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普通の妻2

2010/04/02 Fri 10:52

普通の妻2






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昭和の劇場を彷彿とさせる妙に埃臭いロビーは、そこが普通の映画館ではない事を物語っていた。
遊び慣れた者達なら、このタダならぬ雰囲気を瞬時に感じるだろうが、普通の主婦である京子にはその空気がまったく読み取れなかった。

「大人1枚・・・・」

窓口で気怠そうにテレビを見ていたおばさんに声を掛ける。

おばさんは口に菓子を放り込むと、バリッボリッと音を立てて菓子を噛み砕きながら京子から金を受け取った。

お釣りを貰う時、京子は何かおばさんに話し掛けなければと焦った。ポルノ映画館という、女性にとっては『恥ずかしい場所』に女1人で入場するのだ、その前に同じ女性としてこのおばさんと何かコミュニケーションを交わしておきたかったのである。
しかし、おばさんは無愛想にお釣りを京子に渡すと、またすぐにテレビに目をやった。
タイミングを逃してしまった京子は、そのまま釣り銭を小銭入れにチャリっと入れると、何も言葉を交わす事なくロビーを進んだのだった。



映画館の床はゴツゴツとしたコンクリートが剥き出しとなっており、そのどす黒い汚れ具合はかなりの年期が入っているように思えた。
ショーケースがひとつあるだけの小さな売店の前で、京子はボンヤリと立ち尽くしながらロビーに張り巡らされている卑猥なポスターを眺めていた。

埃だらけの万国旗が薄ら淋しくぶら下がっているその売店には、定番のチョコレートやスナック菓子に混じり、ピンクローターやバイブなどが所狭しと並んでいたが、しかし京子はそれに気付いていない。
もし、この時点でそれらの大人のおもちゃに気付いたなら、京子は顔を真っ赤にさせながら慌てて映画館を飛び出しただろうが、しかし今の京子には売店をゆっくり物色する余裕などなかった。

京子は目の前にある場内扉をジッと見つめていた。
場内から微かに聞こえて来る映画の音は、あきらかに「濡れ場」であろうと思われるアエギ声なのだ。
(今、入ったら目立ちそう・・・このエッチなシーンが終わってからこっそり入ろう・・・)
京子はそう思いながら扉の前でボンヤリと立っているが、しかしこの映画は『ドスケベ奥さん・極上アワビ水鉄砲』という実にヤケクソなタイトルのB級ポルノ映画で、それは限りなくAVに近いポルノ映画であるため、その8割りがいわゆる『濡れ場』でなのである。
待てど暮らせど女優のアエギ声は一向に止む事はなかった。

京子がそうやってボンヤリしていると、ロビーの隅のソファーに腰掛けていた中年の男が京子の背後に近付いて来た。
視野でそれを見て取れた京子は、近付いて来る男の気配に急にドキドキした。そう、今まで自分がノーパンだった事をすっかり忘れていたのである。

京子はミニスカートの尻付近にさりげなく後手を組み、扉の前に張ってある『とっつあん坊やのデカマラ大冒険』という、なんだか滅茶苦茶なタイトルのポスターを見上げた。

背後に煙草の匂いを感じた。その瞬間、「待ち合わせですか?」と声を掛けられた。

チラッと背後の男に目をやる京子。
男はウルトラマンの怪獣に出て来そうな尖った顔をしていた。

「・・・えぇ・・・」
京子は再びポスターに視線を戻しながら曖昧に答えた。

男は京子の背後でフーっ・・・と煙草の煙を吐いた。京子は背後から薄らと流れて来る白い煙を見つめながら、背後の男がミニスカートから伸びる素足を舐め回すように見ているのがなんとなくわかった。

