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泥亀沼1

2011/11/25 Fri 12:10

    泥亀1

 あれは僕がまだ小学5年生の頃、ある晴れた日の昼下がりに吉村君たちと山の上にある広場で野球をやっていた時の出来事だ。
 山の上の広場というのは、学校の近くにある山の中腹にある大きな広場だった。
 日曜日にもなれば近所の工場の野球チームが練習をしていたが、それ以外は特に使われる事も無く、いつもほとんど人気の無い静まりかえった広場だった。

 その出来事があったのは、ポカポカとした春の陽気がとっても気持ちいい季節だった。爽やかな風に靡く樹木はひたすらに緑で、広場の隅には黄色いタンポポの花がわっと咲いていた、という光景を僕は今でもはっきりと覚えている。
 その時、僕はライトを守っていた。しかしピッチャーの鈴木君が優れているせいかほとんど球は飛んで来ない。
 ライトでポツンとしゃがんでいた僕は、広場の端の雑木林の中を散策するおじさんとおばさんをぼんやりと眺めていた。
 緑が輝く雑木林の小道に、おばさんの真っ白なワンピースがふわふわと揺れていた。小道が石でデコボコしているせいか、おばさんは時折、「きやっ」と言いながらおじさんの肩に掴まり、その度に2人はケラケラと笑っていた。
 そのまま小道を進んでも泥亀沼しかないよ、と僕はおばさんたちに何度教えてやろうかと思ったが、しかし優秀なピッチャーがまたしても三振を取ったため、チェンジとなった僕はそれをおばさん達に告げる事も無くそのままベンチへと走って行ったのだった。

 その泥亀沼というのは、その名の如く泥だらけの沼の事だ。
 昔、といってもそれがいつの頃かは知らないが、昔はその泥沼には沢山のスッポンがいたからこの名前がついたんだよ、と、いつか広場の横の畑を耕していたおばちゃんが教えてくれた事がある。しかし今はスッポンなどいないただただ泥だらけの沼だ。
 この広場をホームグラウンドにしていた僕達は、その泥亀沼を危険地域と認定していた。そこに行くと運動靴が泥でグチャグチャになってしまうという事から、僕達の中ではそこは立ち入り禁止区域となっていたのだ。
 そんな泥亀沼へ向かうおじさんとおばさん。2人はきっと泥亀沼の事を知らないのだ。
 そのうちあの真っ白なワンピースが泥だらけに汚れて半ベソかきながら戻って来るだろう、っと、そう思いながら趣味の悪い笑顔で1人ニヤニヤと笑う僕は、雑木林に消えて行くおじさんとおばさんの事はそれっきり忘れてしまったのだった。


 カキーン!っという小気味良い音が、昼下がりの太陽に照らされる広場に響き渡った。
 おもいきりバットを振り切った僕は、「よしっ」と心で呟きながら真っ青な空をグングンと突き抜けて行く白球を爽快な気分で見ていた。
「あぁ~あ、また負けたよぉ~」
 ベンチで誰かがそう言いながらグローブを地面に叩き付けた。
「終わり終わりぃ」
 皆がダラダラとベンチに集まって来た。
 僕の巨大ホームランによって試合は終了し、皆はいつものようにダラダラと後片付けに取り掛かる。
「すげぇホームランだったな」
 片桐君が羨ましそうに僕の肩を叩いた。
 するとそこにセンターを守っていた松川が汗だくになって戻って来た。
「ボールは地獄行きだよ」
 松川のその言葉に皆が一斉に笑った。
 松川の言う地獄とは、広場の奥の雑木林の事だった。
 草木が生い茂る雑木林にボールを打ち込むとボールはなかなか見つからない。しかし、そのままボールを捨てるわけにはいかず、だから僕らのルールでは、そこにボールを打ち込んだ者が、責任を持ってそこからボールを見つけ出さなくてはならないというキマリになっていたのだ。
「マジかよ……」
 僕が顔を歪めると、皆は早々と自転車に跨がり始め、そして僕に向かって「よろしくぅ!」などと戯けて手を振っては次々に広場を去って行く。そんな皆の自転車の音を聞きながら、「ちっ」と舌打ちする僕は、一人トボトボと地獄に向かって進んで行ったのだった。

