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吐泥(へろど)28

2013/06/13 Thu 00:01

『サウナキング』と書かれた自動ドアが開くなり、玄関端の小さなカウンターでテレビを見ていたネズミ男が、「おっ」という顔をした。
 相変わらずテレビの音量は大きく、志村けんとマツコデラックスのわざとらしい笑い声が玄関一杯に響いていた。
 背後で自動ドアがゴォォォォと閉まった。「来ましたね」と、ネズミ男が不敵に笑い、私も下品な笑顔を浮かべながら「来ました」と呟いた。
 十二時に妻を連れて来ると伝え、サウナを後にした。そんな十二時までは、まだ三時間近くあった。その間どう過ごそうか考えながらエレベーターに乗り込み、六階のボタンを押そうとしたが、しかし、部屋を出てからまだ十五分しか経っていなかった。
 今頃妻は、恐らくオナニーの真っ最中だった。いくら興奮が冷めてしまったとはいえ、もはやどっぷりとヘドロに浸かってしまっていた妻には、あの状況下でオナニーが我慢できるだけの平常心などあるわけがないのだ。
 そう確信しながら、私は一階のボタンを押した。とりあえずロビーで時間を潰し、部屋に突入するタイミングを見計らおうと思ったのだった。
 
 エレベーターの扉が開いた。既にロビーは照明が消され、無人のフロントだけがダウンライトに照らされながらぼんやりと浮かんでいた。
 田舎のビジネスホテルにはよくある光景だった。こんな田舎で、こんな時間にチェックインする客などおらず、だからこうしてさっさと照明を落としてしまうのだ。
 薄暗い通路にスリッパの音をヒタヒタと鳴らしながらロビーに進むと、道路沿いのショーウィンドウの前に、四脚の応接セットがポツンと置かれていた。
 その応接セットは、まるで昭和のカップル喫茶のように観葉植物で仕切られていた。確か前回のチェックインの際、その花柄模様の応接セットの趣味の悪さと、カラーボックスの中に押し込まれていた百冊以上の『こち亀』に、思わず笑ってしまった場所だった。
 取り敢えずそこで時間を潰そうと思い、観葉植物の隙間からガサッと強引に中に入った。するとそこに真っ赤な豚が一匹いた。豚は携帯電話を耳に当てたまま、突然現れた私にブヒッ!っと鼻を鳴らして驚いたのだった。

 それは豚ではなく女だった。丸々と太った女が、ショーウィンドウから漏れる交差点の赤信号に照らされながら驚いていた。
 慌てて私は女に「失礼……」と小さく呟き、女の真正面の席にソッと腰を下ろした。そしてすぐさまカラーボックスに手を伸ばすと、読みたくもない『こち亀』を一冊取り出したのだった。
 最初は飛び上がらんばかりに驚いていた女だったが、しかし私が、『こち亀』をパラパラし始めると、次第に動揺は落ち着き、再び携帯に向かってコソコソと話し始めた。
 私は『こち亀』をパラパラしながらも、女の話し声に耳を傾けていた。女は、妙に古臭いガラケーをパンパンに膨らんだ頬に食い込ませながら、仕切りに「チェンジ」という言葉を口にしていた。
 ページの端からソッと女を見た。びっくりするくらいのミニスカートを履いており、そこからボンレスハムのような肉の塊が、ボン、ボン、と二つ伸びていた。それは、サイズが小さいのか、それとも元々短いのか、どちらかはわからないが、とにかくそのスカートの短さは一般常識からかけ離れていた。
 私はわざとらしくページの音をパシャリと立てながら、更に女の観察を続けた。女はブスだった。赤塚不二夫の漫画に出てくるような、そんな絵に描いたようなブタ顔だった。そしてその体も、やはりブタだった。ブクブクの巨漢デブという感じではなく、ムチムチの小デブといった感じであり、それが更にブタ感を濃厚にさせていた。
 そんな豚女は、私に聞かれまいと、必死に声を潜めながら電話をしていたが、しかし、この静まり返った空間では、女の声だけでなく相手の声さえも携帯から漏れ聞こえていた。
 相手は男だった。その口調は横柄であり、まるでチンピラのような巻き舌を使っていた。女は何かに怯え、携帯を握るその手は微かに震えていた。

