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オタクの穴3

2013/06/13 Thu 00:02

 朝から鳴りっぱなしのゲーム音がピタリと止まると、不意に窓の外から、「バックします、バックします」という宅配便らしきトラックのアナウンスが聞こえてきた。
 ベッドでゲームのコントローラーを握っていた益岡が、「早くしてよ、十五分の遅刻だよ」と言いながら、床でキャリーバッグに衣装を詰め込んでいる彩乃の背中を足の爪先でツンッと突いた。
 よろめく彩乃は、「ちょっと待ってよ」と言いながら、パンパンのバッグの中に白いブーツを押し込むと、「だって、急にマラッシュの衣装に変更だなんって言うんだもん……」と、その蓋を無理やり閉めた。
 ふふふ、っと笑う益岡は、「青木君は異端児だからね、ヒロインよりもヒールが好きなんですよ」と薄気味悪く呟いた。
 再び益岡がゲームのスイッチを入れると、部屋中に電子音が響き、いつもと同じ空気が部屋に流れた。
 台所の安っぽいフローリングにキャリーバッグをゴロゴロと鳴らしながら玄関のドアを開けようとすると、背後で益岡が、コントローラーをピコピコさせながら「ねぇ」と呼び止めた。

「青木君ってのはね、彼女いない歴三十五年の素人童貞なんですよ。常にすっごく溜まってる人だから、きっとキミの胸とかお尻とか色々触ってくると思うけど、絶対にエッチだけはさせないでよね……」

 益岡は、テレビ画面をジッと見つめたまま言った。「わかってる」と呟きながらドアを開けた。午前十時の強烈な直射日光が、埃にまみれた廊下を爛々と照らしていた。「信じてるから」と呟く益岡の言葉を背後にドアを閉めた。

 クラックが無数に走るコンクリートの廊下にキャリーバッグを滑らせ、赤サビだらけの縞鋼板の階段を、バッグを担ぎながら一歩一歩慎重に下りた。アパートの前の細い路地の角で、さっきの宅配トラックが立ち往生していた。「右に曲がります、右に曲がります」と執拗に警告を促しながらも、完全にその細い角で身動きできなくなっていた。
 子安駅から電車に乗った。鶴見駅で降りて東口に出た。待ち合わせの横浜銀行へとキャリーバッグをガラガラ引っ張っていくと、銀行横の高架橋の下で、ハザードを点滅させている白いワンボックスカーが見えた。
 きっとこの車だと思いながら、恐る恐る助手席の窓を覗いた。いかにもオタクっぽい薄汚い男が、運転席でスマホを弄りながらマックシェイクを啜っていた。
 コンコンと窓をノックすると、一瞬ビクンっと跳ね起きた男は、慌てて助手席の窓を開けた。
「青木さんですか?」と聞くと、男は「うん」と小さく頷きながら助手席のドアを開けた。そしてその助手席に置いてあったマックの袋を乱暴に後部座席へと放り投げながら、「荷物は後ろに積んで」と、唇の端を歪めて笑ったのだった。


 一ヶ月前のあの日、彩乃は初めて会った益岡と翌朝の九時までセックスをした。
 ミンクルの衣装は、初期、中期、後期の三パターンに分かれており、おまけに必殺技によって変身する衣装が異なっていたため、ネタは尽きることがなく、各衣装に着替える度に彩乃はセックスを求められていたのだった。
 その翌日も益岡に呼び出された。そして同じように何度も衣装を着替えさせられながら明け方までセックスした。そしてその日の帰り際、突然益岡からバイトの話を持ちかけられた。

「簡単なバイトです。コスチュームを着て撮影されるだけでいいんです。それだけで一時間三千円です。しかも、お客はみんな僕の知り合いばかりですから安心です。どうです、いい話でしょ、やってみませんか?」
 
