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206号室の便女(前編)

2012/12/02 Sun 00:00

206号室の便女 目次



 目を開けると煙草のヤニで黄ばんだ天井がぼんやり見えた。
 ゆっくりと寝返りを打つと、カーテンの隙間から注ぎ込む朝日が部屋中に舞う埃をキラキラと輝かせていた。
 俺は小指の爪でカリカリの目糞を毟りながら、廃墟のようなその部屋をしばらく眺めていた。

 時計の針はぴったり八時だった。
 ついこの間までは必ず六時十四分に目が覚めていたのに、ここ最近はいつも八時に目覚めるようになっていた。
 恐らくそれは、先日、高山たちと徹夜麻雀をやった事で体内時計が狂ってしまったからだろうが、しかし、今の無職の俺には起床時間の時差など別にどうでも良い事だった。

 ひとまず、もう一度目を瞑り、ハローワークに行こうかどうしようか悩む事にした。
 が、しかし、既にその時点でハローワークに行く気など更々なく、このまま寝てしまおうと壁に向かってゴロリと寝返りを打ちながら体を海老のように丸めると、ふと、性器が狂おしいほどに勃起している事に気付いた。
 海老のように丸まったままトランクスに右手を忍ばせ、ごわごわの陰毛の中に指を潜らせていくとコリコリとした固い肉棒が歪な形で下り曲っていた。
 ゆっくりと仰向けになりながらそれをヘソに向けて真っすぐにさせた。
 掌の中にがっしりと握ると、妙な安堵感に包まれた。
 昨夜あれほどこき使ってやったというのに、こいつは威きり立っていた。
 まだ働き足りないのか?と小さく呟きながらそいつを上下に反復させてやると、とたんにジンジンとした痺れが両太ももを襲い、おもわず「あぁぁ……」という低い唸り声を漏らしてしまった。

 黄ばんだ天井を見上げながら握ったペニスの皮を上下させていた。
 ふと昨夜の206号室の女の顔が浮かんだ。
 女の肌は雪のように白く餅のように柔らかかった。
 痩せているくせに乳だけは妙に大きく、激しく腰を振るとそれはたぷたぷと音を立てて震えていた。
 陰毛は馬糞ウニのように濃く、陰核は枝豆のように大きく、そして左右の肉ひだは八宝菜に入っているキクラゲのように黒く、そしてヌルヌルしながらビラビラしていた。
 常にドロドロに濡れているその穴の中はやたらとザラザラしており、擦れば擦るほどにぎゅっぎゅっと締った。それはまるでローションをたっぷりと垂らしたイボ付き軍手でシゴいているような荒々しい快感だった。
 だからほとんどの者は長続きさせる事ができなかったのだが、しかしそのおかげで回転率が良くなり、そこを利用している多くの者達が効率よく精液を放出する事ができていたのだった。

 そんな女が暮らしている206号室というのは、今、俺が住んでいる205号室の右隣の部屋だった。
 彼女がこのワンルームマンションに引っ越して来たのはつい最近だった。いつの間に住んでいたのか知らないが、気が付くと地味な女が一人ひっそりと住み着いていた。エレベーターで一緒になったり、ゴミ出しで顔を合わした事は何度かあったが、しかし挨拶一つする事無く、互いに知らん顔していた。得体の知れない不気味な女だった。

 女は二十七才だった。ワケアリらしく、埼玉県から一人で上京してきていた。
 仕事は、近くの保育園で保育士をしており、同時にホームヘルパーの資格を取ろうとニチイの講座を受講していた。
 それを教えてくれたのは、やはり206号室を利用している近所の家電量販店の店員だった。彼は、女がこのマンションに越して来た翌日、エアコンの修理で206号室に訪れた時から女とそんな関係になり、それからというもの毎日のように通っているという常連だった。
 そんな彼に、「もしかしてあんたが206号室の開拓者なのか?」と聞いた事があった。しかし彼は自慢げに微笑みながらも首を横に振った。彼曰く、彼がこの女を食った時には、既に引っ越し業者とこのマンションを紹介した不動産屋の親父が食い荒らした後だったらしく、「僕なんて開拓者どころかまだまだ新入りですよ」と紫色の歯茎を剥き出しながら謙遜していたのだった。