「ぐだぐだ言っとらんと、もういっぺん部屋に行ってこいや!」

 突然男の怒鳴り声が聞こえた。すると豚女は亀のように「ひっ」と首を窄め、今にも泣き出さんばかりの表情で「でも……」と声を震わせた。

「……チェンジって言われて……もっと若くてスタイルのいい子を連れてこいって怒鳴られたんです……だからもう私では……」

「いいからもういっぺん行ってこいや! 土下座して頼み込んでこいや! ええか、その客取るまで迎えにはいかんからな、その客逃したらそこから歩いて帰ってこいや、わかったかボケ!」

 男は一気にそう捲し立てた。そして散々怒鳴った挙句、一方的に電話を切ってしまったのだった。

 その電話の内容とこの極端に短いスカート、そして深夜のビジホのロビーというこの状況から総合して考えると、この女は紛れもなくデリヘル嬢だった。その豚のような醜い容姿から客にチェンジと言われ、それで会社から怒鳴られまくっている惨めな風俗嬢に違いなかった。
 豚女はぐったりと項垂れていた。切られてしまった携帯電話を耳に押し付けたまま愕然と動かなくなった。
 そんな豚女を私はマジマジと観察していた。『こち亀』を膝の上に置きながら、もはや堂々と真正面から豚女の体を観察していた。
 ボテッと垂れた二つの乳の下に、肉付きの良い三段腹が段々畑のように続いていた。尻と太ももは同じ太さであり、くびれが全く見当たらないその体は、まるでドラム缶のようだった。
 携帯を握ったままの脇には汗がじっとりと滲んでいた。黒いTシャツの脇に浮かぶそのシミは、まるで黒いパンティーのクロッチに広がるシミのように、不潔っぽくも卑猥だった。
 短いスカートには、所々に毛玉がくっついていた。素足のくるぶしには、薄っすらと血が滲んだバンドエイドが貼ってあった。長いストレートの黒髪は見た目が重く、妙にじっとりと湿ってはどこか油っぽかった。

(だらしない女だ……)

 そう思いながら、項垂れる女を観察していた。こんな気持ちの悪い女などチェンジされて当然だろう、と思いながらも二本の巨大な太ももの隙間を必死に凝視していると、不意に女が携帯をパシャンっと閉じた。すると、それと同時に女の下半身が微かに歪み、今までピタリとくっついていた太ももの隙間から白いパンティーがチラッと見えた。
 そのムチムチの肉にぴっちりと密封されていたソコは、きっとムンムンに蒸れているはずだった。これほどだらしない女ならば、恐らくソコは、デブ特有の酸っぱい汗と、ちゃんと拭ききれていない小便の残り汁、溜まりに溜まった恥垢と、ダラダラと垂れ流しされたままの濃厚なオリモノ、そして、前の客にベロベロと舐められた唾液や、無残に中出しされた精液といったものが放置され、とんでもない異臭を放っているに違いなかった。
 そんな匂いを想像していると、私の中に潜んでいる異常変態性欲がムラムラと湧き上がってきた。あのムチムチの太ももに顔を挟み、その凄まじい陰部に顔を埋め、舌をレロレロと動かしながらその激臭と腐味に悶え苦しんでみたいという奇怪な欲望に取り憑かれた。

 背筋をゾクゾクとさながらソッと視線を上げた。ふと、項垂れていた豚女と目が合った。豚女は太ももを見ていた私を見ていたのだ。
 思わず私は「こんばんは」と声をかけた。豚女は脅えた目をウルウルさせながら小さくコクンと頭を下げ、それと同時に弛んでいた太ももをピタリと閉じた。
 そのオドオドしさが更に私の変態性欲を掻き乱した。脅えながら股を閉じるその仕草は明らかにMだった。
 デブでブスでバカでだらしないM女。客にチェンジを告げられ、会社に怒鳴られ、行き場を無くした風俗嬢。
 そんな惨めな女に、私は特殊なエロスを感じた。
 例えばこれが、明け方の歌舞伎町の路上や、深夜の道玄坂の風俗案内所といった場所だったなら、きっとここまでのエロスは感じなかったはずだ。これは、地方のビジネスホテルのロビーという薄寂れたシチュエーションが、私をそう感じさせていたのだ。
 因みに私は、新宿の高層ホテルの最上階で、藤原紀香をヌルヌルと抱くよりも、田んぼの隅の農機具小屋で、汗臭い柴田理恵と恥垢だらけの生殖器を擦り合わせる方を選ぶ変態だ。