 そう言いながら益岡は、「ミンクルにそっくりなキミなら、軽く二百万くらいは稼げますよ」と自信ありげに笑った。
 二百万円。その数字が彩乃の頭に刷り込まれた。
 その時の彩乃は、今すぐにでも家を出たかった。二百万あればこの町を出れると思った。自分の過去を誰も知らない町で、小さなマンションを借りてひっそりと暮らすことができると思った。
 だから彩乃は益岡のその話に飛びついた。すると益岡は、『ミンクル彩(18)・個人撮影会・一時間五千円・お申し込みは益岡まで』と書いたメールを作成し、コスプレした彩乃の画像と共に次々と知り合いに送り始めた。
 いつの間にか彩乃の芸名は、『ミンクル彩』と決められていた。そしてその差額の二千円についても、「マネージメントとして僕が貰うから」と勝手に決められていたのだった。
 そんなメールを送って一時間も経たないうちに、益岡の携帯に六件のメールが届いた。それら全て『ミンクル彩』の撮影会の申し込みであり、さっそく益岡はそのスケジュールを立て始めた。
 最初の客は三十代の男だった。呼び出された長者町のマンションに一人で行くと、青い王子服に白いタイツを履いた肥満男が待っていた。
 それは、ミンクルに出てくるスパルト王子のコスプレだった。まるでグリム童話に出てくる悪いガマガエル王子のように醜かったが、しかし本人は至って真面目にそれを着ていた。
 部屋には、ミンクルのフィギアがショップのように並べられていた。そこには全裸のミンクルが亀甲縛りをされている物や、しゃがんで小便をしている物まであり、見るからに危険な匂いが漂っていた。
 そんなオタク親父だったが、しかし撮影中は意外にも紳士だった。その視線は常に彩乃の胸や太ももをいやらしく凝視していたが、それでもそこに触れたりすることは一度もなかった。
 しかし彩乃は知っていた。紳士面したこの男が、着替え室にカメラを仕掛けている事を。
 着替え室と言っても、それはリビングの隅の一角をピンクのカーテンで仕切っただけのお粗末な空間だった。そこでミンクルの衣装に着替えている時、ふと足元に置いてあったクズカゴの裏に、赤いランプが光っているのを発見した。最初は、携帯電話か何かを充電しているのだろうと思っていたが、しかし、ソックスを脱ごうと前屈みになった時、それがハンディカメラの録画ランプだということに気づいた。
 しかし彩乃は知らんぷりした。それに気づかないふりをして着替えを続けた。今更着替えを盗撮されたくらいで、ここまで汚れてしまった自分の過去が変わるわけでもないのだ。

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 そんなオタクばかりを毎日三人、コンスタントにこなしていた。このオタクたちは、常に一触即発の危険を漂わせていたが、しかし、絶対に乱暴はしてこなかった。
 内気なオタクたちは、トイレや着替え室にカメラを仕掛けたり、撮影中にこっそりパンチラを撮るのが関の山だった。堂々とセクハラしてくる者は一人もいなかったため、仕事としては随分と楽だった。
 一回の撮影会で最低二時間くらいかかっていた。一日二万円ほどの収入となり、一ヶ月もすると貯金通帳には五十万円ほどのお金が貯まっていた。
 当初の二百万円には程遠い数字だったが、しかし、今までそんな大金を目にしたこともなかった彩乃は、それで十分に満足していた。
 この調子で行けば、来月にはこの町から出られると思った彩乃は、その計画を益岡に話した。そして、残りの一ヶ月はできるだけ多くの客を紹介して欲しいと頼むと、益岡は、ミンクルの天敵であるパラノア大魔王の真似をしながら「了解した」と戯けて笑ったのだった。


 青木のマンションは、日陰の住宅街の中に埋もれるように建っていた。
 いかにもバブル期に建てられた豪華なマンションだったが、しかしその白い外壁タイルは水垢で黒ずみ、そこに掲げてある『入居者募集』の看板の文字も無残に禿げていた。
 ワンボックスカーは一階の駐車場に滑り込んだ。キュキュとタイヤを鳴らしながら何度かハンドルを切り、やっと301と書かれた狭いスペースに車を駐めた。
 助手席のドアを開けると、静まり返った駐車場にコポコポと奇妙な音が響いていた。見ると駐車場のすぐ脇には用水路が流れており、その奇妙な音はそこから聞こえてくる水音だった。

