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限りなく公序良俗に1




 深夜二時を過ぎていた。
 鬱蒼とした森の小道はひんやりと涼しく、澄んだ空気と遠くから聞こえて来るキツツキのドラミングが、都会で汚れた脳味噌を浄化してくれた。
 小道に敷き詰められた砂利を、下駄でザクザクと鳴らしながら進んで行くと、『露天風呂』と矢印が表示されている細い坂道が現れた。
 ほとんど消えかかった豆電球に照らされた細い坂道を恐る恐る下りて行くと、静まり返った闇の奥からトポトポトポっと響く湯の音が微かに聞こえてきた。
 硫黄の香りと、夜露に濡れた草木の香りと、そして湿った檜の香りが順番に私の鼻をくすぐった。
 坂道の最終地点には、『子鹿の湯』と書かれた白い提灯がぼんやりと浮かんでいた。

 山梨の山中。この日私は、取引先のゴルフ接待でこの山奥にある小さな温泉宿に泊まっていた。
 つい数十分前に下品な宴会がお開きとなり、くだらないサラリーマン親父達の茶番劇からやっと解放された。
 四十三歳の平社員。勤続年数が悪戯に長いせいで、接待になると必ず呼ばれる使いっ走り。
 そんな絵に描いたようなダメサラリーマンの私は、ご機嫌に酔っぱらった取引先の上役達を部屋へ送り届けると、宴会場の隅で泥酔している専務を素早く部屋に運んだのだった。
 ゴルフ場からの過酷な接待にへとへとになっていた私は、一刻も早く布団に潜り込みたかった。
 しかし私は部長と相部屋だった。このまま部屋に戻れば、悪酔いした部長の愚痴を聞かされるだろうと思った私は、そのまま薄暗いロビーのソファーに腰を下ろしたのだった。
 静まり返った古い旅館のロビーにはカビと埃の匂いが漂っていた。月夜に照らされた巨大な鹿の剥製が異様に不気味だった。
 このままここで寝てしまおうかと大きく背伸びをすると、ふと、さっき仲居さんが旅館の裏手の坂を下りた所に二十四時間入浴可能の露天風呂があると言っていたのを思い出した。
 そこで部長が寝静まるまで時間を潰そうと思い立った私は、静まり返った玄関に並べられた下駄を履いた。
 そしてタオルも持たないまま深夜の森の闇に飲み込まれて行ったのだった。

『子鹿の湯』と書かれた暖簾をかき分けると、薄暗い奥に畳三帖ほどの脱衣場が見えた。
 天井からぶら下がる裸電球が黒ずんだ床板の中心だけをぼんやり照らし、脱衣場の四隅は真っ黒な影に隠されていた。
 ふと、子供の頃に見た横溝正史シリーズのドラマを思い出した。
 今にもそのドス黒い四隅の影から、真っ白な顔をしたスケキヨが出てきそうな気がして、おもわず背筋をゾクッと震わせた。
 これは不気味過ぎる。そう怖じ気づいた私が露天風呂を諦めかけたその時、ふと、硬い土間に二つの靴が並んでいるのに気付いた。
 なんだ先客がいたのか、と急に勇気づいた私が、それならばと下駄を脱ぎかけた時、その二つの靴のひとつが女物のサンダルだという事に気付いた。

(そうだった……ここは混浴だったんだ……)

 私は女物のサンダルを見つめながら、先程の宴会場の席で食後のメロンを運んで来た仲居さんの言葉を思い出した。

「まぁ、混浴といってもねぇ、ここは山梨の山奥ですから、お風呂に入ってるのは婆様かメス猿しかいませんけどね」

 仲居さんは、うふふふふっと笑いながら私の前に生ハムを巻いたメロンを置いた。しかし、よく見るとそれは生ハムではなく、コンビニなどに普通に売っているペラペラのアレだった。