 豚女は、項垂れたままチラチラと私を見ていた。油っぽい黒髪の隙間から覗くその目には、貪よりとした陰のオーラが漂い、汲み取り便所の底で身を潜めているカマドウマを連想させた。
 そんな豚女に、私は問答無用の鋭い視線を向けていた。ピタリと張り付く太ももをジッと睨みながら、無言の眼力で「股を開きなさい」と念力を送っていた。
 すると、まるでその念力が通じたかのようにその股が一瞬弛み、再び白いパンティーが顔を出した。
 サッと視線を上げると、豚女は脅える目で私を見つめながら、何かを必死に訴えていた。私はその目をキッと睨み返した。そして単刀直入に「いくらですか?」と聞くと、豚女は蚊の泣くような小声で「六十分六千円です……」と答え、まるで獲物を見つけた獣のように、そのボテッと垂れた醜い唇をベロリと舐めたのだった。

 異様に安いデリヘルだと思った。関東辺りのデリヘルでは六十分一万五千円が相場であり、余程なババアでない限り一万円を切ることはまずなかった。
 田舎だからといって半額近くも安くなるものだろうかと不審に思っていると、豚女は私の目をソッと覗き込みながら、「お部屋に……行きますか?」と恐る恐る聞いてきた。

「いや……部屋には妻がいるんだ……」

 そう答えると、すかさず豚女はショーウィンドゥを覗き込み、点滅する赤信号を指差しながら、「この交差点の裏に宿がありますけど……」と呟いたのだった。

 一瞬、『宿』という言葉に心が動いた。
 昭和の高倉健の映画に出てきそうな裏寂れた漁村。舗装されていない湿っぽい裏路地にある廃墟のような木賃宿。二股ソケットの裸電球とブヨブヨに腐った古畳。窓の外では日本海が荒れ狂い、薄氷のような窓を常にカタカタと響かせている。
 そんな宿で、この醜い豚女をじっくり陵辱してみたいと思った。荒縄で縛った豚女を四つん這いにさせ、その不浄な陰部にあらゆる残酷な器具を駆使しては、この醜い豚女を猟奇的に犯しまくりたいと思った。

ウツボ129

 が、しかし時間がなかった。サウナの時間まであと三時間しかないため、その魅力的な宿を諦めざるを得なかった。
 だから私はその場でズボンを脱ぎ始めた。豚女は「えっ?」と驚きながら辺りをキョロキョロと見回し、「ここでですか?」と声を潜めた。
 そんな豚女を無視し、私は全裸になった。花柄のソファーに踏ん反り返りながら、既に勃起しているペニスを突き出すと、愕然とする豚女にそれをヒクヒクと突きつけながら、脱いだズボンのポケットから財布を取り出した。そして意地悪く豚女を睨みつけると、「お前みたいな豚は、ここで十分でしょ?」と唇の端をニヤリと歪ませ、薄い財布をパタパタと振ってみせたのだった。

 豚女は、顔を引き攣らせたまま俯いていた。この女は、見た目は変態豚女だったが、しかしその内面は意外にウブなのかも知れなかった。
 そう思うと、更に私はこの豚女に欲情を覚えた。この惨めな風俗女に、これでもかというくらいの羞恥を与え、その屈辱と快楽によって、泣きながら悶えさせてみたいという、そんな異常な願望を抱いた。
 私は財布から六千円を抜き取った。どうあっても客を取らなければならないという今の彼女の状況を知った上で、それを傲慢にパサパサと振りながら、「どうすんだ豚?」と女の顔を覗き込んだ。
 項垂れた豚女は、バサリと垂れた黒髪の中で下唇を噛んでいた。必死に何かと葛藤していたようだったが、しかし、金を見せられるなりその葛藤は脆くも消え、力んでいた肩からスーッと力が抜けたのだった。

