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下宿人4

2011/11/14 Mon 13:39

    下宿人4
 その喫茶店は、客が6人も座ればいっぱいになる小ぶりなカウンターがひとつと、奥に4人掛けのボックスがひとつある小さな喫茶店だった。
 その奥のボックスのテーブルは、この喫茶店がオープンする時に竜雄がどこからかタダで手に入れて来たらしい、かなりの年代物と思われる卓上型の麻雀ゲームだった。そのゲームからは古いファミコンのゲームのようなピコピコという電子音がひっきりなしに鳴り響いているが、しかし誰一人としてそのゲームをするものはいなかった。
 そんな古臭い電子音が鳴り響く喫茶店のカウンターでは、いつも明子が気怠そうにテレビを見ていた。
 客はといえば、朝のモーニングサービス時に、ゲートボール帰りの近所の御隠居が数人連れ添ってやって来るのと、後は昼時に近所の工場の工員が時々コーヒーを飲みに来る程度だった。
 しかし、夜は違っていた。
 夜の7時頃になると、どこからともなくドヤドヤと近所のおっさん連中がこの喫茶店に集まるのだ。
 彼らのそのほとんどは明子とのお喋りを求めて来る者達だった。仕事帰りの者、パチンコ帰りの者、女房に内緒でこっそり家を抜け出して来た者と、男達は様々だったが、しかしそんな彼らは決まって閉店の9時まで350円のコーヒー1杯で粘っていたのだった。
 そんな喫茶店で、夜だけ皿洗いの手伝いをしていた裕介は、そんな男達が大嫌いだった。
 男達の会話はいつも下品で、下ネタが中心だった。
 グラスを洗いながらもそんな下品な会話にうんざりしていた裕介だったが、しかし、明子はそんな下ネタに対しても嫌な顔ひとつせず、愛想笑いを振り撒いては黙々と接客している。
 以前スナックで雇われママをしていた明子にしてみれば、そんな喫茶店の客達は酔っていないだけ扱いも楽であり、まるで赤子の手を捻るようなものなのだ。
 しかし裕介にしてみれば、そんな下品な男達に愛想笑いを振り撒いているそんな時の明子がイヤでイヤで仕方ない。
 そんな感情を「嫉妬」と呼ぶとは、この時、まだ女を知らない裕介にはまだわからなかったのだった。