「その用水路にはね、春になるとボラが大量発生するんだ」

 そう呟きながら、青木は後部座席から彩乃のキャリーバッグを下ろした。そしてそれをそのままゴロゴロと引きずりながら歩き出したため、慌てて彩乃が「自分で持ちます」とキャリーバッグに手を伸ばそうとすると、青木は「それなら、先に行ってエレベーターのボタンを押しててよ」と笑いながら駐車場の奥を指差した。
「はい」と小さく返事をしながら彩乃は先に進んだ。静まり返った駐車場にヒールの踵がカツコツと響いた。ふと、あの細い用水路に大量発生したボラの大群が頭を過ぎり、歩きながら背筋がブルっと震えた。
 しかしそれは、決してボラの大群を想像したからではなかった。それは、背後からゴロゴロと迫ってくる青木が、ミニスカートから伸びる太ももの裏や尻や腰を視姦している気配を感じたため震えたものだった。

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 青木の部屋は普通の部屋だった。フィギアもポスターも何もなく、比較的すっきりしていた。
 着替えはここでして下さいと言われ脱衣場に案内された。甘いボディーソープの香りが漂い、棚のタオルは一枚一枚几帳面に畳まれていた。
 そこにカメラは見当たらなかった。今までのオタクたちは、最低でも着替え室とトイレにはカメラを仕掛けていた。この業界はそれが当たり前だった。暗黙の了解で、盗撮も料金に含まれているのだ。
 が、しかし、ここにはカメラが仕掛けられていなかった。
 彩乃は、今までのオタクとは何かが違うと違和感を感じながらも、マラッシュの衣装に着替えた。いつもと違うメイクをし、ゴールドのウィッグを付け、緑のリボンでサイドテールに縛った。
 最後はパンティーだった。ミクルンのライバルであるマラッシュは、性器も肛門もないミューテーションだったため、マラッシュのコスプレをする時はノーパンと決まっているのだ。
 ミニスカートの中に手を入れ、そのままパンティーを太ももまでスルッと下ろした。うぐいす色のパンティーの裏は、一部だけがテラテラと輝き、そこに透明の糸を引いていた。
 それは、青木の執拗なる視姦によって滲み出た恥汁だった。その粘りっけのある汁を目にした瞬間、今まで草食系のオタク達に生殺しにされていた陰部がズキンっと疼いたのだった。

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 部屋へ行くと、青木はソファーにポツンと座りながらスマホを弄っていた。そこにはカメラも照明も何も準備されておらず、今から撮影する気配は全く感じられなかった。
 彩乃に気づいた青木は、「あっ、どうぞ」と言いながら尻をずらしてソファーを空けた。恐る恐るそこに腰掛けると、「何か飲む?」と言いながらスマホをシャキンっと閉じた。
「いえ……」と首を振る彩乃の顔を青木は真正面から覗き込んだ。「かわいいね……だけど、やっぱりキミはマラッシュよりもミンクルに似てるね」などと呟きながら、右頭に縛ったサイドテールの髪を指で解き始めた。
 今までの空気ではなかった。状況が全く違っていた。今までのオタクはお世辞など口にする間もなくカメラのシャッターを切りまくっていたのだ。
 項垂れたまま黙っていた彩乃が、「あのぅ……」と言いながらソッと顔を上げた。真正面に迫る青木のギラギラした目に一瞬怯えながらも、「撮影は……」と聞いた。
「撮影?」と小首を傾げながら、青木は「僕にそんな趣味はないよ」と笑った。そして更に彩乃の顔に顔を近づけながら、「キミは撮影して欲しいの?」と囁き、彩乃の細い肩に腕を回してきたのだった。

 やっぱりいつもと違う。
 そう確信するなり、青木のカサカサの唇が彩乃の唇を塞いだ。そしてそのまま顔を斜めに向け、閉じていた彩乃の唇を舌でこじ開けてきた。
 生温い青木の舌が、口内でゆっくりと回転した。頭の中で(どういうこと?)と問いながらも、その滑らかに動き回る青木の舌に彩乃は舌を絡めてしまっていた。
 久しぶりの優しいキスは、瞬時に彩乃の脳を蕩けさせた。この一ヶ月、撮影が忙しくてセックスする暇がなかった。オタク達に着替えやトイレを盗撮され、性欲ばかりがムンムンと溜まっていたが、しかし、忙しさに駆られてそれを発散できずにいた。
 そんな溜まりに溜まっていた性欲は、艶かしい舌で唇をこじ開けられた事によって一気に溢れ出した。
 脳が乱れた彩乃は、舌で口内を掻き回されながら、「んんん……んんん……」と唸っていた。そしてここを触ってと言わんばかりに、自らノーパンの股を大きく開くと、衣装の上から胸を摩っていた青木の指が、まるでそこに吸い寄せられるようにスルスルと音を立てて下って行った。
 すると、静かに舌を抜いた青木が、割れ目に四本の指を滑らせながら「もうヌルヌルだね……」っと囁いた。

