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オタクの穴1

2013/06/13 Thu 00:02

 湿気を含んだ生温い六月の風が頬を撫でた。
 柳森神社の角から歩道橋を上って行くと、頭上を通る高架橋がドゴンドゴンっと唸った。その音は階段を登るにつれ激しくなり、神田川の真上に差し掛かる頃には凄まじい轟音となって襲い掛かってきた。
 歩道橋を歩く人々が一斉に肩を竦めた。新幹線の威力は、乗客には全く感じられないだろうが、しかしその真下を歩く者たちにとっては震度六強に値した。
 下に神田川、上に新幹線。そんな特殊な歩道橋を出ると、そこには更に特殊な光景が広がっていた。メイド服を着た女の子たちが、くたびれたサラリーマン達に怪しげなチラシを配っている。
 雑踏を潜り抜けながらルノアール前の横断歩道を渡った。自販機の角を曲がると、そこは、人、人、人、で溢れかえっていた。そんな通りの突き当たりには、『秋葉原駅』という文字がぼんやりと浮かんでいたのだった。

 三杉彩乃は、いつもこの通りを抜けてお店に出勤していた。
 くだらない店だった。客もスタッフもバカばっかりのコスチュームカフェだった。
 それでも彩乃はお金のために頑張った。気違いじみた挨拶や幼稚なポーズなど死ぬほど恥ずかしかったが、それでも彩乃は必死にバカのフリをして働いていた。
 そんな店の常連に、益岡と名乗るアニメオタクがいた。
 彩乃が、大好きなアニメのヒロインに似ているからと言い、時給二万円でコスチューム撮影をさせて欲しいと必死に口説いてきた。
 金が必要だった彩乃は、二つ返事でその話に乗った。
 そして、さっそくその日のうちに、指定された益岡のマンションへと向かったのだった。

 そこは、マンションというよりもアパートと呼ぶに相応しい、古くて汚い二階建ての建物だった。
 益岡は、本当に彩乃が来るとは思っていなかったらしく、ドアを開けるなり、「ウッソォー、マジですかー」とオカマのように叫びながら嬉しそうに何度も飛び跳ねていた。

 その部屋は、四畳半ほどの玄関兼用台所と、奥に八畳程度の古びた和室があるだけだった。
 畳の上にベッドとPCデスクが置かれ、その壁一面にはアニメキャラクターのポスターがびっしりと張り巡らされていた。
 彩乃は、とりあえずそのカビ臭い畳の上に座った。すると、陽の当たらない台所で、ペットボトルの『午後の紅茶』をグラスに注いでいた益岡が、「あっ、座布団ありませんから、ベッドに座ってください」と言った。その『午後の紅茶』は明らかに飲みかけだった。

 それは、いかにも通販で売っていそうな安物のベッドだった。カバーが付いていない枕は、涎や顔の油で所々が黄ばんでおり、そこからは中年男特有の頭皮の匂いがムンムンと漂っていた。
 その男は三四歳だった。この間まで引越し会社で働いていたらしいが、つい先日、突然理由もなく解雇され、現在は無職らしい。
 ひょろひょろに痩せた貧乏くさい男だったが、目だけはギラギラと輝き、まるで獲物を狙うカマキリのように鋭かった。笑っているのか怒っているのかわからない表情をしており、話をしている最中も常に彩乃から目を逸らしていた。
 当然、独身だった。今まで女性とは一人も付き合ったことがないらしく、「三次元の女は面倒臭いですから……」などと深刻そうに言いながら、残った午後の紅茶をゴクリとラッパ飲みした。
 そして、そのボサボサの髪をガリガリと搔き毟りながら、「だから僕の恋人はミルクンピューラなんです」と、そのアニメキャラが映るPCの画面を恥ずかしそうに見つめると、強烈な出っ歯をロバのように剥き出し、ウヒウヒと笑い出したのだった。