 地獄と呼ばれる雑木林は、僕の背丈ほどもある雑草が濛々と伸びていた。この中から小さな白球を見つけ出すなど、海に落とした指輪を見つけ出すくらい大変な作業で、それはもうほとんど不可能に近かった。
 だから地獄に球を打ち込んでしまった者のほとんどは球探しを諦め、弁償という金の解決を選んだのだが、しかし、その時の僕は金欠だった。今月のお小遣いは二十円残っているかいないかなのだ。
 仕方なく僕は球を探した。
 雑草を掻き分け、どんどん雑木林の奥へと進んで行く。
 気がつくとかなり奥へと来てしまっていた。そこらは伐採されている広場周辺とは違い、高い木々に囲まれては何やら貪よりと暗い。しかも泥亀沼に近付いているのか、妙に湿気でジメジメしていた。
(これ以上は無理だな……帰ろ……)
 そう思って今来た雑草の中を戻ろうと振り返った時、ふと左の方向にちょっとした空間が出来ているのが見えた。朦々と生え茂る雑草がそこだけポッカリと穴が開いているのだ。
 そんな空間に妙に興味をそそられた僕はそこに向かって雑草を掻き分けたのだった。

 そこは、誰かが意図的に雑草を踏み潰して作ったと思われる畳三帖ほどの空間だった。
 押し潰された雑草の上には大量のエロ本が散乱しており、何やら一種独特な卑猥な雰囲気を貪よりと醸し出していた。
 僕は小さな声で「すげぇ……」と呟きながら、そこに散らばるエロ本を手にした。雨露に晒されていたエロ本は、そのグラビアがシワクチャになっており、程度こそは劣悪だったが、しかし、それでも女のオッパイやおシリなどハッキリ見る事ができた。
 僕はそんなエロ本をとっかえひっかえ手にしては、バリバリになったページを慎重に捲っていった。
 そんなエロ本のほとんどは漫画雑誌であり、グラビア以外の漫画ページは紙質が悪いためにほとんど見る事が出来なかった。
 グラビアだけを目的に散らばるエロ本をアレコレと手にしていると、ふと、雑草の中に黒いビニールのゴミ袋が置いてあるのを発見した。