「・・・出会い系ですか?」
男はそう言いながら、ソッと京子の隣に立った。

「・・・・・・・」
咄嗟に言葉が出なかった。妙にオドオドする京子。

「ここら辺の出会い系は危険ですよ。僕とお茶でも飲みませんか?」

男がそう言いながらカマキリのような大きな目玉をギョロリと動かした瞬間、京子は慌てて扉のドアを掴んでいた。
そして「中にツレがいますので・・・」とカマキリ男に小声で告げると、京子はそそくさと暗幕カーテンを掻き分けて暗闇の中へと入って行ったのだった。


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京子の目にいきなり飛び込んで来たのは、やたらと化粧の濃いオバさんが垂れた胸を上下に揺らしながら騎乗位で叫ぶ、卑猥なシーンだった。

真っ暗闇の箱の中。正面のスクリーンだけが爛々と輝き、あとは一面暗闇の世界だった。
スピーカーの音がやたらと籠っていた。最近のシャレた映画館とは違い、この映画館のスピーカーはまるでブラウン管テレビのボリュームを最大にした時のように音が割れていた。
京子は、そんなノイズ的な大音量を聞きながら、目が慣れるまでここに立っていようと思ったが、しかしさっきのカマキリ男が入って来たらすぐに見つかってしまうと思い、劇場の後のスペース、いわゆる「立ち見場」と呼ばれるスペースの隅に移動しようとした。

移動しようとして横を向いた京子は「ギョッ!」と目を疑った。
場内の客席はガラガラなのに、その「立ち見場」と呼ばれるスペースにはゾロゾロと大勢の人が立ち見しているのだ。
しかもその人達は全員、暗闇の中から京子をジッと見つめていた。
目が慣れていない京子は、その人達の表情が見えないために、その人達がどんな理由で京子をジッと見ているのかわからなかった。

普通の映画館でも途中で入ったりすると、皆からジロジロと見られる事がよくある。京子は「立ち見場」の人達が自分をジッと見ているのもそんな感覚だろうと安易に考えていたのだった。

京子は暗闇の中から視線を感じながらも、扉のすぐ横の壁にソッと寄り添った。
京子はスクリーンを見つめながらも、その立ち見場の人々の様子をこっそり伺っていた。

立ち見場には「非常口」と書いてあるミドリの看板と、「禁煙」と書かれた赤い看板が並んでいた。
しかし、禁煙と書かれているにも関わらず、立ち見場の暗闇には煙草の赤い火がポッポッと蛍のように点滅し、スクリーンから反射する光が煙草の煙をモウモウと輝かせていた。
そこに固まっている集団はあきらかに男達だった。男達は客席に座る事なくその場でしゃがんでいたり、客席に凭れ掛かったり、壁に凭れたりしながら、一言も言葉を発する事なく黙ってスクリーンを見つめているだけだった。
その光景は、映画を見るというより、場内の客席を監視しているような、そんな雰囲気だった。

そんな彼らを後からジッと観察していた京子は、どうして彼らがわざわざ立ち見場にいるのかが理解出来ない。中には、ビールケースの箱をわざわざ持ち込んではそこに腰掛けている男もいるのだ。
(なんか・・・変・・・)
その異様な雰囲気に圧倒されながらも、京子はとりあえずどこか客席に座ろうと場内をキョロキョロ見回した。

と、その時、京子の隣に立っていた男の肩がドンっと京子の肩にぶつかった。
「あっ、すみません・・・」と小声で謝りながら慌てて横を振り向いた京子の目に、とんでもない光景が飛び込んで来た。

暗闇の中で二人の男が異常に密着していた。一人の男はスーツを着たサラリーマン風の男で、もう一人の男は、なんとズボンを膝まで降ろしている状態で、暗闇の中にその男の白い素足がくっきりと浮き出ていた。

