながら、「恥ずかしい……」と呟き、潤んだ目で昭夫の目を見ていた。
 昭夫は、広美の体にゆっくりと倒れた。生クリームのように柔らかい乳を揉み、うなじや脇の下を犬のように嗅ぎ回った。まるでトカゲが這うかのようにその柔らかな肌の上で蠢きながら、「おまえ、マゾだろ?」と聞くと、広美はそれに答えないまま「あぁぁぁ……」と呻きながらM字に開いた両足を爪先立ちにさせた。そして、早く入れてとばかりに腰をクイクイと動かすと、ビンっと勃起した肉棒の先にヌルヌルの陰部が触れたのだった。
 昭夫はハァハァと荒い息を吐きながらそこを覗き込んでいた。ここでグッと腰を突き出しさえすれば、七年も夢見ていたオマンコに辿り着けると胸が熱くなった。
 この女は、七年の夢を叶えるには申し分のない女だった。この変態性欲に満ちた肉体はその為だけに存在する生き物であり、それを神が、七年間辛抱した自分に褒美として与えてくれたのである。
 そう信じながら昭夫は、ブリッジのように浮き上がっている広美の腰を両手で固定した。ジクジクと汁が滲み出る穴にペニスの先を充てがい、腰を小刻みに動かしながら裂け目に沿って亀頭を上下に滑らせた。上部に飛び出している陰核に尿道を擦り付け、下部の膣口を亀頭の先でヌルヌルと掻き回した。それを何度か繰り返していると、広美が喉をヒクヒクさせながら「して下さい」と悶えた。
 その言葉に昭夫は異様な興奮を覚えた。「入れて下さい」ならよく耳にするが、「して下さい」というのは初めてだった。その生々しい言葉と、この変態人妻の淫らな肉体に堪らなくなった昭夫は、腰を持ち上げていた手を尻へとズラし、そのムチムチとした尻肉を両手で鷲掴みにした。そして、異常なほどに敏感になっている亀頭を穴の先にヌプっと入れると、その言葉がもう一度聞きたくて、「して欲しいか?」と聞いた。
「あぁぁぁ……」と腰をくねらせる広美は、興奮で意識を朦朧とさせながらも、「して下さい……」と呻いた。
 それでも昭夫は広美を焦らした。亀頭だけをヌプヌプとピストンさせながら、「こうして欲しいのか?」と聞き、更に、「それともこうして欲しいのか?」と聞きながら、摘んだペニスの根元をぐるぐると回しては、ポッカリと開いている膣口をぷちゃぷちゃと鳴らした。
 そんな昭夫の執拗な焦らしに耐えきれなくなった広美は、「奥まで入れて下さい!」と叫んだ。そんな広美の感情は、もはやパニック寸前だった。これ以上焦らされたら気が狂ってしまうと広美の脳が警鐘を鳴らしていた。
 思えば、ここ数日間の広美は焦らされ続けていた。
 頭のおかしな親父に電車で痴漢され、そのまま駐輪場に連れ込まれてはフェラチオさせられた。そしてそれを覗く少年のオナニーシーンを見せつけられ、その後、一人で全裸で自転車に跨がり、少年の精液が飛び散るサドルに股間を擦り付けながらイッた。家に帰ってみれば、インポの旦那にビニールテープで縛られた。そして人参を膣と肛門に入れられ、それで無惨にイカされた。翌日は、公園のトイレで全裸でオナニーした。散歩途中の老人にスカートの中を露出した。そして今、見知らぬホテルで見知らぬ男とこうして全裸で交わっている。
 この数日間、広美は変態行為を繰り返しながら常にムラムラと欲情していた。にもかかわらず、セックスは一度もしていなかった。ペニスが欲しくて欲しくて堪らなかった。もはや犬のペニスでもいいと思ってしまうくらいだった。
 そんな一触即発な精神状態の中、しかしここでも広美は焦らされていた。欲しくて欲しくて堪らない肉棒の先を敏感なワレメにヌルヌルと擦り付けられながら、たっぷりと焦らされていた。
 爪先立てた太ももがピクピクと痙攣してきた。その肉棒が侵入して来る瞬間を必死に待ちわびながら、「お願いします! お願いします!」と悲痛に叫び続けていた。
 そんな広美の顔を見下ろしながら昭夫が言った。

