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吐泥(へろど)6

2013/06/13 Thu 00:01

 休憩室での遭遇には怒りをあらわにした私だったが、しかしこの密室での遭遇は、間違えてライオンの檻に迷い込んでしまったような、そんな逃げ場のない恐怖を感じた。
 一刻も早くここから出たいと思った。しかし、入ってすぐに出るというのもそれなりの度胸が必要であり、気の小さな私には容易ではなかった。
 仕方なく顔を隠すように項垂れた。弛んだ腹を見つめながら、こんなサウナなんかに来なければ良かったと何度も何度も呟き、熱さから出た汗とは違う嫌な汗を脇の下からタラタラと垂れ流していたのだった。

 テレビは壁に埋め込まれていた。やはりここでもナイター中継が放映されていたが、しかしそれは分厚いアクリル板に仕切られていたため、ボソボソと篭る解説者の声は雑音でしかなかった。
 そんなテレビから、突然、「ボーボバン! ボーボバン!」と叫ぶ解説者の篭った声が騒がしく響いた。上目遣いでそっとテレビを見てみると、画面には『ホームラン』という白い文字が浮かび、その背後では、黒いストライプのユニームを着た若い選手が、まるでグリコの看板のようなポーズを取りながら走っていた。
 隣の男が開脚前屈を止めた。じっと画面を見つめながら「六対三か……」と吐き出すように呟いた。その声を聞き、ふと私は、この喧騒に乗じようと思った。あたかも中日ファンであるかのように、「チッ」と舌打ちしながら出て行こうと思ったのだ。
 が、しかし、そう思って腰を上げようとした瞬間、突然奥からチューチューという奇妙な音が聞こえ、私は出鼻をくじかれた。
 それはネズミの鳴き声のようだった。
 その異音につられて振り向くと、そこには、今までに見たこともないようなおぞましい世界が広がっていたのだった。

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 巨大な熊が、ピンっと勃起した専務のペニスの先にチューチューと吸い付きながら、自分のペニスをシコシコとシゴいていた。
 一瞬にして体が固まり、全身から汗が噴き出した。もちろんサウナによる発汗ではなく恐怖による冷や汗だった。
 しかし私は、その醜い光景に釘付けになっていた。それは、あの公衆便所で主婦が二人の男に陵辱されているのを目撃した時と同じだった。スリルとエロスが脳内で複雑に混じり合い、まるで、初めて『家畜人ヤプー』を読んだ時のような猟奇的な異常興奮に駆られてしまっていたのだった。

 嫌な沈黙の中、チューチューという音だけが響いていた。ドキドキしながらその音に耳を傾けていると、突然その音はチューチューからチュプチュプへと変化し、そしてそれは次第に速度を速めてはジュプジュプと変わった。
 そんな下品な音が響く中、不意に「んっ」という男の声が聞こえ、思わず私は横目で奥を見てしまった。
 ペニスをベロっと吐き出した熊が、慌てて専務の足元に跪いた。専務はハァハァと荒い息を吐きながら熊の唾液でネトネトになった自身のペニスをしごき、その先を熊の唇に向けた。
 熊の恍惚とした顔に、濃厚な精液が、びゅっ、びゅっ、と飛び散った。専務は、みるみる汚れていく熊の顔を冷淡な目で見下ろしながら、震える声で「ほれ、ほれ」と呟いていたのだった。

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 そんな凄まじい光景がすぐ真横で繰り広げられているにもかかわらず、サラリーマン風の男は平然とテレビを見ながら開脚前屈を続けていた。下段で項垂れている沖縄青年も全く微動だにしなかった。
 しかし私は気づいていた。開脚前屈している男の股間が徐々に変化していることを。そして、すぐ目の前に座っている沖縄青年の右肩が、先ほどから微妙に揺れている事を。
 このままではマズい。そう思うと同時に、不意に開脚前屈している男が「おたくは中日ファンですか?」と私に話しかけてきた。
 私は無言で男を見た。男の大きく開脚された股間の真ん中からは、既に弓のようにしなった肉棒がニョキッと突き出ていた。それはまるで別の生き物のようにヒコヒコと動き、獰猛に腫れ上がった亀頭が張り子の虎のように揺れていた。
 それを目にした瞬間、私はそれを妻にしゃぶらせたいと思った。そして、それを妻の穴の中に挿入させ、内部でヒコヒコと動く肉棒に密かに感じている妻の背信的な姿を見てみたいと思った。
 その光景を想像するなり、激しい嫉妬と興奮が凄まじい勢いで湧き上がってきた。カッと頭に血が上った私はズカズカと扉へと進み、飛び出すようにしてそこから脱出したのだった。