 そこで初めてゾクっと背筋が寒くなった。

 僕は慌てて周りを見渡す。もしかしたらこのエロ本の持ち主が、雑木林に隠れながら僕をジッと見つめているかも知れないという恐怖に駆られたのだ。
 よくよく考えれば、こんな薄暗い雑木林の中に、これほど大量のエロ本が散乱しているなど猟奇的すぎる。
 ましてこの押し潰された雑草は、このエロ本の持ち主がここで寝転がっていたという事を意味しており、エロ本の持ち主は、この薄暗くて湿っぽい雑木林の中、ひっそりとここに寝転びながら一人シコシコとオナニーに耽っていた証なのだ。
(変質者だ!)
 僕は猛烈な恐怖に襲われた。単純に「見つかったら殺される」という焦りが僕を包み込んだ。
 が、しかし、すぐにそこから逃げ出そうとは思わなかった。
 そう、恐怖よりも、あの黒いゴミ袋の中にいったい何が入っているのかという興味の方が強かったのだ。
 僕は恐る恐る雑草の中に手を押し込み黒いゴミ袋の端を指で摘んだ。もしかしたらバラバラに切断された幼女の死体が入っているかも知れない、などと思いながら、おもわずしゃがんでいた膝をガクガクと震えさせた。
 雑草の中から一気にバサっと引きずり出した。ゴミ袋の口はポッカリと空いていた。その口を恐る恐る覗き込む。
 そこには赤や黄色といった大量の衣類らしき物と、そして新品同様の程度の良いエロ本がどっさりと詰まっていた。
 その衣類らしき物は、全て女性物のパンツだった。これがいわゆる下着泥棒というヤツか、と思いながら一応そのパンツをひとつひとつ手に取ってみた。
 それは洗濯された物と洗濯されていないらしき物とが混ざっていた。
 僕はそれらの下着を見つめながら、何か釈然としないものが沸き上がって来た。確かに、この派手なパンツを綺麗なお姉さんが履いていたと想像すれば、それはそれでムラムラと欲情させられる。が、しかし、果たしてそれは本当に綺麗なお姉さんが履いていたモノかどうかがわからない以上、これは単なる汚物に過ぎないのだ。
 僕は、こんなモノのどこがいいんだろう……と思いながら、真っ赤なパンツを一枚手にした。それは洗濯していない物らしく、広げるとそこには黄色いシミがびっしりと付いていた。
「うわっ」と顔を顰めながらも、止せばいいのにその黄色いシミに鼻を近づけた。
「くせっ!」
 思わず僕はそう声を張り上げそれを雑草の中に投げつけた。そんな僕の声に反応して野鳩が一匹バタバタと飛んで行く。
「こいつ、頭おかしいんじゃねぇの……」と、僕はまだ鼻の奥に残っている異様な生臭さを吐き出そうと、鼻からフーフーっと息を吐きながら呟いた。
 しかし、エロ本の方は大満足だった。ゴミ袋の中に保管されていた為、雨露に濡れる事無く新品同様なのだ。しかも、内容が凄かった。それは野晒しになっていた漫画雑誌ではなく、なんとそれはビニール本だったのだ。
 この時僕は、ビニール本により女性の性器という物を初めて目にした。
 この頃の僕達の中では、女性の性器というのは「笑っていいとも」でタモリが描く東京都のマークのような単純な物であり、まさかこのようにグロテスクな物だとは思ってもいなかった。
 そんな気持ちの悪い女の穴の中に、これまたとんでもなく大きなチンチンがズッポリと入れられ、いったいこれはどうなっているんだと僕の頭は混乱するばかりだった。
 そんなビニ本は全部で七冊あった。そのどれもがおばさんばかりであり、若い女のビニ本は一冊も無かった。
 しかしそれでも僕のチンチンは固くなっていた。気持ちの悪い性器とおばさんの垂れたおっぱいばかりだったが、それでも僕のチンチンは痛いくらいに勃起し、何やら居ても立ってもいられないモヤモヤとした感じが下半身に蠢いていた。

 よし。オナニーしよう。

 そう思ったのは、大きなオッパイのおばさんがナスビのように大きなチンチンを舐めているページを発見した時だった。
 それがフェラチオと呼ばれている事は知っていた。女が男のチンチンを舐めるフェラチオ。そんな言葉の響きに欲情しながら、今まで同じクラスの加賀山恵子にソレをさせるのを想像しては何度オナニーした事かわからない。
 僕はその変質者が寝転がったとされる場所に同じように仰向けになりながら、ズボンのボタンをソッと外した。
 大きなオッパイのおばさんがナスビのように大きなチンチンを舐めているページを開き、それを眺めながらチンチンをシコシコと擦った。
 そのネタも然ることながら、この雰囲気も僕を激しく興奮させてくれた。今まで不気味だと思っていたその場所も、今ではその不気味さが「イケナイ事」をしている感を更に高めてくれ、より卑猥なエロスを醸し出してくれていた。
 僕はあえて「あぁぁ、あぁぁ」という声を出してみた。いつもお風呂でチンチンにシャワーを掛けてこっそりオナニーしていた僕にとって、この開放感は素晴らしかった。どれだけ激しくのたうち回っても、どれだけエッチな声を張り上げても、誰に見つかる事も無く思う存分にオナニーを楽しめるのだ。
 そう思いながら、もう一度、女のマネをして「あぁぁん」と声を張り上げてみた。
 と、その時だった。いきなり雑草の一部がガサガサっと動き、僕の目の前に真っ白な物体がヌッと現れた。
「ひっ!」と慌ててチンチンを隠す僕。
 しかし僕のその哀れなシーンは完全に見られた。
 だけど、その人は「ここで何してるの?」と、あたかも僕が何をしていたかを見えなかったフリをしてとぼけてくれた。
 その人とは……
 そう、あの泥亀沼へと消えて行った白いワンピースのおばさんだった……
              
(2へ続く)




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