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吐泥(へろど)15

2013/06/13 Thu 00:01

 終点の新潟駅に着いたのは二時を少し回った頃だった。改札を出るなり、妻が「漁業組合には何時に行くの?」と聞いてきた。私は「うん……」と曖昧な返事をしながら、宛てもなく駅の中をぐるぐると歩き回っていた。
 ここから例のホテルまでタクシーで三十分程度だった。計画では、この後、新潟の町をブラブラしながら妻に露出をさせ、妻の内に秘められている変態性欲を更に高める予定だった。
 そうやって今夜のサウナ潜入に備えるつもりだったのだが、しかし妻の変態度は予想を遥かに超えており、既に新幹線内の第一計画だけで充分だった。今の妻なら、そこらのおっさんを捕まえて「こいつとセックスしろ」と言っても素直に従うはずであり、もうこれ以上調教を続ける必要はなかった。
 しかし、だからと言ってこのままホテルに直行するというのも、あまりにも妻が哀れに思えた。だから私は駅の中をぐるぐる回りながら、取り敢えず日本海の魚だけでも食べさせてやろうと、それなりの店を探していたのだが、しかし、駅の中にあるのはフランチャイズのファーストフード店ばかりであり、事前に『食べログ』までチェックしていた妻が納得するような店は見当たらなかったのだった。

「ねぇ……さっきから何してるの?」

 油の匂いがムンムンと漂うとんかつ屋の前を通り過ぎると、ふと妻がそう私の顔を覗き込んだ。その濃紺の暖簾がぶら下がるとんかつ屋の前を通るのはこれで三度目だ。

「うん……トイレを探してるんだけどね……」

 そう誤魔化すと、妻は「トイレならさっきあったじゃない」と驚きながら後ろを振り向き、ドラッグストアの横の通路にぶら下がっていた『WC』のプレートを指差した。

 エレベーター横の小さな書店に妻を残し、ワックスでテラテラに輝く通路をぺたぺたと歩きながらトイレに向かった。特に催しているわけではなかったが、そう言ってしまった以上、そこに行かなくてはならなかった。
 ドラッグストアの店先に陳列されているトイレットペーパーが、どこか懐かしい甘い花の香りを漂わせていた。通路を曲がるなり、男子トイレの入口に置いてある『清掃中』の黄色い看板が目に飛び込んできた。しかし中を覗くと男が三人いた。一人は洗面所で手を洗い、残る二人は小便器の前で黙々と用を足していた。だから私も看板を無視してトイレに入った。
 五台並んだ小便器の手前で、ドクロ柄のTシャツを着た青年が携帯を耳にあてながら用を足していた。便器を一つ挟んだ奥の便器では、ハゲ頭の老年サラリーマンが、まるで黙祷しているかのようにジッと目を閉じたまま突っ立っていた。
 そんな二人の背後を横切り奥へと進んだ。最後尾の便器の横にはバケツがすっぽりと入った底の深い流し台があり、そこからモップとデッキブラシの棒が突き出していた。便器の前で足を止めると、背後の個室からカコカコカコっという音が聞こえてきた。チラッと振り向くと、清掃婦のおばさんが洋式便器の中をブラシで必死に擦っていた。
 社会の窓からソッとペニスを摘まみ出すと、いきなり小便とは違う液体がドロッと流れ出た。それは、新幹線の中で射精した時の残液だった。今まで尿道に溜まっていたのが、ペニスを解放したと同時に溢れ出したのだ。
 便器に垂れたそれは、ニトーっと長い糸を引きながらいつまでもぶら下がっていた。ブルブルっとペニスを振ってもその糸は切れず、慌てた私は横目で隣の老年サラリーマンを見た。

ウツボ57

 幸いにも、男は未だジッと目を閉じたままだった。恐らく前立腺を患っているのだろう、男は腐った桃のようなペニスを摘んだまま、鼻息をクフクフと鳴らしながら力んでいた。
 ツユの糸をぶら下げたまま一気に小便をした。押し出されたゼリー状の残液が便器の底にボタボタと落ちた。それはまるでタピオカのようであり、尿道にゴリゴリとした違和感を感じた。
 すると突然、隣の男のクフクフという鼻息がフーッという溜息に変わった。ソッと横目で見てみると、私のびしゃびしゃと放出される音に誘発されたのか、男のペニスからも小便が噴き出していた。