 そんな喫茶店の常連に東田という男がいた。
 四十代半ばのこの男は、近所のマンションで1人暮らしをしている男で、いつも八時近くになるとフラッと喫茶店にやって来てはナポリタンスパゲティーを食べていた。
 毎日駅前のパチンコ屋に入り浸りになっている東田は、見た目も雰囲気も口調も、どこかチンピラ風だ。そんな東田は、明子に対してやたらと馴れ馴れしい態度を取る事から、いつも喫茶店にやって来る常連達から酷く嫌われていた。
 当然、裕介もそんな東田が大嫌いだった。
 ある時、こんなことがあった。
 もうそろそろ店を閉めようかと準備している時、いきなり酔っぱらった東田が喫茶店にやって来た。
 表の看板を取り込んでいた裕介が「もう閉店なんですが」と東田に告げると、東田は酷く乱暴な口調で裕介に絡み、そして強引に店内に入って行った。
 入口のドアにぶら下がっている牧歌的な鐘を、乱暴にガランガラン!と音立てて店内に入った東田は、カウンターでグラスを拭いていた明子に「一杯飲ませろよ」と言いながら、奥の麻雀ゲームのボックスに倒れ込んだ。
 そんな東田に、明子は「どうしちゃったの、そんなに酔っぱらって・・・」と、まるで子供あやすかのように微笑みながら、グラスに注いだ水を手渡した。
「こんなのいらねぇよ・・・酒くれよ酒、な、いいだろ、1杯だけ・・・」
 東田はそう笑いながら明子が差し出したグラスを払い除け、そのまま明子の右手をいやらしく握った。
 それを入口で見ていた裕介はとたんにカーッと頭に血が上った。そのままドカドカと店内に入ると、ピコピコ、ピコピコ、っと電子音が鳴る奥のボックスへと進み、そのボックスで真っ赤な顔をしながらふんぞりかえっている東田に「お客さん、閉店ですから」と声を掛けようとすると、いきなり明子が裕介を制止させ、そのまま裕介をカウンターの裏へと引っぱると「いいのよユウ君、ここは私に任せて先にお風呂入って来なさい」と優しく微笑みながらそう言ったのだった。
 そして明子は手慣れた感じでウィスキーの水割りを素早く作った。
 それをボックスの東田に「1杯だけだよ・・・」と笑いながら差し出し、そのまま東田の隣の席にちょこんっと腰を下ろした。東田は「悪りぃ悪りぃ」と戯けながらそのグラスを手にすると、それをグイグイと飲み始めたのだった。
 そんな2人を店に残し、素直に風呂に入っていた裕介だったが、しかし東田が明子に何か乱暴でもしないものかと心配でならず、体を洗うのも忘れて慌てて風呂から上がった。
 すると、裕介が脱衣場のドアを開けると、キッチンの流し台には鼻歌を歌いながら皿を洗う明子がいた。
「あれ?・・・あいつ、帰ったんですか?」
 水滴を綺麗に拭き取らないまま慌ててTシャツを着た裕介は、額に玉のような汗を噴き上がらせながら明子にそう聞いた。
 そんな裕介に明子は皿を洗いながら「うん。1杯飲んだら満足して帰っちゃったよ」と、なぜか「ふふふ」っと笑った。
 裕介は安心すると同時に少し気が抜けた。今夜という今夜はあの東田という生意気な男をぶん殴ってやろうと思っていたからだ。
 そんな気分のまま、「あいつ、こんな時間に何しに来たんですかね・・・」と納得いかない口調で裕介が呟くと、そんな裕介の言葉に明子がニヤニヤしながらクルッと振り向いた。

「アタシを口説きに来たんだって」

 明子は悪戯っぽくそう言うと、また「ふふふ」っと意味ありげに笑いながら皿を洗い始めた。
 そして泡の付いたスポンジで皿をキュッキュッと鳴らしながら、「でもね、ユウ君はアタシの子供なのよって言ってやったらさ、それ本気にして慌てて帰っちゃったの」と、呟き、可笑しそうにケラケラと笑った。
「そ、そうなんですか・・・」
 そう苦笑いする裕介は、そんな明子を頼もしく思い、もしかしたら東田と変な関係にあるんじゃないだろうかと一瞬でもそう疑った自分を素直に恥じた。
 するといきなり「ねぇ」と明子がクルリと振り返った。
「・・・はい・・・」
 キョトンっと立ちすくむ裕介を明子はジッと見つめる。
「アタシ、本当にユウ君くらいの子供がいるお母さんに見える?」
 妙に真面目な顔でそう聞いて来る明子に、裕介は何と答えていいのかわからなかった。
 確かに40才と16才なら親子と言っても不思議はないだろうと裕介は思う。しかし、裕介は明子の事を1度だってお母さんなどとは思った事もなく、いや、それどころか裕介は明子の事を密かに恋人のような感情を抱いたいるのだ。
「あっ、ユウ君、今、アタシの事おばさんだと思ったでしょ!」
 いきなり明子はそう戯けると、下唇をキュッと噛みながら悪戯っぽい目で裕介を見た。
「い、いえ、おばさんだなんて・・・」
 そう狼狽えながら慌てて頭をポリポリと掻く裕介に向かって、いきなり明子はガバッ!とTシャツの捲り上げると、ブラジャーに包まれた豊満なおっぱいを裕介に見せつけた。
 ポチャポチャと肉付きの良い体にキュッとくびれたウェスト。そしてブラジャーに包まれてはボヨンっと揺れる大きな胸の膨らみ。
 それらをいきなり見せつけられ「うっ!」と裕介が絶句すると、ニヤニヤと笑う明子が「アタシだってまだまだ色っぽいんだからぁ・・・ね?」と悪戯っぽく笑ったのだった。

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