 この家電量販店の彼が言うように206号室には様々な男達が足繁く通っていた。俺が知っているだけでも、このマンションを管理している不動産屋の親父、このマンションの四階に住んでいる中年のフリーター、五十代半ばのサラリーマン風の男、一階のクリーニング店の兄ちゃん、グレーの作業服を着ている仕事帰りの肉体労働者、そしていつも二人でやって来る高校生がいた。
 彼らがどこでどうやってこの女と知り合ったのかはわからないが、しかし、彼らが夜な夜な206号室でどんなプレイをしているのかはよく知っていた。
 と、いうのは、俺は205号室と206号室のベランダを仕切っている避難壁にこっそり細工し、いつでも隣りのベランダに侵入できるように改造していたからだった。
 隣の部屋からそれらしき声が聞こえて来ると、俺は急いでベランダに飛び出し、六角レンチで慎重にネジを回し、『非常の際には、ここを破って隣り戸へ避難できます』と書かれた板を恐る恐る外した。そしてヤモリのように隣のベランダに忍び込んではサッシのカーテンの隙間から部屋の中を覗いていた。
 だから俺は、夜な夜な206号室にやって来る男達のペニスのサイズから性癖までも全てお見通しなのであった。

 そこに集まって来る男達というのは、ほとんどが異常な性癖を持つ、いわゆる変態と呼ばれる男達ばかりだった。彼らは、人には言えないような異常な性癖をこの女で発散していた。女は何一つ抵抗する事無く、そんな彼らの変態行為を黙って受け入れていた。
 今まで俺が覗いた男は六人だった。六人が六人とも異常な変態性欲者だった。
 いつも仕事帰りに立ち寄る作業服の男は、女を平手で叩きながらヤるという癖を持っていた。後背位では尻を叩き、騎乗位では乳や太ももを叩き、そして正常位では頬をおもいきり叩いていた。だから女はいつもこの男とヤる時には、白い肌は真っ赤に充血させ、唇の端に血を滲ませながら、泣き叫ぶようにして喘いでいたのだった。
 サドと言えばこの作業服男の他にもう一人いた。
 そいつはいかにも胡散臭そうな不動産屋の親父だった。必ずガムテープで女の身体を複雑に拘束してからじっくりと犯すという変態だ。身動きできない女の股間にバイブを突っ込みながら「メス豚女め」と吐き捨てる親父の背中には、中途半端な不動明王の筋彫りが天上天下を睨みつけていたのだった。

 そんなサディストな男達もいれば、一方では気色の悪いフェチ男もいた。四階に住んでいる中年のフリーター男は、カップ麺の空きカップの上に女をしゃがませ、そこにドボドボと小便をさせては、しゃがんだ女の股の裏を必死に覗き込んでいた。そして男はカップに並々と注がれた女の小便を、充血した目玉をギロギロさせながらジュルルルと啜り、更にその半分を自分の性器に垂らすと、それを自分でシコシコとシゴきながら、女の目の前で射精するのであった。
 そいつとは別にもう一人フェチはいた。いつもスーツでやって来る五十代半ばのサラリーマンだ。
 彼はとにかく舐めるのが好きらしく、女の足の指から肛門、脇の下から目玉までと満遍なく舌を這わせた。ある時など、脱衣場の洗濯機の中から女が履いていた下着を持ち出してきた。それを女の目の前で開き、そこにシミ付いている黄色いオリモノをチロチロと舐めながら女にフェラチオをさせていた。
 そんな変態男達はいつも一人で206号室にやって来た。他の男達が乱入して来ないようにドアの鍵を閉め、一人でいそいそと事に及んでいたのだ。
 しかし、いつも土曜の夜にやって来る高校生の少年達だけは違った。このガキ共だけは二人で女を攻めていたのだ。一人はジャニーズ系の可愛い男の子だった。そしてもう一人はいかにも野球部といった日焼けした体育会系だった。二人は、河川敷で捕まえた子猫を虐待するように女を嬲っていた。それは大人顔負けの残酷さで、ニヤニヤと目を輝かせながら女の穴の中に電球を挿入したのを見た時にはさすがに背筋が寒くなった。しかし、二人はあくまでも女を嬲るだけで女の中で射精しようとはしなかった。二人はいわゆる同性愛者らしく、女を散々オモチャにした後は、いつも互いの男根をしゃぶり合いながら果てるのであった。