 豚女はゆっくりと立ち上がった。その醜い体を小熊のようにノソノソさせながら私の横にソッと腰を下ろした。一瞬、女のその黒いTシャツから古い油のような匂いがした。
「夕飯は天ぷらか?」と聞きながら、どっぷりと肉付きの良い乳をぐにゃりと鷲掴みにすると、豚女はソッと目を伏せながら「ハムカツです……」と答えた。

「ハムカツなんか食わす店があるのか?」

 そう薄ら笑いを浮かべると、豚女は「いえ……」と小さく首を振りながら、出勤する前、自宅のアパートで子供達に揚げてやったのだと告げた。

 以前私は、駅前の雑居ビルの中にある『凡年堂』という古本屋で、昭和のトルコ風呂経営で莫大な富を得たという社長のビジネス書を立ち読みしたことがあった。その本の中で社長は、『風俗嬢は、客に所帯じみた話しを絶対にしてはならない』と書いていた。それは、そんな話を聞かされた客は興奮が冷めてしまうからという意味であり、この業界では、風俗嬢による、持病、借金、家族についての話は『三大タブー』とされていると書いてあった。
 となると、この田舎の風俗嬢は、そのタブーをいとも簡単に破って見せた。しかもそれは、出勤前に自宅のアパートで子供達にハムカツを揚げてやったなどという、あまりにもリアルな貧乏くさい話であり、プレイ前にそんな話を聞かされれば、プレイ中、ハムカツに食らいつく幼い子供達や、ボロボロに朽ち果てた二階建てアパートなどがチラチラと頭に浮かんでは、その罪悪感から気分もペニスも萎えてしまうに違いなかった。

ウツボ130

 確かに、普通の客からすれば、このハムカツ話は、出てきた風俗嬢が母親に似ていたというくらい大きなダメージに違いなかった。
 が、しかし、私は異常な客だった。逆に、そんなハムカツ話を興奮材料とし、泣き叫ぶ子供達の前で母親を陵辱したいなどと想像してしまうほどの変態だった。
 だから私は、敢えてこの時、その子供達の名前を聞いた。豚女はもじもじしながらも、「女の子が『愛』で……男の子が『勇気』です……」と答えた。
 どうせ無残なキラキラネームだろうと思っていたが、意外にもその名前は古風だった。しかし、すぐにその名前がアンパンマンの歌だという事に気付くと、所詮こんな女の子供はハムカツレベルなんだと悲しくなり、聞かなければよかったと後悔した。

 いつの間にか豚女の手が私の股間に伸びていた。そのヒクヒクと脈を打つペニスをがっしりと握り締め、慣れた手つきでシコシコとシゴいていた。
 私はまだ六千円を握ったままだった。本来なら風俗は前金のはずなのだが、しかし豚女は、その金を受け取らないままシコシコと手コキを始めていた。

ウツボ131

 そんな私のペニスは汚れていた。今日だけでも、数え切れないほど射精していた私だったが、しかし一度もそこを洗ってはいなかった。どす黒い皮が上下する度に、白くドロドロとしたカスが亀頭へと押し出され、それがカリ首の周りで泡状となりヘドロのようにヌメっていた。
 私は、そのタプンっと垂れた乳をムニムニと揉みながら、まるで職人のようにせっせとペニスをシゴいている豚女に「歳はいくつだ?」と聞いた。
 豚女は手首を上下させながらも、カリ首に溜まったヘドロを小刻みに指で救い取っていた。そして、溜まったそれを素早く亀頭に塗り込み、そこに、クチュ、クチュ、と卑猥な音を立て始めると、恐る恐る私の顔を見ながら「三十五です」と答えた。
 すかさず私は、乳を掴んでいた手を豚女の首に移動させた。そのマフラーのように首に巻き付いている二重アゴをムンズと掴みながら、「お前じゃない、そのハムカツ食ってた子供だよ」と怒鳴り、摘んでいたアゴ肉を思い切り引っ張ってやった。
 豚女は、サザエに耳を引っ張られているカツオのように「イタタタッ」と顔を顰めると、そのまま私の太ももの上にバタッと倒れた。そんな豚女の目の前には、白濁のカスにまみれたペニスが、ヌッと天を貫いていた。
 豚女は、そのままハァハァと荒い息を吐きながら、私の太ももを舐め始めた。そして再びペニスを上下させながら、「愛が五歳で、勇気が二歳です……」とポツリと呟き、その舌の先で陰毛をカサカサと鳴らした。