 そのミクルンピューラというアニメのキャラクターは、ピンクの髪にピンクのドレスを着たお姫様のような女の子だった。やたらと胸が大きく、ミニスカートからはみ出した白いパンツの股間には一本の縦線が食い込んでいるという、明らかに危ない人のためのアニメだった。
 彩乃は、そんなミクルンピューラをソッと横目で見ながら、これのどこが自分に似ているのかさっぱりわからなかった。強いて言うならその大きなオッパイだけであり、顔も髪型も全然似ていないと思った。
 ウヒウヒという不気味な笑いを部屋に響かせながら、益岡は飲み干した午後の紅茶のペットボトルを屑篭の中に投げ捨てた。そして押入れの襖をザザッと開けると、そこからダンボールを一つ取り出し、「さてさて、それではまずはこれに着替えてもらいましょうかね」とそれを彩乃の足元に置いた。
 その中には、テラテラとしたサテン生地のドレスやピンクのハイヒール、そして大きなメイクセットが綺麗に並べられていた。益岡は表情を高揚させながら、それら一つ一つを取り出すと、その中から白いパンティーを摘みあげ、突然「今日の下着は何色ですか?」と聞いてきた。
 彩乃は首を小さく傾けながら、「確か……ピンクだったと思いますけど……」と答えた。すると益岡は「チッ」と舌打ちした。「それNGです。ミクルンは白い下着しか穿きませんから。これジョーシキですから」と、何やら彩乃を責めるかのように強い口調で言うと、「下着もこれに履き替えてください」と、その摘み上げた白い下着を彩乃に渡したのだった。

 唖然としながらそれを見つめていると、益岡は素早くベッドを降り、ミクルンのフィギアが大量に並べてあるカラーボックスの前にしゃがんだ。そして何やらそこをゴソゴソと漁りながら、カラーボックスの裏から等身大の鏡を引きずり出すと、「鏡はここにありますから」と背後の彩乃に振り返った。
 そのまま益岡は台所へと向かった。「着替えてる間、僕は外の廊下で待ってますので、もしメイクの事とかでわからないことがありましたら遠慮なく呼んでください」と言いながら、玄関の靴を履き始めた。
 玄関ドアが開かれると、午後の日差しがパッと注ぎ込み、薄暗い部屋に浮遊している埃をキラキラと輝かせた。スマホを弄りながら外に出ようとした益岡だったが、急に何かを思い出したかのように「あっ、それから……」と足を止めた。
「ミクルンは基本的にブラジャーは付けませんから、ブラジャーはNGでお願いしますね」
 益岡はスマホの画面を見つめたままそうボソリと呟いた。そしてそのままスマホに指を走らせながら、ヨロヨロと外に出て行ったのだった。

 玄関のドアが閉まるなり、一瞬にして光と音が遮断された。
 シーンと静まり返った部屋にポツンと一人取り残された彩乃は、改めてこの三十男の部屋とは思えない幼稚な部屋を見回しながら静かに息を吐いた。
 壁だけでなく天井一面にまで張り巡らされたアニメのポスターは、この日当たりの悪い老朽化した和室を、より一層不気味にさせていた。
 そんなミクルンピューラは、ポスターやフィギアだけでなく、部屋の至る所に潜んでいた。スリッパ、マウスパッド、マグカップ、時計。そして何よりも薄気味悪かったのがベッドと壁の隙間に押し込められていた抱き枕で、そこにプリントされたミクルンの口と股間には、明らかにそれとわかる黄色いシミが点々と付着していた。
 しかし、それよりも更に驚かされたのは、その抱き枕の裏面を見た時だった。裏面にプリントされているミクルンピューラは全裸だった。幼い顔には似つかなぬ豊満なおっぱいをタプンっと突き出し、ノーパンで体育座りをしながら顔を横に向けて喘いでいた。
 そのプリントも薄気味悪かったが、しかしそれよりも彩乃を驚愕させたのは、そんなミクルンピューラの股間に突き刺さっていたオナホールだった。
 それは、アダルトグッズのサイトでよく目にする肌色のシリコン筒で、断面は女性器がリアルに型取られ、奥深い穴の表面は歪にデコボコしていた。
 それを目にした彩乃は、夜な夜なこの穴の中にペニスをピストンさせている男の姿を想像した。そしてその筒に生臭い精液をドクドクと中出ししながら薄気味悪く身悶えているシーンを思い浮かべ、深い息を胸底から吐き出した。
 これが普通の女なら、この時点で逃げ出している事だろう。しかし彩乃は違った。彩乃はもはや普通の女ではなかった。
 好奇心に駆られた彩乃は、そのリアルな断面に恐る恐る指を伸ばし、型取られたクリトリスをソッと指先で撫でた。そして穴の中に指を入れると、そのデコボコの表面に指をムニムニと押し付けながら、そこにペニスが擦り付けられるシーンを頭に描いた。