 このような魑魅魍魎とした変態男達が、どうして206号室に集まって来るのかは謎だった。もちろん、女は商売でそれらの変態行為をさせているのではない。女はガチで陵辱されているのだ。本能で、血まみれにされ汗だくにされ精液まみれにされながら動物のように激しく感じまくっているのだ。
 そんな女は明らかにマゾヒストだった。今まで本物のマゾという者に会った事がないから詳しくはわからないが、しかしベランダから覗いている分では、あの女は究極のM女だろうと俺は断言する。

 ところで、気になるのはそんな女の容姿だが、しかし、これは残念な事に、決して綺麗な女だとは言えなかった。あれほどいやらしいスタイルと性癖を持っているのだから、これで美人だったら完璧な変態女となるのだが、しかし、天は二物を与えずとはまさにこの事で、女の顔はそこらにごろごろしている極々普通の顔だった。
 しかも、いつも化粧をせず、黒ぶちの眼鏡をかけ、長い黒髪をひとつに縛るという地味さで、更にいつも同じジャージとTシャツという、実に生活臭が漂う女なのだ。
 それなのにこの女には、まるで砂糖に群がる蟻のように男達が群がって来るというから不思議だった。
 まぁ、集まって来る男が男だけにそれも納得できなくもないのだが、しかし、それにしても男達はこの女にどっぷりとハマりすぎていた。
 恐らくそれは、この女が独特なエロスを持っていたからに違いなかった。
 そのいやらしい体つきと妙におどおどした気の弱そうな目は、常にマゾヒズム的な妖艶さを全身から漂わせていた。いつでもどこでも誰にでも股を開きそうな白痴的な雰囲気と、どんな屈辱的な事でも無抵抗で受け入れそうな被虐的な雰囲気が変態性欲者達の中枢神経を刺激し、彼らを夜な夜なそこに呼び寄せていたのであろう。
 そう考えると、206号室に夜な夜な集まって来る変態男達というのは、まさに公園の外灯に群がる夜蟲だと思った。しかし、そう言う俺も気が付けばそんな夜蟲の一匹になっていた。

 それは女の部屋を覗くようになって一ヶ月くらい経った頃の事だった。

 その日も俺は、いつものようにベランダの隅に隠れながら、ペニスにティッシュを被せていた。その時、206号室にいたのは初めて見る顔の男だった。
 紺のスーツを着た男は、四十代半ばの痩せた男だった。どこか知的な感じがする男で、その高そうな金縁眼鏡と流暢な話し方は歯科医か弁護士を連想させた。
 男はおみやげに持参したスタバのコーヒーを飲みながら、何やら女と話し込んでいた。といっても、女は相変わらず黙ったまま項垂れており、せっかく買って来てくれたコーヒーにさえ手を付けようとはしなかった。
 男がいったい何を話しているのか気になった俺は、ティッシュを被せたペニスをカサカサとシゴく手を止め、そっとサッシに耳をあてた。すると、驚いた事にサッシの鍵は開いており、その2センチほどの隙間からは男の声がハッキリと聞き取れたのだった。
 男が一生懸命話している内容は、吉祥寺に新しくできたイタリアンレストランの話しだった。そこのシェフとは学生時代の親友で、彼はイタリアで六年間修行した後、三千万をかけて吉祥寺に店を出したのだと自慢げに話していた。
 しかし、そんな男の話しは座持ちする口実にすぎないと俺は思った。なぜなら、そう話している男の視線は常に女の身体を物色していたからだった。しかも男は、項垂れている女に悟られぬよう、卓袱台の下で自分の股間をぎゅっぎゅっと握っているのが俺から丸見えだったのだ。
 男は、どうでもいいイタリアンレストランの話しをしながらも、明らかに女を視姦していた。今からこの変態女をどうやって料理してやろうかと、激しい興奮に襲われながら勃起しているようだった。
 そのレストランのカルボナーラが絶品だとか、もしその店に行く機会があったらシェフに僕の友達だと言えばいいよ、などと、どうでもいい話しを続けていた男だったが、しかし、遂に女の胸に手を伸ばした。
 項垂れた女の肩がピクンっと反応した。男は「パルメザンチーズは本場イタリアから取り寄せているんだ」などと囁き掛けながら女のTシャツをゆっくりゆっくり捲り上げて行った。
 女はブラジャーをしていなかった。見慣れた乳肉がほろろんっと飛び出すと、男はすかさずそのチョコレート色した乳首を指先で捕らえ、いやらしくクリクリと弄りながら「ボロネーゼの脛肉みたいだね」と笑った。
 女は、まるで親に折檻されている少女のようにジッと耐えていた。正座する女の膝が微妙に震えていた。指先でジャージの裾を必死に弄っているのが見えた。
 男は、乳首を弄っていた手をゆっくりと広げると、乳肉を手の平に包み込みながら優しく揉み始めた。そして、もう片方の手を正座する太ももに這わせると、項垂れる女はギュッと下唇を噛んだ。
 男の指は太ももの上を緩やかに滑っていた。そしてそれが正座する股間に滑り込むと、再び女の肩がピクンッと反応した。男は、そんな女の表情をソッと確認しながら、座ったままスリスリと床を移動した。そして背後から女の体を優しく抱きしめると、「あの店はパスタの茹で時間が絶妙なんだよね……」と小さく笑いながらジャージのズボンの中に右手を滑り込ませたのだった。