 すぐ目の前の洗い場に腰を下ろした。頭上のシャワーをひねり、熱い湯を頭から浴びた。
 危ないところだった。あのまま行けば私は妻と化し、妻を演じながらあの男の肉棒を咥えてしまうところだった。
 頭を冷やそう。そう思いながらシャワーの温度を下げ、項垂れた後頭部にキンキンの冷水を浴びせた。しかし、項垂れると同時に熱り立った自身のペニスが目に飛び込み、その異常興奮は冷めるどころか更に奮い立った。
 頭上から顔に垂れてくる冷水を、ブシュルルルルル、ブシュルルルルル、と唇で鳴らしながら肉棒を握りしめた。それをゆっくりと前後させながら、この洗い場でさっきの男の肉棒を咥えさせられている妻の姿を思い浮かべた。

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 妻はタイル床に正座させられていた。男は妻に「手を使うな」と言い、口だけをぽっかりと開けている妻の口内に、反り立つペニスをヌポヌポと出し入れしていた。
 男は、「おお……凄いよ奥さん……」と唸りながら、妻の顔に向けて更に激しく腰を振っていた。男の腰が動く度に妻の大きな乳肉がタプンタプンっと揺れていた。
 そんな妄想をしながらペニスをしごいていると、そこで初めて隣の洗い場に人がいることに気づいた。
 慌てて手を止めたが、しかし、その人はもはや七十近いお爺ちゃんであり、私のその行為に気づかないまま髭を剃っていた。
 私は横目でそのお爺ちゃんを見ながら再びペニスをしごいた。こんな老人ともヤらせて見たい。あの萎れた尻肉の谷間に顔を入れさせ、年季の入った肛門や睾丸を妻に舐めさせてみたい。そんな事を想像しながら私はペニスをシゴいた。

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 ふと気がつくと、そんな私をジッと見つめている二人の男がいた。一人はさっきの開脚前屈の男で、すぐ横の水風呂に浸かりながら私の行為を観察していた。そしてもう一人は休憩室にいた露出男だった。彼はおもむろに私の真正面に立ちながら、上下に動く私のペニスをジッと見つめていた。
 驚いた私は一瞬その手を止めたが、しかし、もはや異常性欲のスイッチが入ってしまっていた私の手はすぐに動き出した。その恥ずかしい行為を見てくれと言わんばかりに、大胆にそれを剥き出しながら大きくしごき始めた。

 本来なら、このような姿を同性に見られるのは耐えられない屈辱のはずだ。
 しかし私は屈辱を感じるどころか快楽を感じていた。
 なぜなら、今の私は妻だからである。
 私の脳内で今のこの状況は、卑猥極まりないハッテン場でオナニーしている妻が、変態男たちに見られているという状況なのである。
 妻になりきった私は、椅子に腰掛けていた右足をわざと爪先立たせ、男たちに尻の裏までも見せつけた。(見ないで……見ないでください……)と羞恥に満ちた妻の声を蘇らせながら股の裏にボディーソープを塗りたくると、緩んだ肛門に人差し指を第一関節まで差し込み、ヌポヌポしてやったのだった。

 二人の男は、そんな私の股の裏を無言で覗いていた。露出男は勃起し、開脚前屈の男は右手をリズミカルに動かしながら、水風呂の水をタプタプと揺らしていた。
 ふと私は、今からこの二人をホテルの部屋に連れて行きたいと思った。そして二人して、妻を演じる私を嬲りものにして欲しいと本気で思った。

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 しかし、そんな狂気の願望が湧き上がると同時に、その無残な光景がリアルに浮かび上がり、それに刺激された私のペニスの先から大量の精液が飛び出した。
 すると、すかさず露出男が「あっ」と叫び、慌てて私の足元に跪いた。そして上下する私の亀頭に向かって大きく口を開けると、吹き出す残液を一滴残らず口内で受け止めた。
 露出男は、恍惚とした表情で口をぺちゃぺちゃさせた。そして自分のペニスを狂ったようにしごきながら私のそれを飲み干すと、奇妙な声で悶えながら私の太ももに向けて精液を飛ばした。
 そんな露出男の顔はナマズのようだった。腰をヒクヒクさせながら射精するその姿は、まさに泥水の中でのたうち回っている大ナマズのようだった。
 そう思った途端、急に私は吐き気を感じた。そこに射精後の嫌悪感も合併し、今までの興奮は突然怒りに変わった。
 そんなナマズを冷たく見下ろしながら、淡々とシャワーで股間を洗い流した。そしてさっさと出口に向かって歩き出すと、心の中で(腐れ外道どもが)と捨て台詞を呟きながら、最後にもう一度振り返った。
 ナマズ顔の男がこっちを見ていた。
 よく見るとその顔は、ナマズというより石破茂だった。

(つづく)

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