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 いきなり激しい興奮がムラッと湧き上がった。気がつくと彩乃はその穴の中を犬のようにクンクンと嗅いでいた。
 そこにはゴム臭とローションの匂いと、そして仄かなイカ臭が漂っていた。そんな卑猥な匂いにクラクラと目眩を感じた彩乃は、迷うことなくその穴の中に舌を挿入していた。
 あの男は今までに体験した事のない部類の変態だった。あんな変態男に、もうすぐ自分のアソコもこうやって舐められるのだろうかと、そんな事を考えながら穴の中をピチャピチャと舐めていると、堪らなく陰部がジクジクと疼いてきた。
 ムラムラ感を募らせたまま再びベッドに座り直した。案の定、デニムのミニスカートから覗くピンクのパンティーには、じっとりと濡れた卑猥なシミが浮き出ていたのだった。

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 早く着替えて、あの変態男にズボズボされたい。
 敢えてそんな下品な表現をしながらその変態性欲を昂ぶらせた。
 急いでデニムのミニスカートのボタンを外した。そしてスカートを下ろそうとふと顔を上げると、真正面に置いてあるカラーボックスの中で一瞬何かが動いた気がした。
 デニムのミニスカートに指をかけたまま動きを止めた彩乃は、そのままそこにジッと目を凝らした。
 すると、無数に並んだフィギアの端に、なぜか一台のスマホが不自然に立てかけてある事に気付いた。
 しかもそのスマホは電源が入ったままだった。そしてその画面には、今、ベッドに腰掛けているリアルタイムの自分の姿が映し出されていたのだった。

 それは意図的に仕掛けられたものだった。あの男がもう一台のスマホを使い、テレビ電話によってこの部屋を盗撮しているのだ。
 確かにあの男は、部屋を出て行く前、カラーボックスの前でゴソゴソしていた。きっとあれは、あそこにスマホをセットしていたのだ。
 そう気づくなり、彩乃の背中に冷たいものがゾクっと走った。あの抱き枕のオナホールを舐めているシーンを見られていたのかと思うと、凄まじい羞恥に襲われ、ベッドに腰掛けていた膝がガクガクと震えてきた。
 しかし、そんな羞恥心は一瞬にして快楽へと変わった。あの変態行為が覗かれていたというのは、マゾヒストな彩乃にとって性的興奮の何物でもなかったのだ。
 ムラムラと湧き上がる興奮にクラクラと目眩を感じながら、彩乃はそのスマホからソッと目を逸らした。覗かれているという行為に欲情を覚えた彩乃は、それに気づかないふりをしたまま着替えをしようと思ったのだ。
 スマホのカメラに向かってパーカーのジッパーを下ろした。今にも溢れ出しそうなその豊満な乳肉は、薄ピンクのブラジャーに吊り下げられていた。ドキドキしながらブラジャーに手をかけると、その二つの巨大な乳肉がフルルンっと揺れた。
 この揺れる乳肉をあの男も見ているのだろうかと思うと、異様な興奮が次から次へと湧き上がってきた。恥ずかしいと思えば思うほどに、見られたいという気持ちが高ぶり、半開きの唇から自然に熱い息が漏れた。