そんな2人の男は、向かい合ったまま無言で立ちすくんでいた。

とたんにワナワナとした恐怖が京子の全身を包み込む。

暗闇の中で、スーツ姿の男の右手がゴソゴソと動いていた。その手の動きに合わせてもう一人の男がクネクネと体をくねらせている。

(まさか・・・)と、京子が思った瞬間、スクリーンが夜のシーンから昼のシーンへとパッと変わり、その光の反射で場内が明るくなった。

立ち見場を照らすスクリーンの光は、その2人の行為を鮮明に映し出した。

亀頭のショッキングピンクが京子の目に飛び込んで来た。京子の予想通り、スーツの男はその男の剥き出しになったペニスをそっと摘み、慈しむかのように優しく丁寧に上下しているのだ。

「!・・・・・・・」
その光景を目撃してしまった京子は絶句した。いったい何が何だかわからなくなりとたんに頭の中が真っ白になった。

呆然とそれを見つめていた京子だったが、唯ならぬ視線にふと我に返った。ハッと気がつくと、なんとその立ち見場にいた男達が、ホモ行為を呆然と見つめていた京子の姿を見てはニヤニヤと笑っているのである。

とたんに恥ずかしくなった京子は、慌てて場内の客席へと小走りで逃げた。スクリーンから反射する光だけを頼りに狭い客席と客席の間をすり抜けながら、できるだけ「非常口」と書かれた看板に近い席を目指し腰を屈めながら進んだのだった。


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非常口に近い隅の客席に腰を下ろした京子は、後の立ち見場からの視線を感じながらもひとまずは落ち着いた。

それにしてもとんでもない映画館に来てしまった・・・
京子は、今更ながら勢いだけでこの映画館に入ってしまった事を後悔した。
しかし、客席にはチラホラと女性の姿も見える。
その女達が痴女などとは夢にも思っていない普通の妻・京子は、女性客がいるというただそれだけが唯一の救いだった。



上映している映画は実にくだらないものだった。内容まではわからないが、しかしその画面が異様に古臭い。画面に映るその風景は、まさしく「神田川」の時代なのだ。役者も見た事の無い役者ばかりだった。女のメイクが時代を物語っており、そのつけマツゲの長さはまるで若き日の和田アキ子だった。

この人達は本当にこんな映画を観たいのかしら・・・
京子はそう思いながら、後の立ち見場に群がる男達や、客席にチラホラといるカップルなどを不思議そうに眺めていた。

スクリーンにはハゲ頭の親父とツケマツゲの女の激しい性交が映し出されていた。
「あぁん・・・いゃあ~ん・・・」という、時代錯誤なアエギ声が場内に響き渡った。
最近の過激なAVに比べたらなんともお粗末な「濡れ場」のシーンだったが、しかし今の京子にはこんなお粗末なシーンでも刺激が強かった。


これほどまでに危険な目に遭いながらも、それでもセックスを諦められない京子は、そんなスクリーンをボンヤリと眺めながら、どうにかして元彼の和夫の新しい携帯番号を知る方法はないものかとアレコレ考えていた。

(ミツエに聞けばわかるかな・・・でも、ミツエはおしゃべりだし、私が和夫の携帯番号を聞いた事、みんなに話しそうだしな・・・・)

京子は、どうしても和夫に会いたかった。というか、今夜、どうしてもセックスがしたかったのだ。

スクリーンに映る映画は、何の興奮も呼び起こさない最低な映画だった。しかし、今の京子の心境はそんな最低な映画にさえ少しばかり刺激されている。
いや、正確には映画に刺激されているというより、この映画を観ている人達に刺激されていた。
というのも、京子の4列斜め前にいるカップルがなにやらモゾモゾと怪しい動きをしているからだ。

京子はスクリーンを見るフリをしながら、斜め前のカップルの動きをジッと観察していた。
女はかなり若そうだった。スクリーンの光に反射して見える女の髪は赤く染められていた。
その「少女」とも思われる女の隣には、その女の父親といってもいいくらいの中年親父が、少女の小さな肩をだらしなく抱いていた。