 私は下駄を脱ぎ、脱衣場に上がった。板の間はひんやりと冷たく、上がった途端にギシッと音を鳴らした。
 私は慌てて足を止め、そして息を潜めた。まるで一時停止されたDVDのように瞬きもせず止まっていた。
 なぜなら、土間に並んでいるそのサンダルは、長野の婆様が履くようなサンダルではなく、明らかに若い女のサンダルだったからだ。
 静まり返った深夜の脱衣場には、露天風呂から聞こえて来る湯の音だけが響いていた。
 土間に並ぶ黒い革靴とサンダルからして、二人がこの温泉街の宿泊客ではない事は確かだった。
 もしかしたら付近の旅館で働く夫婦者の従業員かも知れないかとも思ったが、しかし、仕事帰りの従業員にしては、そのピカピカに磨いた黒い革靴は不自然すぎた。
 恐らく彼らは通りすがりの一般人だろうと私は思った。ドライブの途中、偶然『無料露天風呂』の看板を見つけ、こっそり立ち寄ったパターンに違いないだろう。
 いずれにせよ、こんな時間に、こんな山奥の混浴露天風呂に入っている一般のカップルなど、何か下心があって入っているに決まっているのだ。
 例え最初は下心などなかったにしろ、誰もいない深夜の露天風呂で二人きりとなれば、いずれはソッチ方面へと進んで行くに決まっている。
 私は、そんなソッチ方面を期待しながら、息を止めたまま脱衣場の奥へと足を忍ばせたのだった。

 露天風呂の入口で足を止めた。バスマットの代わりにされている黄色いバスタオルはカラカラに乾き、深夜のここがあまり利用されていないのを物語っていた。
 そんな入口の前で乾いた喉に唾を飲み込んだ私は、その昔、『トゥナイト』という深夜番組で、『深夜の混浴露天風呂をラブホ代わりに使う若いカップルを直撃』というコーナーがあったのを思い出した。
 黒キャップの山本信也監督が、深夜の混浴露天風呂でエッチしているカップルを突撃取材するという、実に昭和的かつアナーキーなコーナーだったが、それを今、私はリアルで実践しようとしていると思うと、私の気分は更に高揚した。
 まるで時代劇に出てきそうな木戸の前にそっと膝を付き、屈みながら恐る恐る露天風呂を覗いた。
 漆黒の闇にふんわりと立つ湯気の中に、明らかに女の裸体と思われる白い肉の塊が浮かんでいるのがぼんやりと見えた。
 ごつごつとした大きな石に囲まれた露天風呂の真ん中で、女はこちらに背中を向けてぽつんっと立っていた。
 その肉付きの良い尻肉とキュッとくびれた腰のラインからして、恐らく三十代前半だろうと予想した。
 そんな女の豊満な尻肉に釘付けになりながらも、私は急いで男の姿を探した。
 露天風呂をぼんやりと照らしている照明は、洗い場の隅に置かれた足下灯しかないため、月の灯りを頼りに男を探すしかなかった。
 私は薄暗い湯気の中に必死に目を凝らした。
 すると、露天風呂の隅でポチャンっと湯が動く音が聞こえた。
 岩に囲まれた四隅の闇の中からヌッと現れた男が、プチャプチャと湯の音を鳴らしながら女に近付くのが見えた。
 男は四十代後半の親父だった。月灯りに肋骨が浮かび上がっている痩せた男だった。
 二人は何やらボソボソと言葉を交わしながらも、大きな石の上に並んで腰を下ろした。
 正面を向いた女の顔と体がハッキリと見えた。
 化粧をしていないせいか妙に童顔で、大きな目とぽってりとした唇、そして短い黒髪を後で束ねているその姿は、どこにでもいる普通の主婦といった感じがした。
 しかし体は違った。大きな乳はマシュマロのように白く、生クリームのように柔らかそうだった。
 その先っぽの乳首は、まるで唇を尖らせているかのようにツンっと上を向き、そこから湯の雫が、むちむちとした白い太ももにポタポタと垂れ落ちていた。
 実に肉付きの良い体だった。
 決してデブという醜いものではなく、稚拙な表現をすれば、『ポッチャリ型の熟女』といった感じだった。
 私は、そんな女の裸体に目眩を覚えるほどに欲情していた。
 妻と風俗嬢以外の生の裸体を目にするのが十年ぶりだった事や、又、この『露天風呂覗き』という特殊なシチュエーションがそうさせているのか、その時の私は今までにない興奮に包まれていた。
 私は自分の心臓の鼓動を聞きながら、あの柔らかそうな乳肉に顔を埋める自分を想像した。乳首をチロチロと舌で転がし、女が「うううん」っと腰を捻る姿をリアルに頭に浮かべた。
 そして更に、あのムチムチの太ももを肩に担ぎながら、濡れた裂け目に肉棒を滑り込ませるシーンを想像し、肉棒がヌルヌルと摩擦される感触を思い浮かべながら、浴衣の裾から顔を出していた肉棒を上下にしごいていた。
 と、そのとき、ふと私の目に、脱衣篭の中に押し込められた女の衣類が飛び込んで来た。
 篭の網目から白いレースのような生地がチラリと見え、一種独特なエロスを醸し出していた。
 私は大きく息を吸った。魑魅魍魎とした頭に、『主婦の汚れた下着』という日活ロマンポルノ的な活字がぼんやりと浮かび、たちまち脳をクラクラさせた。
 迷う事無く、私は脱衣場の隅の影の中に足を忍ばせた。
 脱衣篭の一番上には、白いワンピースらしき物がバサッと掛けられており、それを恐る恐る摘まみ上げると、甘い香水の香りと共に、白いレースのブラジャーとパンティーが現れた。
 私は、露天風呂の入口と脱衣篭を交互に見ながら、篭の中で無造作にくるくるっと丸まっているレースのパンティーを摘まみ上げたのだった。