「五歳と二歳か……今、誰が面倒見てるんだ?」

 そう聞きながら豚女の後頭部を押し、早くこれを口に含めと言わんばかりに、亀頭の先を豚女の唇にツンツンと押し付けた。しかし豚女は、「旦那です」と答えながら、それでもそれをしゃぶろうとはしなかった。顔の位置をソッとずらし、太ももに舌先をチロチロと動かしていた。

「旦那の仕事は」

「……無職です……」

「旦那は、お前がこんな仕事をしてることを知ってるのか?」

 豚女は小さく首を振り、一瞬躊躇いながらも、「旦那には……コンパニオンをしてると嘘をついてます……」と答えた。

 その言葉を聞いた瞬間、猛烈な興奮がムラムラと湧き出してきた。
 デブでブスでバカな豚女。あまりの醜さから、客に追い返された惨めなデリヘル嬢。そんな彼女にも、旦那と幼い子供がいた。旦那は、まさか自分の妻が、ここまでバカにされながらも他人男の性器をしゃぶっているとは夢にも思っていないだろう。その子供達も、自分の母親が、ここまで悲惨な目に遭わされながらも、見ず知らずのおじさん達のチンチンを舐めている事など夢にも思っていないだろう。
 この豚女のそんな背景を考えると、私は居ても立っても居られない性的興奮が湧き上がり、クラクラと激しい目眩に襲われた。そんな悲惨な家庭の、そんな哀れな旦那になってみたいと思いながら、異常な欲望をドロドロと渦巻かせていた。
 興奮する私は、声を震わせながら「早くしゃぶれ」と、豚女の後頭部を強く押した。しかし豚女は、またしても顔をずらした。唇に突き刺さる肉棒を上手く躱しながらソッと私の目を見つめ、「尺八だと五千円追加になりますけど……」と恐る恐る呟いた。

 私は素直に驚いた。だからこいつは、なかなかチンポを舐めなかったのか……と、そこで初めて、この低脳女の幼稚な策略を理解した。
 田舎だと思って舐めていた。歌舞伎町じゃああるまいし、まさかこんな田舎のデリヘルで竹の子剥ぎをされるとは思ってもいなかった。
 そう驚きながらも、しかし私は、逆に「よし」と思った。それならそれで、こちらも徹底的に楽しませてもらうぞと、断然闘志が湧いてきたのだ。

 黙って財布の中から一万円札を取り出した。持っていた六千円と足して合計一万六千円を豚女に突き出し、「これで本番まで頼む」と言うと、豚女は貪欲な形相を浮かべながらも、それでも一応マニュアル通りに「本番行為は……」と躊躇うふりをした。
 こいつはアホか、と思いながらも、しかし、そのアホさ加減が面白くてたまらなかった。私は更に財布の中から一万円を取り出し、「これでもダメかね」と笑いながら、それを黒い御影石の床に投げ捨てた。
 一万円札は紙飛行機のようにスッと飛んだ。そのままソファーの下へと滑り込むと、それを目で追っていた豚女はすかさずソファーから飛び降り、慌ててソファーの下に手を突っ込んだ。
 そこから一万円を摘み出した豚女は、溢れ出る欲望を必死に堪えながら、わざとらしい小声で「わかりました……」と呟いた。その瞬間、何故か突然、薄汚い子供達が必死にハムカツに喰らい付いているシーンが頭に浮かび、思わず私は、床に跪いていた豚女の右肩を蹴飛ばしたのだった。

(つづく)

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