モゾモゾと動く2つの影。中年親父に抱かれている少女の肩がピクンと動く。
中年親父の左手の角度からして、少女のその肩の動きは中年親父が少女の股間に触れたからに違いないと京子は想像した。
中年親父のタバコ臭い指が少女の細い太ももを嫌らしく撫で回し、そしてパンティーの隙間からスルっと中に侵入する。少女のヌルヌルとしたワレメに中年親父の太い指が静かに埋まって行く・・・・
京子はそんな淫らな想像を頭に描きながら、右手を自分の太ももにソッと置いた。

幸い、京子が座っている座席の列には誰もいない。後の立ち見場の男達さえ気をつければ、ここでこっそりオナニーをしてもバレないのだ。

京子は2つの影を眺めては淫らな妄想を繰り返しながら、ミニスカートの中へゆっくりと手を忍ばせた。
京子の細く長い指に陰毛のモサモサ感が伝わって来た。ノーパンだったのは都合がいい。
後の男達に怪しまれないよう、ゆっくりと組んでいた足を降ろすと、微妙に股を開いた状態になった。
微かに開いた股の中心を目指し、少しずつ少しずつ指を進めては陰毛を掻き分けた。

ねちゃ・・・っとした感触が指先に触れた。いつもなら膣の中心だけが潤っているのに、今はノーパンで足を組んでいたせいか、膣全体に粘着力のあるネバネバした汁がベットリと付着していた。

やっぱり、オナニーをしていなかったせいでこんなに濡れるのかしら・・・・
京子は、今日一日アソコが濡れっぱなしだった事に気がついた。

京子は今まで自分が欲求不満だという自覚はまったくなかった。オナニーで濡れなくなったのは、オナニーという行為が淋しい行為だという事に自分自身が気付き始めたからだと思っていた。
しかし、今夜、ようやく自分が欲求不満だった事にはっきりと気付いた。
電車の正面に座る男にわざと下着を見せつけたり、ホームレスのペニスを思い出したり、別れた昔の男を呼び出そうとしたり、そしてこんな映画館に一人で入ってしまったり・・・・それらの事が、全て欲求不満から来ているものだと、今、こうして濡れた性器を触りながら気付かされたのだ。

私が今、こんな映画館でオナニーをしているのを夫が知ったら・・・あの人、どんな顔をするかしら・・・

京子はふいに夫を思い出した。
寛大で心が広くとっても優しい人。今頃は、1人ボンヤリとテレビを眺めながら晩酌している頃だろう。

あんな優しい人を裏切れない、裏切ってはいけない・・・・でも、もう我慢出来ないの・・・・・

京子は腰までミニスカートを静かに捲り上げると、後の立ち見場から客席を監視している男達に怪しまれないように、極力体を動かさないようゆっくりと股を開いた。
スクリーンから反射する光が、京子の開かれた股間を照らし、卑猥に緩むワレメをヌラヌラと妖艶に輝かせた。

斜め前の座席では、中年親父が強引に少女の肩を抱き寄せ、少女の頭を自分の股間へと押し込もうとしていた。斜め前の座席から赤い髪をした少女の頭がスっと消えると、その座席だけが微妙にグラグラと揺れていた。

京子の脳裏に、立ち見場で見たホモ男のテカテカと輝く亀頭が浮かんで来た。
今、すぐ斜め前の座席で、あのテカテカと輝いていた卑猥な亀頭を少女が口に含んでいるのだとそう思うと、京子は脳味噌がクラクラするほどの興奮を覚えた。

京子の指が、スクリーンの光に照らされるパックリと開かれた股間へと静かに伸びた。
そこはもう洪水のように大量の愛液で濡れていた。
後の男達の視線を気にしながらも、しかし京子の指はその意志に反して激しく動き出したのだった。


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何の前触れも無くいきなり映画が終わった。それまでスクリーンに映っていたハゲ親父とツケマツゲの女の性交シーンは途中でバツっ!という鈍い音を立てて突然消えた。
一瞬にして場内が真っ暗になる。
それは、どうやらフィルムを交換しているようだった。
普通の映画館では考えられない事だが、しかし場内の誰も何も騒がない所を見ると、この映画館ではこれが当たり前の事らしい。