「俺の命令に従うか?」

 広美はハァハァと悶えながら、うんうんと頷いた。

「なんでも言うことを聞くか?」

「なんでもします……」

「じゃあ俺の女になれ」

 広美がコクンと頷くと、昭夫は「でもあんたは結婚してるんだろ」と広美の目を覗き込んだ。

「…………」

「チンポ欲しさにそう言ってるだけじゃないのか? 俺は本気だぜ。あんた、本当に旦那と別れられるのか?」

 不意に、満男のあの情けない顔が浮かんだ。使い物にならないペニスの、あのイカ臭い恥垢の匂いまでもが蘇り、広美は激しい嫌悪の情をもよおした。
 広美が「別れます」ときっぱり答えると、昭夫は「よし……」と頷きながら突然ベッドを飛び降り、鏡台の下に置いていた紙袋を引きずり出した。
 その紙袋は、七年前、ブタ箱から名古屋拘置所に移監された際、七十歳になる母が差し入れてくれた物だった。ビニールが貼られた袋の表面には、地元の犬山城の写真と犬山モンキーパークの猿が数匹プリントされていた。
 昭夫は、ベッドに横たわる広美に背を向けながら紙袋の中を漁った。七年前、この紙袋と一緒に差し入れてもらった甚平と腹巻きを床に放り出した。刑務所の領置環境が悪いため、それらは異様にカビ臭かった。
 紙袋の中からは、他にも、箸箱、石鹸箱、ミニ国語辞典、ニベア、メリットシャンプーなどが次々に出て来た。それらは全て拘置所で購入した物だった。
 その紙袋の底には大学ノートが十数冊積まれていた。そのノートの表紙には、『怨』というタイトルが殴り書きされ、元妻に対する恨み辛みが延々と書き綴られていた。しかしそれは、そこに書かれている内容があまりにも残酷で生々しかった為、検閲官から『ノートの使用禁止』を喰らってしまい、十数冊ある内の三冊は新品のままだった。
 そんな七年前のガラクタが床の上に散らばった。これらのガラクタをわざわざ娑婆で使うはずは無く、本来なら出所時に刑務所側に廃棄を願い出るものだが、しかし昭夫はそれらを捨てられなかった。今や何もかも失ってしまった昭夫にとっては、例えそんなガラクタであっても唯一の財産なのである。
 空っぽになった紙袋の奥底から、ティッシュに包んだモノを取り出した。それはまさしく加藤が持って来たシャブと注射器だった。昭夫は、まるで財宝が眠る宝石箱を開けるかのように、ギラギラと目を輝かせながら包んでいたティッシュを一枚一枚丁寧に剥がした。そしてその白い粉の入ったパケと注射器を広美に見せた。

「天国にイカせてやるよ……」

 そう言う昭夫は狂気の笑みを浮かべた。
 広美はそれが何なのかすぐにわかった。もちろん今までに覚醒剤など見た事もなかったが、この状況でそれを出されて気付かないわけがなかった。
 それでも広美は、せっせとシャブを作る昭夫を黙って見ていた。もうどうなってもいいと思っていた。この糞つまらない人生から抜け出せるのなら、シャブでも自殺で何でもいいと思っていたのだ。

「これを打つとセックスが百倍気持ち良くなるぞ……」

 そう言いながら昭夫は、広美の右腕に浴衣の紐をぐるぐると巻き始めた。
 広美は全く抵抗しなかった。腕の血管に注射針を突き付けられても身動きひとつしなかった。
 針が肌にプツと突き刺さった。「力、抜いとけよ……」と言いながら、昭夫は腕に巻かれた浴衣の紐を緩めた。
 注射器の液体の中を、一筋の血が昇って行くのが見えた。それはまるで尻尾の長い金魚が泳いでいるように美しく、おもわず広美は自分の血に見とれてしまっていた。
 針が抜かれた瞬間、いきなり鼻がスーッとした。まるでミントのアロマを嗅いだ時のように鼻の通りがスースーと良くなり、それまでモヤモヤとしていた脳がすっきりした気分になった。

「どうだ。脳がシャキッとして気持ちいいだろ」

 そう言いながら昭夫は、広美の股に潜り込んで来た。広美の股の中で自分の腕にも覚醒剤を注入し、その顔をだらしなく弛ませながら、ニヤニヤと広美を見下ろしていた。
 すると、突然何の前触れもなく、ヘッドスパでオイルを垂らされたような冷たさに脳天を貫かれた。そのあまりの気持ち良さに広美は、おもわず「あぁぁぁ……」と唸りながら身を捩らせていた。
 その冷たい感覚は、脳天から足の爪先にかけて何度も何度も走った。それが走る度に、鼻づまりも、頭痛も、肩こりも、そして頭の隅にずっとこびりついていた満男の事さえも、全て綺麗に洗い流してくれた。
 その爽快感は、サウナの後の水風呂によく似ていた。一〇〇度近くもある熱い箱の中で蒸されていた苦しみから一気に解放されるあの瞬間と同じだと思った。
 広美は繰り返し襲い掛かって来る不思議な爽快感に身悶えていた。
 気が付くと広美は、持ち上げた腰をクイクイと振っていた。硬い肉棒の腹にワレメをピタリと押し付け、そこに粘膜をヌルヌルと擦り付けていた。
 もっこりと突き出た恥骨から、ドロドロに濡れた亀頭が顔を出したり引っ込めたりしていた。ヘソ側から見ていると、まるで『モグラ叩きゲーム』のモグラが顔を出しているようだった。
 肉棒に滑る粘膜がぴちゃぴちゃといやらしい音を奏でると、昭夫が天井を見上げながら「くうぅぅぅぅぅぅぅぅ」と唸った。
 そんな昭夫の喉仏を見ながら、更に爪先を立ててキュッと腰を引くと、股間の角度が変わり、膣の入口に亀頭がコリッと引っかかった。
 捕まえた亀頭を逃がさぬよう慎重に微調整し、そのまま一気に腰をグッと突き出した。横倒しにされた肉棒は、まるで肛門に座薬を入れるようにツルンっと穴の中に滑り込んでいったのだった。

(つづく)

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