 静まり返った脱衣場には、露天風呂から聞こえて来る、とぽとぽとぽっという湯の音だけが響いていた。
 露天風呂の入口から漂ってくる生温かい湯気と、脱衣場の入口から注ぎ込む夜風が交じり合い、狭い脱衣場の中には冷たい硫黄の香りが充満していた。
 そんな脱衣場の片隅で、私は見ず知らずの他人の下着を手にしていた。そして、丸まった下着を震える指で恐る恐る開き、女性が他人に最も見られたくない部分を豆電球の下に照らし出していた。
 白いクロッチの中心には、黄色い汁がぐっしょりと染み込んでいた。
 まるで、擦りおろしたリンゴの汁を垂らしたかのような黄色いシミだった。
 それは、顔も名前も年齢も知らない女性のシミだった。そんな通りすがりの赤の他人のシミだった。
 そんなシミに私は興奮した。知らない女性だからこそ想像力が豊かとなり、私は自分のタイプの女性をあれこれと想像しては、より興奮度を高めていた。
 私はパンティーを摘んだまま、露天風呂の入口へと戻った。そして露天風呂の岩の上で巨乳を露にしながら足を投げ出している女を見つめ、その激しく汚れたクロッチの匂いを嗅いだ。
 ツーンっと鼻を刺激する匂いはポン酢に似ていた。シミの中心に行けば行くほどその酸味は強くなり、しかも、そのシミの後部には微かにウンチの香りも感じられた。
 その匂いは、おもわず眉間に皺が寄るほどに臭いものだった。これがもし自分の妻の下着だったら、迷う事無くゴミ箱の中に投げ捨てているだろうが、しかし、これが全くの赤の他人の秘密のニオイなのだと思うと、不思議な事にそんな珍臭もエロスに感じられて仕方なかった。
 私は摘んだパンティーのクロッチにクンクンと鼻を鳴らしながらペニスをシゴいた。
 横目で露天風呂の女の裸体を見ながら、これはあのムチムチとした下半身から分泌されたいやらしいシミなんだと自分に言い聞かせ、ひたすらペニスをシゴキまくった。
 そろそろ『イキ時』だと思った。
 これ以上待っても彼らはソッチ方面には行きそうにも無く、いつあのカップルが風呂から上がって来るかも知れないのだ。
 そうなれば私は逃げなくてはならなくなり、これだけの素晴らしいおかずを前にしながら不完全燃焼となってしまうのだ。
 そうならない為にも、ここが『イキ時』だと思った私は、急いで床に寝転がった。
 黄色いシミに亀頭を擦り付けた。溢れていた我慢汁が黄色く汚れたクロッチに糸を引き、それを裸電球が卑猥に照らし出した。
 そのままペニスをパンティーで包み込み、足をピーンッと伸ばしながらペニスをゴシゴシとシゴいた。
 レースの部分が肉棒をザラザラと擦り、私は久々の快感に「あぁぁぁ」っと低く唸った。
 見ず知らずの女と、この荒れ果てた脱衣場でセックスしているのをリアルに想像しながら、「中で出すぞ、中で出すからな」と闇に呟いた。
 このままクロッチの中に射精してやるつもりだった。
 精液がたぷたぷと溜ったパンティーを、脱衣篭の一番上に広げたままそこを立ち去ってやるつもりだった。
 それを見た瞬間の、あの女の表情を思い浮かべながら狂ったようにシゴキまくった。
 そして、さぁイクぞ、っと両足をピーンッと伸ばしたそのとき,突然、露天風呂の入口前の床がギシッと音を立てたのだった。

(二話に続く)

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