スクリーンが消えた場内には、非常口の緑色の看板と禁煙の赤い看板だけが不気味にボンヤリと灯り、幻想的な空間を作り上げていた。そしてその幻想的な暗闇の中で、スナック菓子の袋の音だったり、ロビーに出て行く扉の音だったり、煙草の火を付けるライターの音など、人が蠢く音が微かに響いていた。

それまで後ろの男達の視線を気にしながら恐る恐るオナニーをしていた京子は、この暗闇を利用しない手は無かった。
両足を大胆に開くと、左の指でクリトリスを転がし、右手の人差し指を音を立てないようにゆっくりと膣の中へ挿入した。
ヌルヌルとした感触が京子の指の第二間接を通過する。膣の中はびっくりするくらい熱く、侵入して来た指を歓迎するかのように溢れ出した愛液は、京子の右手の甲までヌラヌラと濡らした。

人差し指で穴の中をグリグリと掻き回す。いつものオナニーのように指を激しくピストンさせたかったのだが、しかしそれではこの静まり返った場内に卑猥な音が響いてしまう。本当はピストンしたくて堪らない京子だったが、それを諦め、仕方なくもう一本の指を追加した。

二本の指でドロドロに濡れた膣を掻き回していた京子は、いつものオナニーよりも数倍感じていた。
やはり、この暗闇の中にまったくの見知らぬ他人が大勢蠢いているというシチュエーションが、京子の気持ちを高ぶらせていたのであろう。
膣から溢れる愛液を潤滑油にしながらクリトリスをヌルヌルと転がしていると、ふいに京子はイキそうになった。いつもこんなに早く絶頂を迎える事がなかった京子は、ふいに訪れた絶頂に戸惑いながらも、慌ててクリトリスから指を離した。
絶頂に達した時の「声」を気にしていたのだ。
そんな京子は、次の映画が始まり場内が大音量に包まれるまで我慢しようと、それ以上クリトリスには触れず、膣だけを重点的に弄る事にしたのだった。

しばらくすると、スクリーンからはまるでアナログレコードの針が飛ぶような「バツ!バツ!」という音が聞こえて来た。
カタカタカタ・・・・というフィルムが回り出すリズミカルな音が鳴り出し、スクリーンに①・・・②・・・③・・・というカウントダウンが映し出された。
いきなりジャーン!という大音量と共に墨字で殴り書きされた真っ赤なタイトルがスクリーンに映し出された。そのタイトルは「団地妻のイボ痔責め」という、なんともアナーキーでヤケクソなタイトルだった。

70年代的なサイケデリックなオープニング曲を聞きながら、京子は明るくなった場内をこっそり見回した。
斜め前の座席で淫らな行為をしていた中年親父と赤髪少女の姿はいつのまにか消えていた。
後の「立ち見場」に屯している男達はまだいるのだろうかと、京子は背伸びをするフリをしながらこっそり後を振り向こうとした、その時だった。

突然、すぐ右隣りの座席から「綺麗でしたよ」という男の声が飛び込んで来た。

「!・・・・・」
京子は隣の席にどっしりと座っている男に目を疑った。

(い、いつの間に!・・・・・・)

京子が愕然としながら男を見つめていると、男はニヤリと笑みを浮かべると、喰わえていた煙草の先にカチッ!とライターの火を灯らせた。

暗闇の中、ライターの明かりが男の顔を鮮明に浮かび上がらせた。
真っ黒なジャージに黒いキャップ帽を被った男はまだ20代だろうと思われる若い男だった。青年は、立ち見場で屯しているような薄汚い親父達とは違い清潔そうな青年だったが、しかしライターの明かりに一瞬照らされたその目はカミソリのように鋭く、京子の背筋を一瞬にして凍らすような、そんな冷たい目をしていた。