ウツボ58

 男は目を閉じたままだった。まるでクラッシック音楽に聴き入るかのように、気持ち良さげに目を閉じながら、びしゃびしゃと奏でる自分の小便の音を聞いていた。
 それまで腐った桃のように萎れていたペニスは、激しい排尿によって躍動感がみなぎり、みるみる逞しくなってきた。それは私のモノより遥かに太かった。亀頭を形取るカリ首は、まるで彫刻刀で彫り込んだようにくっきりと浮かび上がり、獰猛な爬虫類のエラのようだった。
 それを眺めていると、不意に(これを妻にしゃぶらせたい……)という欲望が湧いた。きっと今の妻なら、こんな男のペニスでも喜んでしゃぶるはずだった。この男を個室に誘い込み、そこに妻を連れ込み、私の見ている前で狂ったようにしゃぶらせたいと妄想に耽っていると、ムラムラと溢れてくる欲望で胸が苦しくなってきた。

ウツボ59

 私の脳は、既にヘドロと化していた。さっき新幹線の中で見た妻の陰部に滴る精液のように、私の脳はドロドロに溶けていた。そんな私は、男の小便が止まるのを息を殺して待っていた。男が小便を終えたら、私の妻にあなたのペニスをしゃぶらせてやってもらえませんかと、そう声を掛けようと本気で思っていたのだ。
 男の小便は次第に勢いを衰え、まるで水道の蛇口を閉めたかのようにピタリと止まった。男はボテッと太った肉棒を指で摘みながらユッサユッサと上下に振った。ポタポタと垂れる雫が精液のように見え、それが滴る白い便器が、大きく口を開いた妻に思えた。
 男がギギッとチャックを閉めるなり、私はジッと目を閉じている男の横顔に顔を近づけた。そして「あのぅ」と声を掛けようとした瞬間、突然男の目がカッと開いた。男はサッと振り返り私を睨んだ。その物凄い形相に、思わず「えっ」と私が怯むと、男の視線はゆっくりと私の下半身へと下り、そこで再びカッと目を見開いた。

ウツボ60

 私のペニスは勃起していた。妻がこの男のペニスをジュブジュブと下品にしゃぶる妄想をしていたため、ペニスははち切れんばかりに膨張していた。男はそんな私のペニスを、まるで親の仇でも見るような形相で睨んでいた。そしてその鋭い視線を再び私の顔に戻すと、私の目をジッと覗き込みながら、「バカモノ」とひとこと呟き、そのままスタスタとトイレを出て行ってしまったのだった。
 どうやら男は、私がホモだと勘違いしたらしい。男が放ったその「バカモノ」は、私が小六の時、放課後の誰もいない教室で、高橋美優の体育ズボンの股間を嗅いでいるのを教頭先生に見つかった時に言われた「バカモノ」と同じ部類の「バカモノ」だった。
 
 私は変態だがホモではない!
 いつしか誰もいなくなったトイレを見つめながら、私はそう心に叫んだ。静まり返ったトイレには清掃婦のブラシの音だけがカコカコと鳴り響いており、まるで、見知らぬオヤジに「バカモノ」呼ばわりされた私を嘲笑っているようだった。
 一瞬その音にムカッときたが、しかし、それでも私のペニスはビクンビクンっと波を打ちながら勃起を続けていた。一日に七回もの射精が軽くできるほどの私の異常性欲は、こんな事で治るほどデリケートではないのだ。
 カコカコカコっというブラシ音に合わせてペニスをシゴいた。取り敢えず少しだけでも抜いておこうと思い、背後のおばさんを気にしながらこっそりとシコシコしていると、不意にそのカコカコという音がピタリと止んだ。ジャーッと個室便器の水を流す音が聞こえ、焦った私はシゴいていたペニスから慌てて手を離した。すると、それと同時にすぐ隣りの流し台におばさんの姿がヌッと現れ、おばさんはガサガサと音を立てながら汚れたブラシを洗い始めたのだった。
 危ないところだった。もう少し遅れていたら、このおばさんにシコシコしている瞬間を目撃されるところだった。そう思いながら慌てて勃起するペニスをズボンに押し込もうとすると、不意にその『シコシコしている瞬間を目撃される』という自分の言葉に突然ムラッと欲情を覚えた。私はその言葉から、見ず知らずの男にオナニーを見せつけられている妻の姿を頭に思い描いてしまったのだ。
 激しい興奮に襲われた私は、握っていたペニスからソッと手を離した。そしてそのまま腰を大きく反らし、それをビーンっと突き出しながら、腹筋を使ってそれをヒコヒコと動かし始めた。
 それはまるで、揺れ動く張り子の虎の首のようだった。すぐ隣りでビョンビョンとバウンドしているペニスに、おばさんが気づかないわけがなかった。おばさんはモップをジャバジャバと洗いながらチラッとソレを見た。そしてさっきの男と同じようにギョッと目を見開いたのだった。