(見てください……私を見て勃起してください……)

 そう頭の中で呟きながら震える指でブラジャーをずらした。そこから溢れた柔らかい乳肉が、まるで巨大な水風船がバウンドするかのようにタプンっと跳ね、その全てをそこに晒した。

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 踊る乳肉に合わせ彩乃の呼吸も荒くなった。今頃あの男は、うまくいったぞと細く微笑みながらスマホを見ているのかと思うと、彩乃の被虐心はジクジクと刺激され、すぐにでも肉棒を挿入されたい気分に陥らされた。

 今まで彩乃は、自分は人よりもスケベだということを自覚していた。しかし、今こうしてこの状況で欲情している自分を客観的に見て、やっと気づいた。自分はスケベなどという幼稚なレベルではなく、もはや異常者並みの変態レベルに達しているという事を。

 そのボテッと垂れた巨大な乳肉を両手に乗せ、まるでパン生地のようにポテンポテンっと捏ねた。右手で右乳の乳首を転がし、左手で左乳を持ち上げながらその乳首をチロチロと舐めた。この変態行為が男に見られていると思うと、乳首を転がしていた指は自然に股間へと滑り降りて行った。
 もはやクロッチはハチミツに浸したかのようにヌルヌルに湿っていた。そこに指を滑らせながら腰の位置を微妙に移動させ、股間をスマホに向けた。
 真っ白な太ももに挟まれた薄ピンクのパンティーが画面に映っていた。今これを見ている男は、きっと競走馬のように鼻息を荒くしながら歓喜しているはずだと思うと、もっと男を興奮させてやりたいという欲望に駆られた。
 小指と薬指でクロッチをずらすと、テラテラと濡れ輝くワレメが姿を現した。そこに指を這わすと、まるで牛の涎のような濃厚な汁が無数の糸を引き、ピチャっといやらしい音を立てたのだった。

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 このいやらしい音さえも男は聞いているのだと思うと、そこに這わせた指を動かさずにはいられなかった。
(見ないで……恥ずかしいから見ないで……)と、矛盾した被虐願望を抱きながら、グロテスクなワレメにヌルヌルと指を滑らせ、もう片方の手でミカンの粒のようなクリトリスをキュンキュンと摘んだ。
 熱い息がハァハァと漏れた。腰が自然にカクカクと動き、太ももがヒクヒクと痙攣し始めた。
(このままイッてしまいたい……)
 そう気が遠くなった瞬間、いきなり玄関ドアがコンコンっとノックされ、一瞬にして彩乃は現実へと引き戻された。

「あのぅ……まだでしょうか……」

 男のその声に、彩乃はサッと股を閉じた。そして慌ててパーカーのジッパーを締めながら「まだです」と答えると、男は、「その衣装、結構複雑でしょ……僕、手伝いますよ……」と呟き、彩乃の返事を聞かないまま、いきなりそのドアを開けた。

 午後の日差しが薄暗い部屋にパッと注ぎ込んだ。逆光に照らされた男のシルエットが玄関に浮かび、バタンッとドアが閉まる音が響いた。
 彩乃は呆然としていた。半分しか閉まっていないジッパーから真っ白な乳肉をはみ出したまま、身動きひとつせず固まっていた。

「ミンクルはね、衣装もメイクも複雑なんですよ……だからミンクルのコスプレする人って少ないんです……」

 そう言いながら男は部屋に入ってきた。カマキリのような鋭い目を光らせ、薄い唇を不敵に半分歪ませながら、固まる彩乃に向かってやって来た。
 そんな男の手にはスマホが握られていた。そして男のその股間には、ヘソに向かって伸びる細長い膨らみがくっきりと浮かび上がっていたのだった。

(つづく)

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