「続き・・・見せて下さいよ」
青年は、だらしなく開いたままの京子の膝元を見つめながらニヤリと笑った。

「はっ!」と我に返った京子は慌てて股を閉じる。
あまりの恥ずかしさにとたんに京子の顔は真っ赤になり、そしてあまりの恐怖に、京子の体は金縛りに遭ったかのように身動きひとつ出来なくなった。

(この人に・・・オナニーを見られていた・・・それも・・・こんな間近で・・・)
京子は俯いたまま、小刻みに震える自分の膝を見つめていた。

この場からどうやって逃げ出そうかと京子が考えていると、「大丈夫ですよ、乱暴しませんから。安心して下さい」という、妙に優しい口調で男が囁いた。

確かに、立ち見場で屯している親父達よりは、この青年の方が安心出来るとは思うが、しかしオナニーを見られていた以上、恥ずかしくてもうここにはいられない。
京子は小刻みに震える膝に力を入れて席を立とうとした。

「いいじゃないですか、そんなに慌てなくても・・・」
青年はそう言いながら京子の右手をギュッと掴んだ。
そしてすかさず「恥ずかしがらなくてもいいですよ、ここはみんなシテるんですから・・・」と笑う。

「・・・離して下さい・・・」
顔を伏せたまま京子が手を引こうとする。その手を更にギュッと強く握った青年は、「ほら、僕だって・・・ね?」と意味ありげに囁いた。

俯いていた京子は「ちらっ」と青年を見た。

そこには剥き出しにされた青年のペニスがスクリーンの明かりに照らされてドクドクと脈を打っていたのだった。



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青年のペニスは、夫のペニスよりもひとまわり大きかった。そして、魚が跳ねるようにピクピクと脈打つその元気の良さは、40を向かえようとしている夫のペニスよりも固そうだった。

目を背けようとするが、しかし京子は、久々に間近で見る若い男の男根からどうしても目が離せなくなってしまった。

「結構・・・いい形、してるでしょ?」
青年はそう言いながら京子の顔を覗き込んだ。
一瞬、青年と目が合った。京子は、真剣な目で青年のペニスを見ていたのを悟られまいと慌てて目を反らした。

青年は、そんな京子にふふふふっと笑うと、喰わえていた煙草を足下にポトッと落とし、打ちっぱなしのコンクリート床に煙草を踏みつけては暗闇の中に赤い火花を散らした。

「気にしないで続けて下さいよ・・・・僕もヤリますから・・・・」
青年はそう言うと、コリコリのペニスを5本の指でキュッと摘みリズミカルに上下し始めた。

『奥さん・・・本当はヤリとうてヤリとうてしょうがおまへんのやろ?なんも恥ずかしがらんでもええがな・・・』
スクリーンからダミ声の男のセリフが聞こえて来た。

『いや!やめて下さい!・・・私には、私には夫がいるのです!いや!あぁ!』
まるで時代劇のようなセリフが響く。

『夫がいるって・・・奥さんのココ、もうこんなに濡れてまんがな・・・それに、なんでんねんこの大っきなイボ痔は・・・綺麗な顔してからに、ホンマ、えげつないイボ痔ぶらさげてはりまんなぁ・・・』
スクリーンから聞こえるダミ声と共に、隣の座席からは、ジャージが擦れるシャカシャカという音が響いてきた。

「・・・どうしたんですか?さっきみたいに続けて下さいよ・・・僕、あなたのアレしてるところを見ながらイキたいなぁ・・・・」
青年はふふふふっと笑いながらそう言うと、ゴシゴシと力強くシゴくペニスを隣の京子に向けた。