ウツボ61

 駅のトイレの清掃婦など、どうせシルバーセンターから派遣された老婆だと思っていた。少なくとも東京駅の清掃婦の感覚でいけばそうに違いなかったが、しかしそのおばさんは違った。四十代前半のパート主婦といった感じの、至って普通のおばさんだった。
 全然イケると思った。熟女独特のポチャポチャとした体は胸もそれなりに大きく、尻だって作業ズボンをパンパンにさせるほどにムチムチしていた。恐らく、そんなおばさんの股間は、朝からの労働によってムレムレに蒸れているはずだ。剛毛の奥に潜むキクラゲのような陰唇は汗と小便の残り汁でテラテラに濡れ輝き、それを指でぺろりと捲れば、その中からきっと凄まじい発酵臭が漂ってくるだろう。
 そんなことを妄想していると、無性にこのおばさんの股間に顔を埋めたいというマゾ心が生まれ、更に異常な妄想がモワモワと溢れてきた。

 妄想の中のおばさんは、私に「そこに座りなさい」と言った。私は素直に便所の床にベタリと尻を下ろすと、作業ズボンを脱ぎ始めたおばさんを見上げながらペニスをシゴき始めた。
 下半身裸になったおばさんは、「舐めてもいいわよ」と薄ら笑いを浮かべながら、床に座っている私の顔を跨ぐと、黒いブラジャーから引きずり出したブヨブヨの乳を自分で揉み始めた。そしておばさんは、乗馬するかのように腰をコキコキと動かしながら、その蒸れた股間を私の顔に擦り付けてきた。
 タワシのような剛毛が額をゴシゴシし、腐った柿のような陰部が鼻の上をヌルヌルする。私はハァハァと荒い息を吐きながらも、そのドロドロになった割れ目に舌を伸ばし、必死にそこをベロベロと舐め回した。そしてそのチーズ臭い白濁の恥垢から、肛門のティッシュの欠片に至るまで、私はおばさんの恥部を全て味わうのだった。

ウツボ62

 そんな妄想をしながら、いつしか私はペニスをシゴいていた。
 現実のおばさんが、ジッと固まったまま、上下する私の肉棒を黙って見ていた。

「ハァハァ……おばさん……私と個室に行きませんか……おばさんのアソコをイクまで舐めてあげますよ……」

 おばさんの目を見つめながらそう唸った。おばさんは身動きしないまま無言で私を見ている。

「入れさせてくださいよ……コレをおばさんのオマンコにズボズボさせて下さいよ……ほら、見てくださいよ、凄くビンビンしてるでしょ……おばさんがイクまでずっと動かし続けますから……だからそのヌルヌルマンコに入れさせてくださいよ……」

 そう囁きながらペニスを激しくシゴいた。それでもおばさんは眉一つ動かさず、私のその奇行を黙ってじっと見つめていた。

ウツボ63

 ペニスをシゴくという肉体的快感と、見ず知らずのおばさんにオナニーを見られているという精神的快感がヘドロ化した脳をドロドロと搔き回し、私の興奮を最高潮まで高めた。

「あっ、イキますよ、あっ、見ててください、あっ、あっ」

 そう小さく叫びながら、白い陶器に精液をビュッビュッと飛ばし、快楽に両足をモゾモゾさせながら、はあぁぁぁぁぁぁ……と深い息を吐いた。半開きの目でおばさんの顔を覗き込むと、真っ赤な舌を突き出し、古いイタリア映画のスケベ親父がするように舌をレロレロと動かして見せた。
 するとおばさんは真顔でジッと私を見つめながら「バカモノ」と呟き、何事もなかったかのように再びモップをバシャバシャと洗い始た。
 そんなおばさんが呟いた「バカモノ」も、やっぱりあの時の教頭先生の「バカモノ」と同じだった。

(つづく)

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