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 気がつくと彩乃は悲鳴をあげていた。四本の指が、プチャプチャと卑猥な音を立てて這い回る度に彩乃が悲鳴をあげるため、それはまるでギターを弾いているようだった。
 その指が、ヌルヌルと滑りながら穴をこじ開けてきた。縦に並んだ四本の指は、明らかに割れ目よりも大きかったが、それでもその指は縦に整列したまま前に進み、強引に穴の中に潜り込んできた。
 四本に並んだ指は、歪に窄められながらも、狭い穴の中をグニョグニョと蠢いた。それらが根元まで沈んでしまうと、二軍の親指が陰毛を掻き分け、そこに飛び出しているクリトリスに攻撃を仕掛けてきた。
 穴の中を搔き回す四本の指と、クリトリスを乱暴に転がし回る親指に、彩乃は、「はぁぁぁぁん」と大きな悲鳴をあげ、思わず腰を引いてしまった。
 すると指は、いとも簡単にヌルっと抜けた。青木は無数の糸を引く指を彩乃に見せつけた。そして「噂通りの変態だね」と微笑むと、そのままソファーを滑り降り、彩乃の真正面にしゃがみながらその両足をソファーの上にゆっくりと持ち上げた。
 M字に広げられた股の中を、青木はニヤニヤしながら見ていた。「尻の穴にまで垂れてるよ」などと羞恥を与えながら、そのヌルヌルに濡れた指先を割れ目に沿って上下させ、そこに卑猥な音をピチャピチャと立てた。

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 そうしながらも青木は、悶える彩乃に「おっぱい出してごらん」と囁いた。
 その青木の声が脳をぐるぐると回転させた。彩乃は目眩を感じながらもその命令に従い、そこに巨大な柔肉を波打たせた。

「おっきなおっぱい……乳首もビンビンに勃ってんじゃん」

 青木はニヤニヤ笑いながら、痛々しいまでに勃起した乳首を指でポロポロと転がした。すかさず彩乃が「あああん」と身を捩らせると、そんな彩乃を満足そうに見つめながら、「さすが超人気のミクルン彩だけあって感度いいね」と意味ありげに笑った。
 再び青木は両足を持ち上げた。ソファーの上でまんぐり返しのような体勢にしながら、改めて彩乃の目を見つめた。

「どうして欲しい? もうチンチン入れちゃう? それとも先に舐めて欲しい?」

 まるで子供に話しかけるような幼稚な口調でそう言いながら、青木は首を小さく傾げた。
 彩乃は、ハァハァと荒い息を吐きながらそんな青木を見下ろしていた。そして、「……舐めて……ください……」と途切れ途切れに答えると、剥き出しにした膣をヒクヒクさせながら腰を持ち上げた。
 ニヤリと笑った青木は、真っ赤な舌をゆっくりと突き出した。わざとそのシーンを彩乃に見せつけようと両手で尻を持ち上げると、そのドロドロにふやけた割れ目に舌をペタッと這わせた。
 ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃ、と、まるで猫がミルクを飲んでいるような音が部屋に響いた。その舌は、膣、クリトリス、小陰唇の隙間など、あらゆる部分を滑りまくり、キュッと窄んだ肛門までも丁寧に舐めていた。
 そうしながらも青木は上目遣いで彩乃を見つめ、時折、「これで四万なら安いもんだね」などと呟いた。
 そんな青木の呟く言葉を朦朧とする意識の中で聞きながら、彩乃はやっとこの状況を理解した。

(これは最初から……撮影会ではなく売春だったんだ……)

 益岡に売られたんだと思った。マンションを出る前、「絶対にエッチだけはさせないでよね」などと念を押していた益岡のわざとらしさに怒りを覚えた。
 しかし、だからと言って、今のこの状況から逃れたいというわけではなかった。
 陰部を舐められながら悶えている彩乃は、益岡に対する不信感を激しく募らせながらも、早く肉棒を入れて欲しいと思っていたのだった。

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(つづく)

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