京子は、他人のオナニーを見るのは初めてだった。昔、元彼の和夫がふざけてセンズリのマネをよくやっていたが、しかしこんなに真剣にペニスをシゴくのを見るのは生まれて初めてだった。
当然、夫はこんな事を京子の前では絶対にしなかった。夫のセックスはいたってノーマルで、それは、セックスを楽しむというよりは、「労働」をしているような、そんな素っ気ないセックスだ。
京子は青年のオナニーシーンを見つめながら、夫のあのつまらないセックスをふと思い出しては、私を欲求不満にしたのはきっと夫のセックスが原因なんだわ・・・と、自分を正当化し、そしてこのスリリングな青年の行為に段々と引き寄せられて行ったのであった。


青年はペニスを激しくシゴきながら、左手で握っていた京子の右手をゆっくりと自分の方へと引き寄せた。
そして、「あぁぁ・・・気持ちイイ・・・ほら、こんなに我慢汁が出てますよ・・・」などと囁きながら、京子の右手にペニスの先をグニョッと押し付けた。

亀頭の弾力性と共に、ネチャっとした冷たい感触が手の甲に広がった。
まったくの見ず知らずの男の性器に触れたという現実に、とたんに京子の胸は息苦しくなって来た。
青年は「ねぇ・・・握ってよ・・・」と甘えた声で囁きながら、京子の手の甲にビンビンに固くなったペニスを擦り付けて来た。
我慢出来なくなった京子の胸から、ハァ・・・ハァ・・・という息が漏れ始める。

「あっ、もしかして感じてる?僕のおちんちん触りながら感じてるんでしょ?・・・」
青年はいやらしい口調でそう囁きながら、閉じている京子の指を1本1本優しく開いた。
そして京子の手の平の中にペニスを置くと、また丁寧に1本1本指を閉じさせてはペニスを握らせたのだった。

青年は京子にペニスを握らせると、今度は京子の手首を掴み、ペニスを握っているその手を上下に動かした。
そして「あぁぁ・・・もっと激しくシコシコして・・・あぁぁ・・」と座席の上で身を捩らせる。

ハァハァと荒い息を洩らす京子も我慢出来なかった。
ついつい青年のペニスを握る指に力がこもる。

青年のペニスは夫のペニスとは段違いに太くて逞しかった。それに、まるで石のように固い。
(凄い・・・・・)
そう思いながら青年のペニスを、自らの意志で上下に動かし始めた時、青年は京子の手首からソッと手を離した。

クチュ、クチュ、クチュ・・・という卑猥な音が響いている。青年の尿道からはダラダラと透明の我慢汁が溢れ出し、ペニスを摩擦する京子の手の中で白く変色していた。

「あぁぁ・・・凄く気持ちイイよ・・・あぁぁ・・・もっと激しく・・・・」
青年は激しさをねだるかのように、腰を激しく上下させながら、京子が握る手の中でペニスをピストンさせた。

京子は青年のペニスにギュッと力を込めて握り直すと、白く変色した我慢汁を潤滑油にして激しく手首を上下させた。

「あっ・・・あっ・・・出ちゃいそうだ・・・・」
青年が京子の肩に顎を乗せ、京子のウナジに熱い息を吹き掛ける。

(射精するとこ・・・・見たい・・・・・)
京子はドキドキしながら、暗闇で激しく上下するペニスを見つめた。若い青年の精液がどれほどの勢いで飛び出すのか目を爛々と輝かせて見つめていた。

すると、いきなり青年が急変した。
「ねぇ・・・いいだろ・・・一発ヤらせてよ・・・」
青年は京子のミニスカートの中に手を押し込むと、あっという間に京子のビチョビチョに濡れている膣にニュッと指を挿入した。