 女のジャージの股間がもっこりと膨らみ、そこがぐにゅぐにゅと動いていた。
 項垂れる女は眉を顰め、下唇を噛んでいた。男はそんな女の顔をソッと覗き込みながら、その耳元に優しく囁いた。
「もうヌルヌルだね……」
 男が女のジャージをズリ下ろすと同時に俺も再びペニスにティッシュを被せた。俺の股間からカサカサカサっと乾いた音が聞こえ始めると、女のパンティの中でもくちゅくちゅくちゅっという湿った音が聞こえて来た。
 男は、項垂れたまま必死に耐えている女の顔を覗き込みながら、もう片方の手で自分のズボンのチャックを開けた。そしてニヤニヤといやらしく笑いながら細長いペニスを捻り出すと、いきなり女の頭部に手を回し、「舐めて……」と言いながら女の顔を自分の股間に押し付けた。すると女はそれを待ちわびていたかのように、いきなりそれにむしゃぶりついた。そしてうどんを啜るかのようにしゅるるるるっと音を立てながらペニスの根元まで飲み込んだのだった。

 男は「あぁぁぁ……」と唸りながら天井を見上げると、情けない声で「出ちゃうから、あんまり激しくしゃぶらないで」と呟いた。
 男はしゃぶられながらも女の尻の谷間で指を蠢かせていた。ぴちゃぴちゃとペニスをしゃぶる音と、くちゃくちゃと股間を弄る音、そしてカサカサと俺がペニスをシゴく音が重なり、三人がそれぞれの快楽に没頭していた。
 すると突然、男が女に変な質問をした。
「そう言えば、まだキミの名前を聞いてなかったね。キミの事、何て呼べばいいかなぁ」
 それを聞いた瞬間、ティッシュを被せたペニスをシゴく俺の手がピタリと止まった。遠くの方から聞こえて来る救急車のサイレンの音を聞きながら、俺は激しい衝撃を受けていた。居ても立ってもいられないような焦燥感に煽られ、おもわず「嘘だろ……」と呟いてしまっていた。
 そう、この男は女の名前を知らないのだ。名前を知らないと言う事は恐らく今日が初対面だろう。二人がどこでどうやって知り合い、そしてどんな経過でこの部屋でこんな事をしているのかは知らないが、しかし、二人が初対面だと言う事はまず間違いないだろう。
 俺は焦っていた。初対面の男がここまでできると言うのなら、隣に住んでいる俺だってあの男と同じように女のオマンコをくちゅくちゅできるはずだ。
 そう思うと、ここでこうしてセンズリをこいている事が勿体ない気がして堪らなかった。異常な焦燥感に襲われた俺は、それならば俺もヤってヤる、とペニスに被せたティッシュを剥がした。
 我慢汁の染み付いたティッシュが夜風に流され宙を舞った。ふわふわと舞いながら、物干し竿にぶら下がっていたハンガーの端に引っ掛かった。その形といい、ぶら下がった場所といい、それはまるでてるてる坊主のようだった。

(つづく)

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