「いや!」
京子は小さくそう叫ぶと、股間に押し入って来た青年の太い腕を両手で押さえる。

「ヌルヌルだって、ヌルヌル、アンタのオマンコ、ヌルヌルになってるって」
青年は真剣な目をしながらそう言うと、京子の体に覆い被さり首筋に唇を押し当てた。

「いやっ!」
京子は青年の体からスルリとすり抜けた。
青年は肘を付いていた座席の肘掛けから、まるで吉本新喜劇のようにズルッと滑った。

その隙に京子は慌てて座席を立ち上がると、中腰の姿勢のまま座席の通路を小走りにすり抜け、「非常口」と書かれた緑色の照明を目指した。
カツコツとヒールの音を立て、暗黒の立ち見場を通り過ぎようとした時、京子の目の前に黒い影が立ち塞がった。

その影は、4人、いや6人はいただろうか。スクリーンから反射する光に照らされた男達は不敵な笑みを浮かべながら、恐怖に顔を引き攣らせる京子をジッと見つめていたのだった。


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京子の行く手を塞ぐかのように、男達は非常口の前に陣取っていた。
非常口の暗幕の袖から伸びる男の白い手が、京子に向かって「おいで、おいで」と揺れていた。
とたんに京子の足は竦んだ。その男達の中に入って行く勇気は京子にはない。

京子は咄嗟に反対側の非常口へ行こうと座席列に入り込んだ。
座席の下に転がっていた空き缶に蹴躓きながら狭い座席列の通路を中腰で進む。
座席列を中間まで進んだ時、正面から男がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。その男の顔は京子を見つめたままニヤっと笑っている。
慌てて後を振り向くと、後からも不敵な笑顔を浮かべた男が迫って来ていた・・・・。
絶体絶命。
座席列の中間で挟み撃ちされてしまった京子は、恐怖のあまりそのまま座席にへたり込んでしまったのだった。



座席に座ったまま身動きもせずジッとしている京子の両隣に、まるで京子を挟み込むかのように2人の男が腰を下ろした。
京子が座った座席は最後列で、そのすぐ後は「立ち見場」と呼ばれる、不審な男達が屯していた場所だ。

「あんた、人妻か?」
右隣に座った男が、俯く京子の耳元にそう囁いた。

京子は恐怖のあまり俯いたまま下唇を噛んでいた。

「1人で映画見に来たんか?」
矢継ぎ早に左隣の男がそう質問しながら俯く京子の顔を覗き込んだ。

京子が答えないでいると、右隣の男が「旦那はどうしたの?」とワザと驚くような口調でそう言った。

スクリーンでは若い女が夜の公園のベンチで男にアソコを舐められていた。
そんなスクリーンを真面目に見ている者は、この劇場内には恐らく誰もいない。この映画館には違う目的を持った変態達が蠢いているのだ。
今、それに初めて気付いた京子は、調子に乗ってこんな映画館に入ってしまった事を激しく後悔していた。
普通の主婦なら普通の主婦らしく、大人しく家に帰って1人淋しく冷たいベッドで自分を慰めるべきだった。ストレスや欲求不満など、この恐怖に比べたら全然我慢出来るレベルのものだ。変な好奇心からこんな映画館に入ってしまったばっかりに、こんな恐ろしい目に遭うなんて・・・・・
京子は心の中でそう自分を戒めながら激しい後悔の念に捕われていた。

両側から矢継ぎ早に質問を受けながらも、京子は「立ち見場」から聞こえて来る男達のヒソヒソ声に耳を傾けていた。

「中根さん中根さん、どうします?参加しますか?」
何かを仕切っているらしい男のヒソヒソ声が、これから何が始まろうとしているのかと京子を不安に陥れる。

「じゃあ僕と、中根さんと村松さんとで参加しますので、あとの皆さんはギャラリーという事で・・・」
仕切っていた男がそう言うと、すぐに男達は嬉しそうに「ジャンケンポン!あいこでポン!」とジャンケンを始め、まるで子供のように戯れていた。

そのジャンケンが何を意味しているのか、たとえ普通の主婦だとて、そのくらい京子にも理解出来た。
あまりの恐怖に泣き叫びたい心境だったが、しかし、この暗闇の箱の中で逃げ場を失った京子は、もうどうする事もできなかったのだった。

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